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The Qualified Sales Leader解説⑤Economic Buyerとのミーティングで準備すべきもの
こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveをしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。前回に続き、”The Qualified Sales Leader: Proven Lessons from a Five Time CRO”の第5弾、ラストの解説やっていこうと思います。
前回はChampionをどう握るのか、について、スタンス、スキル、客観視することの3つの視点で解説をさせていただきました。
本noteを理解いただくために必要な前提知識↓
・最終意思決定者(Economic Buyer)=最終の決裁をする人や、会議体等
・Champion=自社サービスの導入に前向きで、最終意思決定者に対して影響力がある人
→この方と力をあわせて最終意思決定者を口説く
・Coach=自社サービスに前向きだが、影響力は無い人
→この方からChampionの情報を得る
https://note.com/dj141/n/nae5cca15595b
B2Bセールスのプロセス
- Discovery(課題の発見)
- Scoping(取組み範囲の決定)
- Economic Buyer Meeting(決裁者とのミーティング)
- Validation Event(検証)
- Business Case and Final Proposal(ビジネスケースと最終提案)
- Negotiate and Close(交渉とクロージング)
P95より
では、今回は最終回、Championを味方につけて、Economic Buyerとのミーティングにどう望み、導入への合意を勝ち得ていくのかについて解説していきます!
EBとのミーティングで準備すべきもの ←今回の内容
Economic Buyerとのミーティングに必要なもの
Championは大半の場合、ミーティングを形式的なものにするため、事前にEconomic Buyerにブリーフィングを入れます。典型的なEconomic Buyerとのミーティングでは、下記のような内容を実証する必要があるでしょう。
Economic Buyerとのミーティングに必要なもの
- DiscoveryとScopingについての高水準のサマリ
- その会社の現状(As-Is)
- 現状がこのまま続くとどういう結果になるか
- あなたが提案する未来の状態(To-Be)
- その状態によりどんな利益がもたらされるか
- その状態に至るために必要なケイパビリティは何か
- 定量的なビフォー/アフターの指標を交えた既存顧客の成功事例
- 意思決定基準に基づいたソリューションについての高水準の説明
- 残りの意思決定プロセスについての確認
P202より
事前にどれだけ握っていたとしても、最終的にChampionがEconomic Buyerにどのようなブリーフィングをしたかは完全にはコントロールしきれません。当日の資料を最終の確認として共有し、ずれがないかの最終確認もしておきましょう。
Economic Buyerとのミーティングの本番は緊張するものです。少しでも、不安を和らげるために、下記を事前におこなっておくとよいでしょう。
- しっかりと準備する
- ビジネスパートナーたれ
- 彼らの成果指標に合わせて、ソリューションをポジショニングしましょう
- 彼らのビジネス言語でEconomic Buyerに語りかけましょう
P202より
8割の役員は営業との時間を無駄だと考えています。営業の仕事を手伝うための時間ではありません。IRや、有価証券報告書、アナリストのレポートには目を通しておきましょう。分かっている課題ではなく、熟考したことのない課題に目を向けさせ、彼らの評価指標に紐づく形で、ソリューションの議論を深めましょう。また、Economic BuyerはChampionともまた違う抽象度で考えています。その言葉に合わせて議論をするようにしましょう。
Economic Buyerに問うべき質問
Economic Buyerとのミーティング当日となりました。まずはこちらから質問をなげかけ、優先順位を確認、引き上げを行い、残りのプロセスを確認します。
Economic Buyerにすべき質問
- この特定の課題は、優先順位リストのどこに位置付けられますか?
- この課題を最も効率的に測る特定のビジネス指標はなんですか?
- この課題を解決するのはいつが好ましいと考えますか?
- $Yの予算を進んであてがいますか?例えば、$Yの投資をすることで$Xのコストを抑えることができると検証期間の間に我々が証明することができれば、$Yの予算をあてがってくださいますか?
- あなた以外で、この規模の購買に承認が必要な方はいますか?
- 価値実証が成功したら、なんの意思決定のプロセスが残っていますか?
