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【#Real Voice 2023】 「『できない自分』、でも前に進もう」 1年・金指功汰

私はア式蹴球部に入部してから今までの半年間でたくさんのことを考え、もがき苦しんできた。サッカーでは自分のプレーに迷いが生じ、何が正解なのか分からないままプレーしていた。自分がこれまでどのようにプレーしてきたのかを忘れ、自信を喪失していた。試合のメンバー発表では、毎週のように自分の名前は呼ばれなかった。試合のメンバー外のみで行く体育会各部新入生パレード、他のカテゴリーのセットプレー練習、メンバー外の人のみの対人練習。「何が楽しい?」。「何が面白い?」。何のためにサッカーをしているのか分からなくなった。別に最初から上手くいくとは思っていなかったし、いつかは壁にぶち当たることも分かっていた。しかし実際に壁にぶち当たると、目の前の壁は上の方が雲に覆われて高さすら分からないようなものだった。どれだけ努力すれば、どのように努力すればその壁を越えられるのかさっぱり分からなかった。


また、私は仕事面においてもミスを連発した。上手くいっていない自分に腹が立って周りを見ようとせず、自分のことを常に優先していた。自分がミスをするたびにチームに迷惑をかけ、信頼を失った。チームに迷惑をかけた申し訳なさや信頼を失ってしまった悔しさはもちろんあったが、何よりも当たり前のことができない自分自身に失望した。ミスをネタにされ笑われる毎日。悔しくても悪いのは全部自分。言われて当然。何もこんな人間になりたくて、この伝統あるア式蹴球部に入ったわけじゃない。私という人間の根本を見直さなければならないと思った。

サッカーのプレー面でも仕事面でも自分のできないことばかりが目立ち、「できない自分」というものを自覚するようになった。変わらなければいけないと思い、高校時代の教えを思い出すことにした。


私は早稲田実業学校・高等部出身で、サッカー部在籍時に監督から多くのことを教わった。中でも印象的なのは、「ベクトルを自分に向ける」ということだった。高校1年生の時、ボランチのポジションを務めていた。中学の3年間を経てボランチというポジションでプレーすることに自信を持っていたので、高校でもボランチで試合に出て活躍したいという思いがあった。入部当初はスタメンで試合に出ることが多かったが、徐々にプレーの質が落ち試合に出られなくなった。明らかに自分のプレーが悪いことが原因で試合に出られないのに、プライドが邪魔をして環境のせいにした。自分は上手いと思い込み、チームのやりたいことよりも自分のやりたいことを優先しようとした。悪い意味で「自分がチームを変えてやる」と粋がっていた。高校2年生になると、監督は私を左サイドバックで使うようになった。私はボランチでプレーしたかったため、そのコンバートに不満を抱いていた。慣れないポジションでは上手くいかないことが多く、自分が良くない時には監督が容赦なく私を指導した。指導されるたびに私は「本職じゃないのに、、、」と心の中で言い訳をし、不満を募らせるばかりだった。しかし同時に、全く成長していない自分にも気づいていた。何かを変えなければいけないと思い、意識したのは「ベクトルを自分に向ける」ということだった。慣れないポジションでも自分のミスをしっかりと認め、できるプレーを増やす努力をした。そして、チームが勝つためには何をすべきかを考え、自分のことよりもチームのためのプレーを心がけた。こうした意識の変化を通して、私は自分自身の成長を実感することができ、またチームの勝利に貢献できる喜びと誇りを感じられるようになった。


私は「ベクトルを自分に向ける」とは、起きた事象は全て自分が招いた結果であることを認め、これから起こる事象もすべて自分次第であることを覚悟した上で努力をすることだと解釈する。失敗が続いた時は、人間なら誰でも現実から目を背けたくなる。「どうか夢であってくれ」と失敗をなかったことにしたいと思う。けれども、起こしてしまった失敗はなかったことにはならない。仲間から責められ落ち込んでも、言い訳を探そうとせずにその失敗と真摯に向き合う。今こそ原点に帰り、ベクトルを自分に向けて行動する時だ。「できない自分」でも、「できない自分」だからこそ前に進み続ける努力を怠ってはならない。これからの人生も多くの壁にぶち当たり、その度にもがき苦しむだろう。しかし、目の前の壁を一つずつ一つずつ乗り越えた先にしか成功はないことも分かっている。人間は一気には成長しない。少しずつ少しずつ前に進むことで、やがて大きく成長できるのだと思う。私は決して特別な選手ではないが、努力次第でチームを勝たせられる存在になれるかもしれない。これまでたくさん迷惑をかけてきた分、失敗を繰り返してきた分、成長して、チームに必要な存在になる。



金指功汰(かなざしこうた)
学年:1年
学部:商学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部

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