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【#Real Voice】 「サッカーを続けてきた人生は正解だったのか」 4年・須藤友介

インカレに出るか、引退か
11月に入り、現実的な2つの未来が頭をよぎる中で、結局、須藤友介のサッカー人生は何だったんだろうと思うようになった。

やめることも選択肢にあった大学サッカー生活。それでも早稲田大学ア式蹴球部で活動することに執着した意味はなんだったんだろうと考えるようになった。

サッカーの経験は、必ず次に繋がるから。得たものはあるから。それって何だったっけと、冷静になっては、面倒になった疑問。そして迫り来る部員ブログの締め切り。良い機会だから、一旦向き合ってみようと思う。
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①頑張る理由があることが幸せだということ
 
「もうすぐ引退かもしれない。そしたら何をすればいいんだろう」
「頑張る理由があることが幸せだったって気づくよ」
父親との何気ない会話。確かに。
 
朝起きて学校に行ってから練習をする。家に帰って寝る。しんどいけど、オフの日を糧に頑張る週の6日間。その当たり前の生活が崩れた時、俺は何をするんだろう。

バイトして、卒業旅行の旅費を稼ぎたい。サッカーが忙しくて、飯行こう行こう詐欺を繰り返してきたみんなに会って遊びたい。そんな無限の欲望はあるけど、なんかそれだけじゃいけないような気がしてくる。なんかに頑張っていないと。そんな衝動に駆られるだろうなと想像できる。
 
そっか。俺は、サッカーという頑張る理由があるから、自分の人生を肯定することができていたんだ。何かに熱量を注ぎ、だるいとか、眠いとか、時には愚痴りながらも、結局頑張ることを選ぶ自分が好きだったんだ。

自ら何かを作り出さなくても、サッカーという頑張れる理由があったこと。私は、恵まれていて、幸せだったことに気づくことができた。
 
②頑張れないという状態を認めること
 
でも実際、1日や週単位で見れば、辛いことや面倒なことが多かった。楽しい時なんかあんまりなくて、頑張ることに疲れたこともある。
 
早稲田大学ア式蹴球部4年・副将。
重くて、光栄な役職。でも、明確な仕事がないから、何かを自分で作り出さないといけない。わかりやすく目に見えたり、形に残るものでもないから、達成感や評価を感じることもない。
だけど、カバーとバランスを保つ大事な役割がある。正直、これはかなり難しかった。
色々な正義と正義のぶつかりをみながら、チーム単位で考えて、自分が正しいと思う正義に調整すること。伝えること。
片方を取れば、片方を失う。その失うものを最小限にするために、人を傷つけ、傷つくことに疲れ、全てを投げ出したくなった。「頑張らないと」と、思えば思うほど、頑張れていない自分を許すことができず、また頑張ろうとする。ぶっちゃけア式を卒業するまでの日数を数えたこともある。
 
そんな時、去年卒業した先輩と電話をした。
「頑張れない自分がいるなら、一旦頑張れない状態を認めること。頑張れない自分を責めるのではなく、1つ1つ、最低限頑張れるものに集中すること。そしたら、それでもまだ頑張りたいと思える時が来る。その時に、もっと頑張ればよい」
 
そうか。全部が全部頑張るのではなく、頑張れない自分を認めても良いのか。とりあえず整理して、目の前の1つを頑張ってみよう。同時に色々なことを処理できるタイプではないし、ストレス性能も高くない。カッコよく繕うだけでなく、ダメな自分を認めてあげる時があっても良い。目まぐるしく何かが起こり続けた4年目を思い出して、今後も自分とうまく付き合っていこう。
 
③ 「須藤友介」という人間の価値観を作ってくれたということ
 
就職活動を通じて、1つだけいつも自信をもって答えることができた質問がある。
 
「あなたにとって大切な軸や価値観や、なりたい社会人像はありますか?」
『熱量・礼儀・思いやり』を兼ね備えた自然と応援される存在になりたいです。
 
ずっとそうやって答えてきた。
「俺もこの人のようになりたい」
「この人のために何かをしたい」

そんな人達に共通する3要素。人の心を動かすから、周囲はその人のことを自然と応援してしまう。その人を中心にポジティブなパワーが集まり、結果、組織を牽引することができる人。憧れのようで、目標のような、追いかけたい背中をたくさん見てきた。
 
