『怪盗対名探偵 フランス・ミステリーの歴史』(抄) 松村 喜雄
【ガストン・ルルーはこの分類に従えば、社会派作家といった方がいい】
ガストン・ルルーはフィユトンの王様だった。
フィユトンとはフランスでいう新聞小説のこと。《フィユトンはもともと社会派の色が濃く、作家には新聞記者とか編集者出身が多い》と松村が言うとおり、ルルーもまたかつて「ル・マタン」紙の特派記者だった。つまり、ルルーは《社会派作家》なのだ。
しかし、この《社会派》は、当然日本の《社会派》とは意を異にする。日本の《社会派》がシリアスな基調と社会問題の提起を軸とするのに