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【#Real Voice】 「一度スパイクを脱いで、見えた景色」 3年・平田陸人

2020年度

3/13
前十字靭帯断裂、半月板損傷。
約1年を要する大怪我をした。

サッカー人生において、初の大怪我。
今シーズンは選手として勝負の年だと意気込んでいた矢先だった。

怪我をした瞬間、絶望と同時に焦りに近い感情が芽生え、次第に強い焦燥感に駆られていたのを覚えている。
学年も3年だし、しかも副務だし、自分のことだけではだめだよな。
そんな感情から来るものだったと今は思う。
そう感じた時に、すぐ頭に浮かんだのが主務の拓矢君(4年・羽田拓矢)の姿だった。
自分のことは二の次で恐ろしいほど、選手Firstに徹するマネージャー兼主務。
怪我人の自分が目指す姿としては、わかりやすかった。
選手としての自分は忘れ、チームのことを第一に突き進もう。
それが、今シーズン自分が決意したものだった。

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2021年度

2021シーズンが終わり、約2週間。本当にシーズンが終わったのかと、恐ろしいほど実感がない。

そういえば、この前流行語大賞が発表されていた。
結果は、皆さんご存知の通り大谷選手のご活躍を形容した言葉が選ばれたわけだが、
ふと、自分的流行語大賞を考えてみた。
答えはすぐに出た。

「しんどい」

ひどい時は毎日のように、1日何回言っていたかわからない。
無意識にこの言葉を発してしまう時もあった。
やばいな。
21年間生きてきた中で初めての経験だった。

しんどくなった理由。
チームのために。そう思えなくなっていたから。

自己犠牲の精神こそが美徳であり、
チーム競技であれば、当たり前のことだと思っていた。
今年もそう思って走り続けた。

その結果、自分が何を大切にしているのか。
自分が何をしたいのか。
そんなことさえも分からなくなっていた。

激動の早慶戦期間。
心が壊れていきそうだった。

もう。サッカーはいいや。

この組織に来る時に掲げた関東リーグに出るという目標も達成したし、サッカー人生満足したっしょ。

毎日、悩み続けた。
やめてもいいんだよ。
その言葉を誰かに言われていたら、本当に危なかった。

それでも、グラウンドに足を運び続けた。

理由は明確だった。

毎日グラウンドに行くと、そんな自分を逃してはくれない。圧倒的な熱量があったから。

毎日必死に練習に励む姿勢。
必死に上手くなろうとする姿勢。
自分の状況に納得がいかないながらも、その状況を打破しようとする姿勢。

その熱量を見るたびに、じれったくなって、悔しくて、もう1回ピッチに立ってやろう、関東リーグに出てやろうと奮起させられた。

選手だけではない。
チームを支えてくれる、マネージャー、トレーナー、学生コーチ、
それぞれがそれぞれの方法で、何かに熱量を注いでいた。
そんな姿を見るたびに、発破をかけてもらえた。

早慶戦のときの拓矢君とはるき君(4年・西川玄記)なんて言葉にできないほどすさまじいものがあった。

あぁ自分は力をもらっていたのだと。
早慶戦の後、仕事が落ちつき、冷静に考えてやっと気づいた。

何かを本気で高めあう仲間がいること。
こんなに良い環境は他にないな。
そう思えたとき、自分を成長させてくれるこの組織のために、そんな仲間のために最後までやりきろう。

そう思えた。

あぁ自己犠牲は自然の成り行きなんだな。

自己犠牲の精神は素晴らしい。
その考えは、変わらない。
しかし、自己犠牲が目的になってはいけない。
それが目的になった時点で、
俺だけが頑張っている、俺だけがしんどい。
そんな思考回路に陥る。
チームのために。それが分からないのであれば、ひたすら、自分のために頑張った方がいい。

いずれ、誰かのために。そう思える時が来る。
そう思わせてくれる仲間に出会える。

そんな当たり前のことを、怪我人を通しての1年間、改めて気づくことができた。

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2022年度

来年4年生になるのか。
日々、漠然とした不安に襲われている。

今年、副務になってからチーム運営に関わるようになり、
これまで見えていなかったものが、こんなにもあったのかと衝撃を受けた。
歴代の4年生たち、ここまで背負っていたのかと。
まだ、背負っていたものの氷山の一角しか見えていないのかもしれないが、だとしても驚愕した。
例を出すとすれば、初めてスマホを手に取った時のような感覚。
情報が多過ぎて、手に負えない。
そんな状況だった。

必死にくらいついたこの一年間。
その中で、一番強く感じたこと。
「4年生はチームが苦しくなった時に、誰よりも早く次の一歩を踏み出していた」ということ。
そして、それは歴代の4年生にも共通して言えることだった。

ピンチはチャンス

よく聞く言葉だ。
でも、自分は昔からこの言葉に違和感を覚えていた。
ピンチはピンチだよね。と。

ピンチの時は、その状況から逃げたくなるし、目を背けたくなる。
これまでのア式での3年間は、ピンチの際は、いつだって目を背けてきた。
しかし、自分が目を背けているとき、4年生は誰よりも早くピンチの中に飛び込んでいた。

一歩を踏み出すこの姿勢こそが4年としての"覚悟"なのだろう。
一歩を踏み出すことで、新しい変化を起こすことができる。
しかし、その一歩を踏み出すためには、相当な覚悟と重圧がかかる。

最終的に"正解”にすればいい。
今年の4年生が、言っていた。

選択が間違っていても、
最終的に正解になるように、修正すればいいのか。
その重圧を背負い、一歩を踏みだすことこそが、重要だと感じた。

最終的に、ピンチをチャンスにするために。

来年こそはピンチを真正面から受け入れる。
そして、その一歩を踏み出すために、仲間を、同期を、信じる。

そして、前に突き進む。
アクセル全開で踏み続ける。

その一歩、一歩を噛みしめる。

そして、必ず全員で笑って終わる。




平田陸人(ひらたりくと)
学年:3年
学部:商学部
前所属チーム:早稲田大学本庄高等学院


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