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「ありのままの想像力」 4年・奥野立己

大学に入学してからはや4年。もうすぐ卒業というところまで来てしまった。
単位も全て取り終わり、残すは卒論だけ。
自由に使える時間が増えた。
午後の部活が終わって帰宅し、寝る前にアニメを見ていたとき、キャラクターの少年が発したある言葉が自分に強烈な印象を残した。


「汚染された想像力」


(この言葉で検索をしてみればどのアニメか分かります)
この言葉が自分自身の中で違和感とともに残り続けた。
この言葉をきっかけに感じたことを綴っていこうと思う。


この言葉を発した少年は、医者の家系に生まれ、将来も父親と同じ医者になることを望まれており、親はテストで良い成績をとったときには喜んでくれるが、それ以外の時にはひどく悲しむ。その姿を見た少年は、自分は優秀でいなければならない、期待に答えなければならないと、頑張りすぎる子供になっていく。つまり、期待に答えないといけないという強迫観念に囚われた状態になってしまった。


「汚染された想像力」はこの少年が優秀であるという周りの過度な期待と作り上げている偶像を皮肉として発したものであると感じる。


昨年の部員ブログでは自分自身がプロサッカー選手の息子として周りの期待と向き合ってきたことについて書いた。

周囲から期待された自分の姿と本来の姿。
理想の自分と現実の自分の乖離。
体裁と本音。
多くのズレが生じたしがらみの中で日々生きていると実感する。
自分自身の見られ方を気にするし、少しでもよく見られたいと思う承認欲求があるため演じる自分もいる。
それは自分だけではないはず。


4年生になって、自由に使える時間が増えてからこのようなことを考える機会が不本意だが増えた。


世間では「役職が人を作る」とよく言われているものの、その役職の理想像になりきった自分を演じているだけではないかと思うときがある。演じることで次第に役職にあった行動を取るようになり、役職に見合った人間に育つという考えもわかるし、そっちの方が円滑に物事を進めることができることもわかっている。ただ、演じることで自分の本音本心を偽っていないだろうか、自分の気持ちを蔑ろにしていないだろうかとか考えたりもする。
だからこそ、すぎ(主将・杉山耕二)やこうじ(副将・山田晃士)のように心の奥底から湧き出てくるものを体現している同期たちは本当に輝いて見えるしかっこいい。


チームとして求められる4年生像。4年生はこうあるべきだ。という強迫観念に近いものを勝手に想像し、私自身は囚われすぎていたのかもしれない。
こんなことを発信するべきではないのかもしれないが、本音で伝えなければ意味がないと思うので書く。
4年生としての言動。立ち居振る舞い。どの行動を取っても4年生という言葉が付き纏ってきた。
4年生って重いな。
そう感じるときも多々あったし、正直疲れていたときもある。
4年生らしくって何だよと投げやりになりそうな時期もあった。


しかし、「汚染された想像力」というこの言葉を見た時に、普段生活をしている中で、自由であるはずの想像力が、「4年生」や「あるべき姿」という自分自身が過剰に反応し作り上げた偶像によって汚染されてしまい、行動や思考を制限してしまっていることに気づいた。
自由でいたい。そう思っていたはずなのに、いつの間にか無意識に制限された枠組の中でしか行動や言動をできない自分になっていたし、焦りさえ感じていた。無意識のうちに、やらなければいけない、こうあるべきだ、などの観念が自分の想像力を汚染していた。


違和感の正体はこれだった。


もちろん理想像を考えてそこに向かうことや4年生という立場が悪いとは思わない。
置かれた立場の中で自分が何を感じ、どう行動するかは人それぞれある。
ただ、囚われすぎることがあまりよくないという話だ。
今回は4年生という立場やあるべき姿に私自身が囚われすぎていたということであるが、
今後の人生において、どのような立場になったとしても同じような状況に陥る可能性がある。


一度自分の立場や境遇全てを取り払ったありのままの想像力で物事を考えると、視界が開けて見えるし、心が軽くなる気がした。


今更こんなことに気づいたのかよとか、こんなの元々分かってることだろと思う人もいるかもしれないが、何かに夢中になっている人にとっては意外と気づけない。


所属している環境やコミュニティによって自分自身の思考が無意識に制限されることや、偏ってしまうことはよくある。


広い視野を持てと言われる中で、持ったつもりになるのが一番危険である。


最後の大学生活。


ありのままの思考、ありのままの想像力を大切にしたい。


気負いすぎない。


できることをやろう。


最後はみんなで笑って終わろう。



奥野立己(おくのりき)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部


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