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【#Real Voice】 「想い」 3年・宍戸凜

朝、目を覚ますと、ふと思う事がある。


「私はなぜ、サッカーを始めたのか。なぜ、今もこうしてピッチに立っているのか。」

そして―

「何を成し遂げたいのか。」

これは私が、サッカーという競技を通じて何を目指すのか。
どう在りたいのか。
そんなvisionのようなものを書いた話である。

言い換えれば、サッカー人生最後の決意表明のようなものだ。

私は小学校低学年の頃、祖母が熱狂的な横浜F・マリノスのファンで、Jリーグの試合に連れて行ってもらったことをきっかけにサッカーを始めた。
選手の一挙手一投足に湧くサポーター、そしてスタジアムの中心で活躍する選手に心を奪われた。ものすごく輝いて見えた。ただそれだけだったが、当時の私には十分すぎる理由だった。


男子であれば、小さい頃に一度は仮面ライダーやウルトラマンといったヒーローに憧れたことがあるのではないか?

私にとっては、サッカー選手がそのヒーロー的存在だったという訳だ。


ドリブルで相手を抜いた時の爽快感。
ゴールを決めた時のみんなからの称賛の声。
何もかもが本当に楽しかった。

小学5年生の時、私のサッカー人生において、2番目に大きな出来事が起きた。

「ゴールキーパーへの転向」

私は小学4年生の時、友人に誘われて地元のサッカークラブに入部した。初めて本気でサッカーを行う環境に身を置いたが、周囲とのあまりに大きすぎる差に落胆したのを今でも覚えている。
ボールを持てば速攻で奪われ、リフティングなんて10回もできない。何もかもが通用しなかった。
それでも、負けず嫌いだった私は、ひたすら練習し試合に出場できるまでに成長した。


そんな時、コーチから半ば強制的にキーパーへ転向させられたのだ。

キーパーなんて―

地味でボールも来ないし、圧倒的脇役。
ましてや、相手の放ったシュートに自ら体をぶつけに行くなんて痛いし、馬鹿馬鹿しい。

そう思っていた。


しかし、実際は違った。

たった1回のミスでチームが負ける。そんな責任を背負いながら、ピッチの最後尾から選手を鼓舞し、時に厳しい指摘をする。そうやってチームをまとめ上げる。

勝利に不可欠な存在であった。

しかも、どれだけ努力をしてもピッチには1人しか立てない。
特別なポジションだ。

何より、私の頑張りが、泥臭いプレーが勝敗に大きく影響し、仲間のためになる。
私が脇役に徹するだけで仲間が輝く。それが1番嬉しいことだった。
もちろん主役にはなりたかったが(笑)。

今、冷静に振り返ってみれば、私がサッカーを続ける理由は、この時、既に見つかっていたのかもしれない。




中学3年生の時、サッカー人生で最大の出来事が起きた。

「不合格です。」

9年間憧れ続けた、「桐光学園高等学校サッカー部」への入部試験に落ちたのだ。
頭が真っ白になった。

※実際はその後、奇跡的に入部が認められ、桐光学園でサッカーをすることができたのだが、そのことを話すと長くなるので、今回は触れないことにする。


中学サッカー部ではキャプテンを務め、地域の選抜にも選ばれていた。小学校から桐光学園のためにサッカーをしてきた。絶対に大丈夫。心のどこかにそんな気持ちすらあったのかもしれない。


桐光学園でサッカーができないなら、サッカーをする意味がない。
目標が無くなった私は、後にも先にも、この時たった1度だけサッカーを辞めようと考えた。

そんな時、私の支えになったのは、家族、友人、チームメイト等、周囲の方々からの温かい言葉だった。

「また、応援したい」「お前ならやれる」「頑張れ」
そんな言葉をたくさん頂いた。

何より嬉しかったのは、
「私の頑張りを見ていると、自分ももっと頑張らないといけない」
「いつまでも突っ走っていて欲しい」
といった友人たちからの言葉だった。

私は知らないうちに、たくさんの人に影響を与えていたのだ。
そして、たくさん支えてもらっていたのだ。
別に何かをしてあげたわけでも、お願いしたわけでもない。
私は、とてつもなく恵まれていたのだと思う。

だからこそ、今度はそんな人たちのためにサッカーがしたい。そう思った。

誰かに良い影響を与えたい。自分の頑張りが少しでも誰かのためになるのなら―

これが、私がサッカーを続ける原動力だ。



きっと、私のサッカー人生は長くてもあと1年―
それ以降、すべてを捧げ、本気でサッカーをすることはないだろう。来年の今頃には、サッカーを引退して、その数か月後には社会人として、どこかで仕事をしている。


その前に、どうしても成し遂げたいこと―

それは、感謝を形にするということ。

14年間、どんな時も味方でいてくれた家族。
応援や励ましの声をかけ続けてくれた友人たち。
時にぶつかり、時に力を合わせて戦ってきた仲間たち。


そんな人たちに、活力を、ポジティブな影響を与えられる人になりたい。
仲間のためにゴールを守る。キーパーの練習を考える。広報として魅力を発信する。
そうやってほんの少しだけでいいからチームに貢献したい。
そして、1度でもいいから私が試合に出場し、勝利、そして”日本一”という形で恩返しがしたい。

みんなと一緒に最高の景色を見る。

それが、最後の目標だ。




宍戸凛(ししどりん)
学年:3年
学部:商学部
前所属チーム:桐光学園高校


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