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【読書記録】玉依姫(阿部智里)

【あらすじ】
高校生の志帆は、かつて祖母が母を連れて飛び出したとう山内村を訪れる。そこで志帆を待ち受けていたのは、恐ろしい儀式だった。人が立ち入ることを禁じられた山の領域で絶体絶命の少女の前に現れた青年は、味方か敵か、人か烏か?ついに八咫烏の支配する異世界「山内」の謎が明らかになる。(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

数年前から追っている阿部智里さんの八咫烏シリーズの5作目を久々に再読。

今までは山内の八咫烏の世界の話だったのに、突然の人間界!山内の外には人間の世界があるというのは仄めかされてきたけど、こんながっつり人間界の話になるとは!

普通の高校生の志帆ちゃんが、まじでやばい村でまじでやばい祭りの生贄にされちゃうんだけど、捧げ先が八咫烏の世界でもときどき話題になってた山神様だったという…ここで繋がるのか〜〜

人間界に馴染んでる大天狗や鳥天狗、そして天狗たちとの交易の様子も描かれていて面白い。天狗は人ならざる者たちのあり方について、自らの自覚と人間からの認識が大事だと言っていて、誰かの認識がなければ神秘はない、だからこそ人間の知られていない八咫烏の世界が綺麗に残っているのは驚きだという。この自覚っていうのが今回の話の肝だった気がする。

ここにきて、山内の謎が解き明かされる。山神はもともと別の土地にいる偉大な神様だけど、訳あってこの土地に八咫烏とともに来た。前の土地では多くの社領を持っていてたくさんの供物が捧げられていたが、新しい土地ではその供物の供給がないため、新しく山の中に山内を作って新しい荘園とし、八咫烏にその管理を任せていた。八咫烏達は山神のための供物を捧げるために人の姿が取れるようになった存在だった。しかし、100年前に事件があり、八咫烏は役目を放り出し、山内と神域を繋ぐ禁門を閉ざし、本来の役目を忘れて山内の中で閉じこもって暮らしていた…

100年前の事件は、先代の巫女だったサヨが母の見舞いに村に戻って帰ってこなかったこと。裏切られたと思った山神怒り狂って我を忘れて暴れてしまう。

今回、志帆も同様に祖母の葬儀のために山を降りて村に戻るんだけど、生贄が逃げたと思った村人たちが、祭りのときに山神が下りてくる沼に生贄を返すつもりで沈めてしまう。100年前のサヨにも同じことがおきててサヨは逃げたわけじゃなかったということが判明するんだけど、サヨも意外と悪いやつというか、山神が他の巫女を愛するのが許せなくて、山神が怒って他の巫女を殺すように、わざと女たちを逃がしたり、志帆が自分と同じ目に遭うように、祖母を殺したりしている。愛が重すぎ〜〜

最後、山神は「英雄」に退治されてしまうんだけど、実は山神が荒魂、英雄が和魂でひとつの山神だったという真実が明かされる。やっぱり作者は最後の最後でもう一展開用意してるんだよね。さすがすぎる。

山神の話はこれで決着が着いたけど、山内の世界はどうなるのか、猿たちとの関係はどうなるのか、まだまだ気になることがたくさんある!

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