P208より
課題の優先順位を、Economic Buyerの視点から明言してもらうのはこの機会が最初でしょう。ここで、コストやリソースをかけて取り組むと言うラインの優先順位にあることを、しっかりと確認しましょう。もし、そうでない場合は、何があれば、取り組みの優先順位が上がるのかを確認しましょう。
Economic Buyerに問われる質問
逆に、Economic Buyerからも質問がされるでしょう。大枠、4つのグループの質問がくると思われます。
Much-ness
- コストはいくらか
- 実装にはどれくらいのコストがかかるのか
- いくらコストを抑えることができるのか
Soon-ness
- どれくらいすぐに実装できるのか
- どれくらいすぐROIが見込めるのか
- メンバーがソリューションを完全に使いこなすのにどれくらいかかるか
Sure-ness
- 彼らの環境下でどれくらいプロダクトが確実にワークするのか
- コストの妥当性はどれくらい正しいのか
-どういうカスタマーには、ソリューションが確実に実行されるように私から言っておいた方がよいのか
Easy-ness
- どれくらい簡単に実装できるのか
- 会社のメンバーが使い方を学ぶのはどれくらい簡単なのか
P209より
たとえ優先順位が取り組みのレベルになかったとしても、Economic Buyerの想定よりも、大きくこの4要素の水準が高い場合は、優先度が変わる場合があります。極端な例として、たった1週間でほぼ確実に業績が上向きます、といわれたら、優先順位はあがりますよね?実際には数年単位での複数プロジェクトを俯瞰してみながら、優先順位の判断はしていると思いますが、あれ、思ったよりいけるかも?と思ってもらうために、この辺りを伝えるためのファクトはしっかりと準備をしておきましょう。
また、おすすめなのが、この辺りの変数に紐づけて、提案をいくつか用意しておくパターンです。コストを掛ければ、スピード/確実性/容易性があがるのであれば、予算をかけてすぐにやりきってしまうという選択肢も顧客に提示できることになります。もともとの提案プランよりも、さらに追加で発注いただける機会を逃さないように、しっかりと提案のオプションとして用意をしておくことをお勧めします。
POVでやるべきこと
自分のフィジカルの強みに合わない競技で、勝つことに1000ドルをかけることはしないのと同じで、プロダクトの強みに合わせた意思決定基準を定義することができなければ、POVで勝つことはできません。その検証は負けるので、時間の無駄になってしまいます。
自社の差別化要素が含まれた実証の判断基準を定義できれば、決定的になります。その時に、それぞれのプロダクトのケイパビリティを比較すると、あなたのソリューションが支持されるようになるからです。実証の段階になったら、基準に沿う利用者を賛同し、それぞれの判断基準における要素と、それぞれの要素のスコアを、実証が決定的になる前に、書き出してしまいましょう。
POVは、勝つも負けるも、当然の結果をもたらします。本来は、Economic Buyerと合意をしているわけですから、本来はあとのプロセスは法務チェックと購買部門との交渉だけなのです。購入の序章ではなく、ただただ顧客にとって、確らしさを確認する機会としてメリットを享受できるだけなのです。
こんなPOVはPOVではありません。
- セールスプロセスの早い段階で起きるもの
- プロダクトについてカスタマーに教える時間
- ペインを見つけ始める機会
- チャンピオンを見つける機会
- 友人を作る時間
P236より
下記のようなイベントの後に起こるものが、本当のPOVです。
- チャンピオンを特定した
- 価値実証の評価ルールと意思決定の枠組みをチャンピオンが教えてくれた
- 発見とスコープ特定の間に、あなたとチャンピオンがペインをはるかに上回る果実として、コストの正当性を見立てられている
- 優先順位、予算、オーソライズ、タイミングを明確にできており、残るはEconomic Buyerとの合意プロセスを残すのみとしている
P236より
POVの前にEconomic Buyerと会うことができず、明確に勝てる基準で実行しないPOVは失敗するわけです。それはやみくもにPOC(概念実証)をしているのと一緒なのです。
営業担当は、POVの期間中、いつでも下記ができるように心づもりしておきましょう。
- コストの妥当性をはかるためのAs-IsとTo-Beの数値を再定義する
- 新しい情報に合わせてAs-IsとTo-Beの数値を調整する
- そのソリューションがカスタマーのペインを解決している証拠をしっかりと捉えること
- ChampionのPersonal Winにむかい続けること
P237より
POVが終わったら、サマリレポートをもとにChampionと膝を突き合わせて話をしましょう。リスクが減り、決定的に自信をもって購入できる状態へと変わっています。ビジネスケースの各要素に、合意ができている状態となっています。また、もともとのコスト妥当性の提示と内容が変わった場合は、かならずEconomic Buyerへ共有し、合意をとったうえで緊急性を上げるコミュニケーションをしておきましょう。
ビジネスケースに昇華する
POVが終わったら、社内でのオフィシャルの承認をとるために、ビジネスケースへ内容を昇華させましょう。日本でいうと、起案や、稟議と呼ばれるものです。一般的には、顧客のインターナルの文章だと考えて、彼らの言葉で彼らの視点で書くように、準備すると良いと思います。
一般的な内容としては下記になります。
- 会社の目的
- 戦略イニシアチブ
- ビジネス上の課題と機会
- どのように課題、もしくは機会が戦略的イニシアチブに適合しているのか
- あなたのソリューションがユニークに彼らの問題を解決できるという説明をもって、before afterのシナリオを説明しましょう
