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ウォーミングアップ。それは戦う前の最後の準備である。

WATANABEトレーナーの森です。

平年より3週間ほど早い梅雨入りを迎えた5月も間もなく終わりを迎えます。

部活動をしている高校生年代にとっての5月はインターハイの予選会シーズン。多くのスポーツがトーナメント制をとっているので、勝てば全国大会に一歩近づきますが、負ければそこで終わりとなります(順位次第では近畿大会など地方大会まで駒を進めることもあります)。

インターハイは3年生にとっては最後の大会として位置づけられることの多い大会。今まで積み重ねてきたものを全て出し切り、悔いの無いよう頑張ってもらいたいものです。

試合で自分たちの実力を100%発揮する。そのためにハードな練習はもちろん、様々な準備が必要です。そして試合前に行う最後の準備といえるのがウォーミングアップ(以下、W-UP)です。

特に試合前のW-UPが上手くいくかどうかで試合の勝敗を大きく左右することもあります。

W-UP?しっかり行ったからって、パフォーマンスが上がるっていっても知れてるでしょ。身体温める程度に適当にやったからって問題ないよ。

本当にそうでしょうか?こんな話があります。

2016年リオ五輪の陸上競技男子100m走の成績をみてみると、金メダルと銅メダルのタイム差は0.10秒、わずか1.0%で、銅メダルと8位のタイム差は0.15秒、わずか1.5%です(注)

注)出典 河森直紀「テーパリングのためのピーキング」有限会社ナップ,2018年2月


これは極端な例かもしれませんが、とりわけ相手との実力に差が無い場合、ほんの数%というのはパフォーマンスにとって大きなファクターといえるのではないでしょうか。

W-UPの目的

そもそもW-UPは何の目的で行うのか、明確にしましょう。目的が無いまま行うと意味の無いものになりますし、内容によっては身体にとってマイナスに働く事だってあります。

ここからはW-UPを行う目的について説明していきます。

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W-UPには以下の目的があります。

①パフォーマンスの向上と、トレーニング(練習)の効率化

→寝起き直後に全力100m走をして自己ベスト記録が出る事なんてあり得ませんよね。W-UPにより身体の各機能を試合モードにチェンジさせ、しっかり活動できる身体に仕上げていく必要があります。

②外傷・障害の予防

筋肉や関節の動き、それらをコントロールする神経伝達の速度を高める事で、咄嗟の動きに対して上手く判断、反応することができます。ほんの一瞬関節を安定させる筋や腱の反応の遅れが捻挫などの外傷に繋がります。

また、試合ではリラックスし過ぎることも過度な緊張もパフォーマンスにとってはマイナスに作用します。集中力の欠如はケガにも繋がりやすく、注意が必要です。W-UPで声を出したり、集中力を高める事で適度な緊張(至適緊張)を生み出すことができ、パフォーマンス向上の観点からも有益といえます。

③体温の上昇

パフォーマンスと筋温は関連が深く、筋肉は運動するにあたり至適な温度があります。真冬の寒い季節、身体が冷えて固まっている状態では筋肉は動きづらいですよね。W-UPにより体温、筋温を適切に上げることによりパフォーマンスの向上に繋がります。

W-UPの組み立て方

では、みなさんが現在行っているW-UPはどんな流れで行っているでしょうか?

ジョギング→ストレッチ→ダッシュ→試合(練習)

しっかりと考えて組み立てられたW-UPを実施しているチームも最近多いと思いますが、上記のような流れを行っているチームもまだまだ多いかと思います。勿論このような流れも全くダメという訳ではありませんが、より効果的なW-UPになるよう考えてみましょう。

RAMPフレーム

W-UPの組み立てる上で参考となるものとしてRAMPフレームというものがあります。W-UPで重要な項目の頭文字をとっています。チームのW-UPにこれらの項目が入っているかどうか照らし合わせてみると、抜けているところ、足りていない項目が見つかるかもしれません。

Raise(筋温・体温の上昇、血流量増加)

⇒ジョギング、ランニング等

W-UPの目的のところにもありましたね。

Activate(筋の活性化、使うべき筋にスイッチを入れる)

⇒体幹エクササイズや、臀部の筋肉を使ったエクササイズ等

投げる・走る・跳ぶ・蹴る・当たる(コンタクト)といった動きでは、臀部(お尻)など股関節周りの筋肉や、肩甲骨周り、体幹部の筋をしっかり使えるようにその部位を使ったエクササイズを取り入れる事が重要です。

Mobilize(可動域を上げる)

⇒ダイナミックストレッチ(サッカーにおけるブラジル体操のようなもの)等

筋と関節が協調してしっかりと動くように、スムーズで大きな動きを意識したものを取り入れます。じっくり伸ばすスタティック(静的)ストレッチも効果的ですが、W-UPの前にセルフアップとして入れておきたいですね。

Potentiate(力発揮を増強させる、強度を上げる)

⇒ダッシュ、フットワーク、コンタクトを伴う1on1など

実際の競技で要求されるレベルの負荷をW-UPの段階で経験させる事が非常に重要です。スピードに関しては最低でも90%のスピードを用いた動きをW-UPで実施することが重要です。

アップでバテると嫌だから手を抜く選手もよく目にします。だからといってダラダラ流して行うと、身体が適応できずにケガをしたり、試合序盤でパフォーマンスが上がらない事によって思うようなプレーができず苦戦を強いられることも出てくるでしょう。結局のところそのツケは自分に戻ってくるのです。

W-UPの流れ(例)

簡単ではありますが、W-UPの大まかな流れです。

pre-W-UP:身体の硬い部位、ケガしがちなところを事前にストレッチしたり、フォームローラーで軽く筋膜リリースなどを行う。このタイミングでActivateを取り入れ、各関節の安定性を高めるのも効果的です。

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基礎的(一般的)W-UP:ジョギング~ランニング、スキップ、縄跳びなどで体温を上げます(寒い時はいきなり走り始めずにウォーキングを入れるのもおすすめです)。ランジウォークやスモウスクワット、レッグスイング(脚振り)などダイナミックストレッチや反動を用いたバリスティックストレッチでmobility(可動性)を高めましょう。

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専門的W-UP:競技特性にあった動きを入れます。ジャンプやダッシュ、パワー系やスピード・アジリティ(フットワーク)系の要素を入れ、神経-筋に刺激を与えます。ボールを扱うといった技術系の種目は実践形式を用いて、最終的な目標レベルまで上げる。

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以上、大まかなW-UPの流れになります。

上記W-UPはあくまでも簡単な例となります。これに加え、競技特性やチームの状況などを考慮して構成していくことが重要です。

試合でのW-UP

試合会場では練習と同じようにはいきません。駐車場など固いサーフェス(床)でアップを行わなければならなかったりするのでシューズ選びも気をつけなければなりません。

またこの時期は暑さ対策も必要になってきます。炎天下に晒されながら行うのでは無く、日陰のある場所を選んだり、アップの合間に水分補給をするタイミングを決めておくなど、考える事は山ほどあります。

そして試合時のW-UPで一番大事なこと、それは普段通りです。

いつも通りのパフォーマンスが出せるかどうか、その環境を自分達でいかに作っていくかが大切です。試合の日だから集中する。試合の日だから気合い入れる。試合前だから声を出す。これは既に普段通りでは無いですよね。

120%を出す必要は無いんです。100%で十分。だからこそ普段の練習のW-UPからしっかりと行う必要があります。

でもチームメートの声援で101%を発揮できるのもスポーツの醍醐味ですよね。

最後までお読みいただきありがとうございました!

この記事を書いた人→森トレーナー

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