「全てがファイナルだと思え。」
目の前の勝負にこだわり、全身で感情を現す恩師と出会った。
「そのマインドで日々を過ごすから、決勝戦でも輝くことができる」
まだ中学生だった私は、その言葉通りに、毎日を積み重ねていく姿に憧れを感じ、
この人のように、熱量で人の心を掴んでいく人間になりたいと思った。
 
当時まだ小学生だった私の目線までしゃがみ込み、必ず目をみて話をしてくれるコーチがいた。厳しいことも色々飛んできたけど、1人の人間として向き合ってくれることに喜びを感じた。
だから私は、この人のように、相手の立場に関わらず、礼儀を持って接することのできる人間でありたいと思った。
 
サッカーはうまくいかない方が多い。そんな時に、気にかけてくれる人の言葉にいつも救われてきた。言葉をくれる人は、必ず周りの異変に気づくアンテナを持っていて、放置しない人達。
だから私は、この人達のように、周りの人たちの想いを自分から知りにいき、声をかけられる人間でありたいと思ってきた。
 
ここに書ききれない多くの場面があり、多くの背中がある。
一生懸命で、残酷で、厳しいサッカーの世界でしか見ることができない、仲間や指導者の偉大な背中を追いかけてきた。その日々の積み重ねが、須藤友介を作り、須藤友介が「良し」とする価値観や軸を持たせてくれた。
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こうして振り返ると、本当に色々あったと思う。総じてしんどかった。色々な人の期待に応えることができず、申し訳ない気持ちも残る。
でも、16年間、私が歩んできたサッカーの道は、きっと間違ってない。
見て、聞いて、感じて、自分の中で整理してきたものは、誰にも奪われるものではない。
 
私は、サッカーを続けてきて、本当によかった。
 
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そしてア式の4年目。
正直、満足のいくことなんか何もなかった。俺は何をするべきなんだろう。今芽生えている感情は、本物なんだろうか。ずっとわからなかった。でもそんな私だから残せるものを、慕ってくれる後輩の顔を思い浮かべながら伝えたい。
 
① チームと自分のバランスを上手く保つこと
 
4年になれば、チームのために行動するべきだ。それが求められるし、正解だとも思う。だから何があっても、チームのための振る舞いや姿勢を変えてはならない。これが綺麗なア式の4年の姿。

でも、実際には感情がある。サッカー人生の終わりが見える人。サッカー就活に踏ん張る人。就活の成功と失敗。AとかB、試合に出る出ない。選手とかスタッフとか。みんなそれぞれの立ち位置で、チームと自分の狭間に苦しむ時がくる。チームを捨てると、チームが壊れてしまう。自分を捨てると、何の感情も湧かなくなる。正論を聞くのが嫌になり、無の状態で、建前の自分で過ごすのが楽になる。
 
そんな時がきたら、一旦目を瞑って考えて欲しい。自分が自分のために頑張ってきたことは何か。チームのために頑張ってきたことは何か。そのそれぞれに誇りを持った上で、その時に正しいと思い、かつ現実的に可能な振る舞いをしてほしい。
 
②自分が本当に守りたいものを守ること
 
上級生になり、チームを運営していく立場になると、決断しないといけない時がくる。
何かを選べば、何かを失うことになる。それは、チームが失うものだけでなく、自分が失うものもある。正しいものが1つではないから、何を選べば良いのかわからなくなる。
 
でもそんな時は、落ち着いて考えてほしい。
今まで頑張ってきた自分が何を守りたいのか。守るべきなのか。
もしかしたら、自分が大きな犠牲を払ったり、人を傷つける瞬間もあるかもしれない。
でも、その軸で考えた時、きっと決断できると思う。
 
③仲間をリスペクトすること
 
4年間、ア式で過ごしていく中で、学年やチームでの立場・役割がなんとなく見えてくるようになる。先頭を走る奴も出れば、自分の役割を完璧に果たす奴・下級生の愚痴を聞いてくれる奴もいる。みんな自分の役割をなんとなく感じ取り、その1つ1つがチームとして機能するようになる。見えるものや見えないもの、大人数に影響するものや小さいコミュニティを繋いで影響していくもの。その量には違いがあるけど、みんなの役割に、上下や大小、偉い偉くないなんてものはない。でも、それぞれが一生懸命になればなるほど、「自分はこんなにやっているのに」「なんだよあいつ」という感情が芽生え、いつしか悪い部分だけに目がいくようになってしまう。
 
