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「こうしているうちにも多くの犠牲が伴っている」 4年・阿部隼人

ア式蹴球部員としての活動日数が徐々に減っていく。

ア式に入部した時は、4年間は長いものだと思っていたが、振り返るとあっという間だった。

1年生の時には2部リーグ優勝・1部リーグ昇格を
2年生の時には1部リーグ優勝を
3年生の時には1部リーグ優勝した翌年は必ず2部リーグに降格するというジンクスを打ち破り、1部リーグの残留を

経験した。

そして、4年生となった。
プレシーズンには御殿場合宿を行い、天皇杯予選を迎えようとしていた。
しかし、コロナウイルス感染拡大に伴い、主要都市に緊急事態宣言が発令され、活動自粛を余儀なくされた。誰も想像をしていない大きなイレギュラーだ。

活動自粛中にはオンライン上でのミーティングやディスカッション。SNSで発信を行い、サッカーができない中でもチームを構築していった。

緊急事態宣言が解除され、活動再開が認められ、迎えた全体練習。約2カ月直接会う機会がなかった部員はどこか懐かしく、しかし、これまでよりも距離が縮まっている気がした。

7月には念願だった関東大学サッカーリーグが開幕。多くの人の尽力によってあっという間に21試合を終え、最終節を迎えるのみとなっている。


ここまでの経験の過程には、個人としてもチームとしても様々な出来事があり、その出来事によって感情が変化していった。

試合に出場することができなくて悔しい思いをしたこと

思うようなプレーできなかったこと

得点を決め、みんなと喜んだこと

試合に負け、みんなと悔しがったこと

学年内で課題に対して向き合ったこと   など


今思うと、大学生活の中で生まれた悩みはほぼほぼ部活でのことである。
正直贅沢な悩みだと思う。
そして、こうやって好きなことをしながら悩めることが当たり前ではないことを、今年身をもって感じた。


こうやって4年間を振り返っていた11月上旬。
Twitterを見ていると慶應義塾大学ソッカー部の部員ブログが流れてきた。
私はその部員ブログを見て感銘を受けた。

それは、慶應義塾大学ソッカー部の高木政哉さんの部員ブログに書いてある後輩に向けたメッセージである。

「君の輝かしい努力と成果の裏で、誰かの夢が途絶えたかも知れない。
 君がスタメンだったから、サッカーをやめた人がいるかも知れない。
 君が合格したから、落ちてしまった人がいるかも知れない。
 慶應生、ソッカー部員なら、そのことを忘れないでください。
 落ち込んだ時も、うまくいく時も、その誰かのために頑張って欲しい。
 君達は誰かの夢であり、憧れです。」


このメッセージは高木さんが後輩に送ったものだが、私の心に突き刺さった。
私自身の過去を思い返すと、ここまでこのような思考を持ったことがなかった。
結局は自分の努力、結局は自分の成果だと考えることが多い。
小学生の頃から「上手い、すごい」と言われてきた。長い年月、高いレベルでサッカーをしてきた。そして現在は、早稲田大学ア式蹴球部という伝統と歴史のある組織のスタメンで試合に出場もしている。

ここまでたどりつけたのはもちろん多くの人の支えがあってのことだと認識しているが、最後は自分の力だ。自分が人よりも勝っているからだ。
と、自分より後ろ側にいる人たちの想いを汲み取ることはなかった。
ライバルには負けたくないと思っていたし、俺が一番活躍するんだってやってきたから
こういった思考になるのは当然のことでもあるような気がする。

でも、自分がこういった道を進んできたことによって誰かが犠牲になっているという事実を知り、その誰かの想いを背負っているほうが責任感が芽生え、成長する。そして、たくましい人間になれると思う。

大学4年、これまで一緒にサッカーをしてきた仲間はサッカーをやめたり、活躍できずに悔しい想いをしている。
だから、この気づきが生まれたのかも知れない。

先日行われた第71回早慶サッカー定期戦
結果は1-1と引き分けだった。

でも、私は多くの人の想いを背負ってみんなが憧れるあの舞台に立った。
試合前は泣きそうになるほど想いを感じていた。
試合には勝つことはできず悔しい想いはあるけれど、ひとつ成長したと実感している。

何気なく読んだ部員ブログは私に気づきを与え、成長を実感させてくれた。


今年のチームのミッションである「誰かの明日への活力になる」

これはその誰かを想像し、どのようなことで活力を与えたいのか
そこまで考えなくては人に活力を与えることはできないと思う
ただ単に活力を与えるためにそれっぽいことをしていたって人に活力なんか与えられない
もしかしたら活力を失う原因を作るかもしれない

ア式での活動は残り少し。

もう一度、明日への活力になるとはどういうことなのか、それを問いながら活動し、活動を通じての発見や想いをプレーで表現していきたい。


後輩たちへ

多くの人が公式戦に絡めなかったり、満足のいく結果が得られなくて悔しい想いをしていると思う。でも、こうして今悔しい想いができていることは特別であり恵まれているということを認識しなければならない。
文句を言ってないで、足を止めてないで、努力しよう。

きっとやってよかったと思える時が来るから。



阿部隼人(あべはやと)
学年:4年
学部:社会科学部
前所属チーム:横浜F・マリノスユース


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