[母子家庭統合失調症の母との生活]10歳 その1 ある朝

「お父さんそこにいるの?うん…うん…そうなんだ…」

ある日、目を覚ますと、隣の部屋で母親が父親に話しかけている声が聞こえてきた。
母親は今にも泣き出しそうな声で話し続けているが、父親からの返事はない。
それもそのはず、父親は1週間ほど前に持病が悪化して死んでいる。

僕は咄嗟に「父が死んだショックで、母が狂った。今出て行ったら殺されるかもしれない」と本気で思い、怯えながら寝たふりを続けた。
(今思うとなんで"殺される"なんて思ったのか謎だが、その時は本気でビビっていた。)

聞こえ続ける母親の声に怯えること約5分、隣で寝ていた妹が起きあがり、おもむろに母親の声のする方へ向かって行った。
「なにやってるの?」

こいつやるな。
僕が言いたかったことを、ド直球で母親にぶつけやがった。(この時も僕は寝たふりを続けながら妹がどうなるか様子を見ていた。なんてひどい兄だw)

「お父さんがここにいるんだよ。」
「ふーん。そうなんだ。」

妹(当時6歳)すげぇ。
とにかく、母親に殺される心配はなさそうだ。
身の安全を確認した僕は、あたかも今起きたような白々しい演技をしながら母と妹の元へ向かった。

その後の母は何事もなかったかのように朝食の準備を始めた。
「なんだ、父が死んだショックで、仏壇に話しかけていただけだったのか。」その時はそうとしか思わなかった。

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