だからそんな時は、仲間の状態を知りに行ってほしい。何をしてくれているのか。何を想い、どう行動しているのか。そして、どんな状態なのか。
ダメなものはダメな組織の中で、仲良しごっこで終わるのは間違っている。でも、辛い時は辛い、できないことはできない。そんな弱くてカッコ悪い想いを共有することで、それぞれの役割をちゃんとみることができるんじゃないかと思う。「あいつは頑張っている」と、なんとなく思うだけではなくて、深い場所でお互いを感じあう方が良い。
そうやって、仲間を信じてリスペクトしてほしい。
 
④1人にならない・させないということ
 
「顔をつくんな、らしくない。普段通りの方が心に響く」
「自分のために頑張れないなら、俺のために頑張ってほしい」
 
目を見て伝えてくれる仲間に救われ、踏ん張ることができた。
今年のチームでは、精神的に難しい状況の部員が増えたのではないかと思う。なんだかんだ真面目で、一生懸命なア式の部員は、自分の中だけでなんとかしようとする。逃げるのはダサいから、頑張ることで乗り切ろうとする。そんな奴らの集まりだから、ダメになっていく自分を情けなく感じる瞬間も多い。
 
だけど、1人になろうとしないでほしい。
建前だけでなく、本音を吐く時間も作ってほしい。
周りを見て、「あいつしんどそう」で終わるのではなく、仲間に言葉をかけてほしい。
 
プレー中もそう。ミスが続いて、空を見上げる仲間がいるなら、背中を叩いて一緒に走ってほしい。仲間がダメな時は、その代わりに倍以上走ってカバーしてほしい。
 
早稲田ア式の部員はみんな強い。努力できるし、それが当たり前な世界にいる。よくわかんない課題を投げられても、自分達で形にする力がある。来年以降、どんなチームになるのか俺にはわからないけど、これが4年目を過ごしてみて感じる素直な想いと後悔です。何かの助けになれば幸いです。
 
残り1ヶ月、みんなとサッカーをできる環境を噛み締めながら、結果を追いかけたい。
そして、最後に、4年みんなで掲げた「みんなで笑って終わる景色」をみて、このチームを去ることが、今から楽しみです。


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ブログの内容は以上になります。
長くなるけど、サッカー人生の終わりとして伝えたい感謝の気持ちがあるので、最後に書きます。
 
FC町田ゼルビアユースのサポーターの方々へ。
 
僕にとって、ゼルビアで過ごした3年間は、本当に宝物です。
人に応援してもらえることの幸せを知り、応援が原動力になることを学びました。
「ゼルビアの誇りを持って戦え」と試合に入場する時に歌っていただいた声や姿を忘れることができず、大学でも大事な試合に入場する時には、それを思い出していました。
4年間、サッカー選手として、あまり結果を残すことができなかった自分に対して、最後まで気にかけてくださったことに本当に感謝しています。僕の原動力でした。
熱くプロを目指したり、部内改革に取り組んだり、異国の地で違う道を歩んだり、エンターテイナーとして大学サッカーで名を轟かせたり。それぞれ頑張るゼルビアの同期の姿があります。これからも応援してくださると幸いです。
 
両親へ。
相当な金と時間を費やしてもらったおかげで、色々なものを感じて、サッカー人生を終えます。最後の4年間は、きっと2人が期待する結果なんかほとんど残せなかった。見にくる試合を作れなくて、申し訳ないと思い続けてきた。ストレスを消化できなくて、家で会話することさえ面倒な時期もあった。申し訳ないと思いつつ、何にも言えなかった。
それでも、おそらく2人が望んできたように、
自分のサッカー人生に誇りを持ち、サッカーをしてきてよかったと心から思うことができています。
とりあえず16年間、お世話になりました。ありがとう。もう少し脛をかじります。
 
最後に、愛犬へ。
お前らはめちゃくちゃ可愛い。

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以上。



須藤友介(すとうゆうすけ)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:FC町田ゼルビアユース


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