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【#Real Voice】 「何気ない日常に感謝を。」 2年・平野右京

2021シーズンは波乱だ。
そんな波乱のシーズン中ではチームを先導し続ける人、重い責任を背負っている人、怪我で今シーズンを終了を余儀なくされた人、自分の価値を見出せずもがき続ける人、私のバカ事にも付き合ってくれた人、と挙げればキリがないが、今日に至るまで誰しもが苦しみ、もがき続けた日常があっただろう。
 
そんな日常を私も過ごしたと心の底から今感じる。
正直、これまでの14年の私のサッカー人生で1番濃く感じたかもしれない。また、今年のア式部員でも1番濃すぎたかもしれない。
 
その記憶が鮮明にある。
 
2月中旬、新チームが始動した。
最初のカテゴリー分けではAに属することになり、私自身でも良いスタートを切れた。しかし、Aのゲバ (紅白戦)では右サイドハーフでの4番手。言うまでもない。3月に再度行われたカテゴリーの人数縮小によりBに下がった。
 
「正直、当然のこと。」
「たかが滝川高校。関東には出られない。」
 
こう思う自分の気持ちは当然だった。昨年は下のカテゴリーで燻っていた自分が再度蘇ったような気がした。
 
諦めきれない私はBでも右サイドハーフをした。自分の中では「もう一度サイドハーフでAに上り詰め、関東に出たい。」そう思っていた。けどそう簡単にうまくいくものでもなかった。大学サッカーの厳しさを改めて痛感した。
自分がそんな状況から抜け出せた、一皮剥けるきっかけになったのは、コーチのある提案であった。
 
「サイドバックにコンバートしよう。そして、夏には関東リーグに出場しよう。」

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今思うと、この提案がなければ、冒頭の波乱という言葉はでなかったし、ましてや、今の私は私ではないとつくづく思う。また、コーチの提案で人生観が変わった選手が結構いる。私もその結構変わった選手の1人であるが、1番波乱だったとも感じる。
コンバートとは言っても、単なる普通のサイドバックではない。前例のないサイドバック、Only One。これでしかない。自分にしかない能力、強み、これを最大限活かせる場所だった。
 
そんな中で迎えた3月末、Bチーム初公式戦エリース東京(東京都リーグ1位)との対戦。先発出場するも、1-2での逆転負け。続く、東京23FC江戸川戦では終了間近に失点し、1-1で引き分け。この2戦の悔しさは今でも忘れない。雨が降る夜の東伏見グラウンドでは、未勝利に責任を負う4年生の背中、部室で涙を流す後輩、終了の笛で喜べず観戦していた部員がいた。とてつもなく身体が重たく、絶望感に満ち溢れた気持ちだった。
 
多分、この気持ちが残り、忘れられなかったからこそ、次の試合で勝利できた時はとてつもなく嬉しく感じた。そして、横断幕前で笑う喜びを知った。

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その後の5連勝の時は、フル出場。FCメンバーの中でもそういない。しかし、記憶に残るものの記録に残らない。0ゴール0アシスト。その中でも自分を起用してくれた方達には感謝でしかない。本当にありがとうございます。
 
この後、Iリーグを1試合のみ経て、関東登録。翌週には関東にスタメン出場となる。
 
関東リーグ(vs国士舘戦)前日の夜は緊張して、ご飯中よく喋る。夜はすぐ寝付けず後輩に電話。朝は茶碗を手から滑らせ、ご飯をこぼす。そんな中で迎えた当日。スタジアムに向かう前には数多くのメール。スタンドからは大きな歓声。ベンチでうちわを仰ぎながらアドバイスをしてくれる同期。
 
私を支えてくれる“存在”がいた。
 
1人ではない。必然とそう思えた。
あのピッチではどのように存在していたのか。どう写っていたのか。私自身そう確かではない。しかし、人知れずまたそんな存在を背負い試合をしていたことは確かである。私はこの試合を通して改めて、大きな存在を背負っていることを自覚し、いつも見えない存在に毎日支えられていることを身に染みて実感した。
 
しかし、歴史でも最盛期を迎えると崩壊があるのと同様に、私にも同じことが起きた。
 
関東デビューした次の週の水曜日、ポゼッションゲームで気が抜けていた。練習終了の際の集合では「チームのスキ」とまで監督から厳しい言葉を貰った。間違っていない。何もできず、ただスキに染まっていく自分がいた。
その翌週のリーグ戦(vs桐蔭横浜)では3-3で迎えた残り6分で最後の交代カードが自分。私が出場したその6分内で1失点。3-4で早稲田の負け。チームを変えることができなかった。自分がスキに思えた。存在価値が分からなくなった。認識が狂いだす。見失う私と脳裏を過ぎるワード。自分が自分でいられなくなる感覚が身に染みて理解できた。
 
だって、チームのスキだから。
 
今でも時々この言葉が脳裏を過る。チームのスキになっていないのか。自分の存在価値はどこへ行ったのか。チームに良い影響をもたらすことができているのか。自分は今何をしているのか、情けない。考えれば山ほどあった。でも違う。それではない。自分自身が単に安定に進もうとした、無難になった。ただそれだけのこと。ただの現実逃避であり、目を背けているだけだった。だから、この先は安定や無難に逃げてはいけない。今後もそうである。
私は波乱という渦に飛び込まなければ、今後のサッカー人生においても間違いなく進歩はない。ましてや誰の記憶にも残らない。安定か波乱かの選択肢を間違えてはならない。
 
 今年の私には何事にも勝つ故、戦う故の原動力がある。
だから、走れる、もがける、喜べる、がんばれる。これに尽きる。
今私の原動力は4年だ。
私以外(他学年)からすれば、ただの4年であるかもしれないが、私からすればそうは思わない。
私のばかごとに全力で協力してくれる人、困っている時に話を聞いて寄り添ってくれた人、試合中に私を鼓舞してくれる人、緊張している私の背中を叩いてくれる人、楽しく帰り道帰ってくれる人、1日中一緒にいた人、情熱を注ぐ人。。挙げればキリがないが、私はそんな先輩たちの笑っている姿が見たい。ただそれだけで、自信を持ってプレーすることができている。
Iリーグで全国優勝を志して、数少ないIリーグメンバーで戦ったあの試合も。
久しぶりの関東リーグスタメンでプロ内定である人とのマッチアップであったあの試合も。
どんな試合でも私の力を生み出す原動力になっている。
 
最後にはなるが、ここまでの何気ない日常を思い返すとあっという間だった。私がピッチに立てているそんな日常は私1人では何も生み出すことはできない。私を取り囲んでくれる仲間、先輩、後輩、スタッフの方々のおかげである。
そんな何気ない日常に私は心から感謝したい。
 
2021シーズン最後は、横断幕前で4年生と笑いたい。

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平野右京(ひらのうきょう)
学年:2年
学部:人間科学部
前所属チーム:滝川高校


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