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食材加工の副産物を活用する海外サステナブルスタートアップ

ステイホームの時間が増えるのに伴って、自炊をするようになったと言う声をよく聞きます。私自身、まだまだ妻の手伝いレベルですがかつてはほとんどしなかった自炊をするようになり、作れるメニューも少しずつですが増えてきました。

自分でいろんな料理を作るようになってみると、野菜の切れ端や魚の骨など、調理の過程で使われなかった食材の余り物が多く発生することに気づきます。


出来合いの料理を食べているときにはあまり意識してきませんでしたが、調理の過程で発生するこうした余り物は一般家庭だけでなく、レストランなどの飲食店や食品加工メーカーなどでももちろん発生しており、その量は一般家庭の日ではありません。

世界中で、こうして発生する食材の余り物はその多くが生ゴミとして廃棄、埋め立て処理され、温暖化の原因になるメタンガスの発生源となっているという現実もあります。


一方、食材の余り物を生ゴミとしてただ廃棄するのではなく、堆肥として活用したり、掃除に利用したりするなど、暮らしの中で再利用してきた歴史もあります。

世界中で食料問題が叫ばれている中、日々我々が食べている食材が持つ価値を我々は余すことなく活用できているのでしょうか。


今回も世界を見渡して私自身が気になった、食材の余り物を使って新たな価値を生み出す3つのスタートアップをピックアップし、未来の事業のヒントを探っていきます。



1. Kaffe Bueno, Denmark

2016年にデンマークのコペンハーゲンで創業したKaffe Buenoは、コーヒー抽出の過程で発生する残りかすを使って、石鹸やケアオイルなどのパーソナルケア商品を生産・販売しています。

コーヒー豆には抗酸化成分や、抗うつ作用をはじめとした健康に良いとされる成分が多数含まれていますが、コーヒーを淹れる過程では全成分の1%以下しか抽出されず、成分のほとんどはコーヒーかすの中に残ったままだと言われています。

世界中で年間90億kgも消費されているコーヒー豆ですが、ほとんどの成分が利用されずに(飲まれずに)廃棄されていると考えると、そこには非常に大きなロスがあると言えるかもしれません。

Kaffe Buenoでは、ホテルやオフィスなどで発生するコーヒーかすを活用し、その中に残る有用成分を抽出・分離して、アンチエイジングのケアオイルや、スクラブソープ、クッキーなどに作り替えて販売しています。

ホテルやオフィスで発生したコーヒーかすはこれまで基本的に廃棄されていましたが、新たな価値を与えて生まれ変わらせ、再びホテルやオフィスにおいて提供することで、コーヒーの価値を余すことなく活用するエコシステムを構築しています。



2. UglyGood, Singapore

UglyGoodは2017年にシンガポールで創業されました。

生搾り後のオレンジの皮を回収し、食器用洗剤や動物の飼料、ケアオイルなどに作り替えて販売しているスタートアップです。

中国ではみかんの皮が古くから「陳皮」と呼ばれ生薬として使われていたり、現代の日本でもオレンジオイルが配合された洗剤が販売されたりしていますが、その他の多くの地域では、果汁以外の部分は有効活用されずに、そのまま廃棄されるのが通例となっています。

シンガポールも例外ではなく、年間20,000tも発生する果物ゴミの多くは再利用されずに焼却処理されています。

UglyGoodは、レストランやホテル、ジュース店などに出向き、果汁を搾り終わった後のオレンジを回収して、そこからオイルやセルロースなどを化学的な処理により分離し、先述したような新たな商品へと生まれ変わらせています。

UglyGoodの起業家は共に20代と非常に若いですが、サステナブルが当たり前の価値観である将来を見据えた、新たな世代が作る未来の事業として高く注目を集めています。



3. Renewal Mill, US

2016年にオークランドで創業されたRenewal Millは、豆腐やオートミールなどの製造過程で発生する副産物を使ってクッキーやブラウニーなどを製造・販売しているスタートアップです。

以前シンガポールのSinFooTechを紹介した記事にも書いた通り、豆腐が世界中で注目され、様々なメーカーが豆腐を生産するようになりましたが、その製造工程で発生するホエイプロテイン(おから)はほとんど消費されずに廃棄されているという現状があります。

またアメリカで多く消費されているオートミールやひまわり油もその製造過程でタンパク質を含む多くの副産物が発生しますが、こちらも有効利用されることなく廃棄されています。

Renewal Millはこれらの副産物を食品メーカーから回収し、再び加工して、代替小麦粉として販売するほか、その小麦粉を使いクッキーやブラウニーなど新たな食品を製造し、販売しています。

我々日本人からすると、これまでもおからは食材として扱ってきたわけですが、Renewal Millのように国を超えてその有用性、食材としての価値が再注目されています。

現在脚光を浴びている日本食に加え、我々日本人がこれまで培ってきた食材の活用方法についても、世界から注目される日はそう遠くないかもしれません。



今回は、食品加工の過程で発生する副産物を廃棄することなく、新たな価値に変換することで、食材を余すことなく有効活用しているスタートアップを3社ピックアップして紹介しました。

改めて見返すと、中国でも古来から、あるいは日本の家庭で以前から行われてきたような食材活用/再活用の取組を、今、会社の事業として持続可能なものに昇華し、社会に新たな価値を提示することで人々の価値観や行動を変えていこうとする姿勢は、他の事業においても大いに参考になるところがあります。


次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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