- あなたのソリューションが、ゴールに向けて解決/達成するために、メンバーに、プロセスに、時間軸に、どういうビジネス上の達成や利益をもたらすか説明しましょう
- Economic Buyerの言葉(例えば、売上、マージン、リスク、市場浸透スピード、マーケットシェア、生産コストなど)であなたのソリューションがもたらす定量的な価値に置き換え、最終的なコスト妥当性を示しましょう
P240より
このとき、測定データや定量的な価値なしで、生産性が上がるとか、HCを減らせるとか、早く市場浸透できる、という一般的な表現で価値を表現すべきではありません。POVで得られた内容を反映していくようにしましょう。
また、POVの後が、もっともバイヤーが不安になる時でもあります。
今一度、下記の要素をお伝えし、不安を取り除くようにしましょう。
- 彼らのユースケースにおいてペインを解決できたという、POVの結果をもう一度伝えておきましょう
- ペインが解決されないときのネガティブな結果に言及しておきましょう
- 同じペインを抱えていたが、良い結果を勝ち得ることができた他のカスタマーの結果を共有しましょう
- Championに、ポジティブな結果を勝ち得た他の会社の話をさせましょう
- Personal Winを想起させ、この購買がどれだけ彼らの勝利を引き寄せるかを伝えましょう
P241より
ここまでくれば、あとは法務チェックと、購買部との交渉だけになります。
本解説では割愛させていただきますが、提供価値について顧客が喉から手が出るほど欲しいと思っている状態になっているので、売り手優位で交渉はすすめることができるでしょう。
Economic Buyerとは、優先順位を上げ、合意形成のための調整をする
今回は、Economic Buyerとのミーティングと、POVに関して何を意識すべきかと言う点を解説しました。実はPOVの勝負はほとんどEconomic Buyerと検証の基準を合意した時点で決まっており、ここにどう運ぶかは、Championとすり合わせを行い握る段階でほぼ終わっており、調整や確認の意味合いが強いという印象をもっていただけたでしょうか。
つまり、鶴の一声で変わることなんてのはほとんど起きることはなく、初回にお伝えした、B2Bセールスのプロセスは不可逆な一連の流れだという内容そのものな訳です。そして、前々回、前回でお伝えしたChampionとの合意形成プロセスこそが、もっとも商談の成否を分けるポイントとなっており、ここを正しい手順で実行できるかが重要になってきます。
ここまでお読みいただいた皆様には、エンタープライズセールスにおいては、予算やタイムラインを聞くなんてプロセスは本質的には重要ではなくChampionと一緒に見立てていくべきだということ。BANTではなく、MEDDPICCがいかに重要であるかをご理解いただけたのではないでしょうか。
再掲↓
![](https://assets.st-note.com/img/1660474068294-WRo2Efud70.png?width=800)
The Qualified Sales Leaderに書かれたエンタープライズセールスのプロセスを図式化する
最後に、改めて俯瞰して本書で示されたプロセスを図式化しておきましょう。一連の流れを下記でイメージいただけると幸いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1660519860142-VJAf0SEmeg.png?width=800)
そして、これだけの長旅ですが、2ヶ所だけ、時短できるポイントがあります。1つめは、Coachをすっとばすという方法、2つめは、Championとの合意を素早く確実に行うという方法(DiscoveryとScoping、検証基準の合意のぐるぐるを最短で終わらせる)です。
前者については、BDRと呼ばれるアウトバウンドのインサイドセールス部隊によって、Championに直接リーチすることで実行できます。BDRについて
は、以前のnoteをぜひお読みいただけると幸いです。
そして後者については、ターゲティング、差別化ポイント、顧客理解のフレーム、Championとの目線を合わせるためのマテリアルをいかに磨いておけるかが鍵になります。営業シナリオやマテリアルについては、米国では営業Playbookがどの企業でも標準装備されていますし、こうしたプロセスを通じ顧客とのエンゲージメントを高めることを支援する、Sales Engagement Platform(セールスエンゲージメントプラットフォーム)が一般的に利用されています。
まさに我々Magic Momentがbetしているのがこの領域ですので、もしご興味あれば、DMなどでご連絡いただけると嬉しいです!
と言うわけで、5回に渡り、約3万字にもなってしまいましたが、皆様お読みいただきありがとうございました。5回にまとめるため、Discoveryや、マネジメント側の視点をある程度割愛してしまいましたが、この辺も、もしニーズあれば別の機会でまとめますね。個人的には今回の取り組みで学ぶことがとても多かったので、似たような良書があればどんどん解説していきたいと考えております。
コメントや、DMなどで、お勧めの本や、解説して欲しい良書があれば、ぜひご意見お寄せください。
最後に、もういっちょ宣伝を。
こういう営業についての議論と提案を日々行ない、日本を営業から変えようと奮闘しているのが我々Magic Momentです。
現在、というかずっと、お客さまへの提供価値を拡大するため、全方位的に採用を強化しております。ご興味ありましたら、カジュアルに営業の話をしたいとかでもOKなので、ぜひ下記wantedlyのリンクをご覧になっていただけたら嬉しいです。それでは皆様、お盆で養った英気を、価値に転換して、お客さまに届けていきましょうー!!!
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