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木材業界を変える海外サステナブルスタートアップ

昨年から続く世界規模のパンデミックを契機として、日本でもステイホームが推奨され、リモートワークを実施、導入する企業が一気に増えました。Zoomなどのオンラインツールの普及・進化もあり、対面を前提としない働き方が受け入れられやすくなったことに伴い、都心に済み、都心で働くと言うこれまでの当たり前に疑問を感じ、住まいを見つめ直す人も増えているようで、都心部から、郊外へ移住しようと言う動きが加速しています。

実際に不動産需要を見ても、これまで都心のマンション住まいだった方々が、郊外の戸建て購入を検討されるなど、2020年までとは少し異なる形で伸びていることがわかります。

一方、徹底した封じ込めで早期に感染拡大を食い止めこのパンデミックの中でも経済成長を続けている中国や、ワクチン摂取が順調に進み経済回復しつつあるアメリカの旺盛な住宅建設需要によって、建材である木材の不足・価格の高騰(ウッドショック)という問題が起こっています。

世界的な木材需要の高まりは、かねてより問題視されてきた無秩序な伐採による森林資源の減少を加速させる恐れがあります。

森林資源の減少による問題は、二酸化炭素など温室効果ガスの吸収量が減ることで、温暖化の加速を招くといったことだけでなく、森林を住まいとする様々な生物の生態系破壊による影響についても、近年注目が高まっています。

そのため、木材業界においてもこれまでの慣習を見直し、持続可能な仕組みへ変えていく活動が求められています。


今回は、世界を見渡して私自身が気になった、木材業界のサプライチェーンの中で、森林環境を守る活動を進めている3つのスタートアップをピックアップして、未来の事業のヒントを探っていきます。


1. TIMBETER, Estonia

2013年、エストニアのタリンで創業されたTIMBETERは、画像認識AIを使った木材の自動測量・木材の在庫管理ソリューションを提供しています。

電子政府でも有名なエストニアですが、ブロックチェーンやAIなど最先端の技術を習得している優秀なエンジニアが多く、Skypeをはじめとした世界的なスタートアップをいくつも輩出しています。

建築資材の原木の多くは、アジアやアフリカ、南アメリカなど森林資源が多い国で生産されていますが、その生産プロセスは多くが人力に頼ったもので、長い間変わってきませんでした。

伐採から輸出までに多くの時間を要しており、加えて適切な管理もなされていないことから、無駄な伐採なども問題になっています。

冒頭に書いたように、世界的に木材需要が高まる中で、AIを駆使して限りある資源の価値を短期かつ正確に測定し、在庫を適切に管理することのできるソリューションとしてTIMBETERは世界中で高く評価されています。

スウェーデンやチリなど他国の行政からも認証されているほか、既にグローバルで多くの企業に利用されており、日本においても伊藤忠建材がこのTIMBETERを採用しています。



2. EcoTree, Denmark

EcoTreeは、2019年にデンマークのコペンハーゲンで創業されたスタートアップです。

既存の森林を伐採するのではなく、新たに植え育てた木を木材として活用することで貴重な森林資源を守ることを目的とした、苗木の植樹・育成に対する投資サービスを提供しています。

ユーザーがサービス内で苗を購入すると、その苗は専用の土地に植樹され、EcoTreeがユーザーの代わりにその苗を育てていきます。一定以上に育った木は、原木として出荷され、そこで得られた収益がユーザーに還元されます。

ユーザーは植えられた木に対する権利を所有していて、伐採後も木が再生し続ける限りユーザーは収益を得ることができます。

短期的な収益を目的とした投資ではなく、地球環境の保全や、子や孫の世代に緑の資産を残したいと感じる人を対象に投資を募り、植樹していくことで、森林資源の保全に貢献しています。



3. AirSeed, Australia

AirSeedは2018年にシドニーで創業されたスタートアップです。

ドローンを用いて植林に適した土地を分析し、ドローンから適切なスポットに特殊加工された種子を投下することで、これまでに比べて大幅に効率化された植林を行っています。

原木を伐採し、木材に加工するプロセスは様々な技術が導入され、年々効率化が図られていますが、木を植え育てる工程は今もその多くを人の力に頼っています。

その中で、AirSeedはドローン1台で1日あたり50人分の作業量を賄うことができ、一本あたり25倍のスピードで植林することができます。

AirSeedは2024年までに1億本の植樹を目指し、様々な団体と共同で取組を進めており、WWF(世界自然保護基金)とも、2019年の山火事で焼失したコアラの生息地の再生に向けた、ユーカリの植樹プロジェクトを始めています。



今回はウッドショックと呼ばれる資材不足に揺れる木材業界において、需要に合わせていたずらに森林伐採量を増やすのではなく、AIや金融スキーム、ドローンなどのテクノロジーを駆使して森林資源を守ることで、持続可能な未来作りに貢献している3社のスタートアップを紹介しました。

木材業界という古くから続く巨大サプライチェーンの中で、TIMBETERは事業者向け、EcoTreeは消費者向け、AirSeedsは行政や団体向けにと、それぞれの顧客ニーズに対して異なる価値を提供しながら「森林資源の保全」に貢献しており、この3社の取組は他領域の事業開発においても大いに参考になると思います。


次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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