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【伝説のコンサルタントに学ぶ2】一倉定の経営心得~最高責任者としてのあり方~


◇◆社長の決定で最も難しいのは、「捨て去る」という決定である◇◆


優秀会社は例外なく「捨てる名人」であり、
破綻した会社は例外なく「切捨音痴」である。

一倉さんはそのように書いています。

事業を成功させる上で何を成すべきなのか、
逆に言えば「何をすべきでないのか」
成果を上げる社長ほどよく理解しているということ。

ドラッカーも「捨てる勇気」が大切であると語っています。

何か新しいことを行うためには、今行っていることを削って時間や費用を充てる必要があります。成果を出すためには、まとまった時間や投資が必要ですから、「何をやるか」と考えることは、同時に「何をやらないか」を決めることでもあります。

なぜ、新しいことを行う必要があるのか?

それは、企業の目的が「顧客の創造」であり、そのためには「変化への対応」が不可欠だからです。

“事業経営とは、変転する市場と顧客の要求を見極め、これに合わせてわが社をつくりかえることである”

一倉さんのいうように、変化に対応できなければ企業は破綻してしまう。イノベーションが重要なのも、変わっていかなければ社会に生き残れないからです。

ただし、変わらないもの、変えるべきでないものも存在します。それが企業の社会的責任であり、優れた企業は必ず優れたビジョンを持っています。そのビジョン、社会的責任、つまり組織としての使命を達成するために、変わっていかなければならない。

だから、過去の成功は過去のものとして「捨て去る」という決定が必要です。どれだけ成果を残してきたトップ営業マンであっても、優れたアイデアを形にして表彰されたとしても、それはすでに過去のもの。大切なのは、これからの組織の未来に何が必要であるかということ。


◇◆環境整備には、いかなる社員教育も、どんな道徳教育も足元にも及ばない◇◆


一倉さんは、「掃除」の重要性を語っています。

古くから、武芸でも芸事でも、どのような仕事でも、修行の第一歩は常に「掃除」とされてきました。これをやらなければ人間形成はできないことを、昔の人たちは良く知っていた。

これは私が学生時代のアルバイトで心掛けていたことですが、飲食店で来店が落ち着いて暇な時間には、率先して店の掃除をするようにしていました。そうすると不思議と客足が増えるのです。

暇そうにスマホをいじっていたり、談笑したりする店よりも、暇な時こそチャンスと思い店内をキレイにしているほうが、お客様を引き寄せるようです。

意識的に掃除を行うことで、自分自身の調子も整うので、店の美化と共に従業員の心の整備にも繋がる一方、掃除をしたがらない人も多いので、なかなか重要性に気がつかないで過ごしてしまうのかもしれません。

ある自治体の元公務員の方が面白い取り組みをされていました。

地域の小学生たちが朝の授業前や休みの日に、商店街を掃除しに行くという活動です。「商店街の問題を自分事として捉える」という意味を込めて、町の人たちとコミュニケーションを取りながらの掃除によって、子供たちの心の教育にも繋がる取り組みの一例だと思います。

社会人になると、そうした意識も忘れがちになります。始業前の朝の一時間を使って、オフィス周辺の掃除をするのも、地域とのつながり作りにもなって良いかもしれませんね。


◇◆なぜ人材が育たないのか◇◆


本書の特に後半では「人材育成」について語られています。

“社長が社内にいる限り、管理職は育たない”

“人材の下には人材が隠れていても育たない”

“社員の第二の人生まで心をくばる社長は「名社長」である”

など、はっとさせられる言葉が並んでいます。

この本が書かれた当時はまだ、年功序列や終身雇用が当たり前の時代であり、現在の転職が当たり前の社会とは少々ずれる感覚もあるかもしれませんが、基本的にはどの時代でも当てはまるものだと思います。

松下幸之助さんの「任せて任せず」にも通じるものがありますが、社員に過度の期待をし過ぎず、甘やかし過ぎず、適材適所の人材配置を考えること。

そして印象深いのは、「ワンマン経営こそ本当である」という言葉です。

組織の中で最終的な責任を負えるのは経営者である社長だけです。社員は、社長に対してある意味で責任を押し付ける必要があります。だからこそ、社員に任せるべきは「実施」であって「決定」ではないということ。最終的な意思決定こそが社長の真の役割であって、それは常に「お客様」へ向いている必要があります。

“社長の定位置は社長室ではない。お客様のところである”

この言葉のように、社長が考えるべきは「いかにして社会の役に立つか」ということ。より良い価値を生み出し提供するにはどうすれば良いかを考えること。それも目の前の顧客ではなく、未来の顧客を見続ける。社員が付いてきてくれるかを心配するのは幹部やそれ以下の役目。リーダーは振り返っている余裕はないのだと、一倉さんは言いたかったのだと思います。

群れからはぐれた羊を探すのは、リーダーの役目ではない。その羊が本当に組織に必要な存在なら、助けに行ける余裕のある人が必ず助けに向かうはずだから。

優れた成果を出している企業の社長は、口をそろえて「うちの社員は良いメンバーだから」と言います。

任せられて、少し放っておかれるくらいのほうが、人は自ずと成長していくのかもしれませんね。

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