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【100周年特別OB対談】岡田武史×兵藤慎剛 〜ア式の未来、大学サッカーのこれから〜〈第2回〉


2024年、ア式蹴球部は創部100周年を迎える。

100周年をただの1年で終わらせたくない。そんな想いで我々は100周年プロジェクトを立ち上げた。

ア式だからこそ出来ること、伝えられる事は何か。そんな事を考えながら実現したのが本企画。弊部のOBである岡田武史氏と、同じく弊部OBであり現在ア式蹴球部の監督を務める兵藤慎剛氏による100周年特別OB対談である。

大学4年間をア式で過ごし、卒業後もサッカー界で、そしてサッカーのみならず広く社会で活躍し続ける両氏の現在や過去、人生観について紐解き、来たる100周年、そしてこれからのア式蹴球部、大学サッカーが歩むべき姿について共に考えていく。

第2回となる今回は経営者や監督として高いリーダーシップを発揮してきたお2人から、人との信頼関係を築くコツや教育、指導において大切にしていることについて深掘りしていく。

(本対談は2023年8月16日に実施されました。)



第1回の記事はこちらから▼

100周年プロジェクトの記事はこちらから▼



ーー誰かに何かを教えるっていう所であったり、年代や国籍を超えていろんなところから集まる人々と共に仕事をしたりする中で、そういう人たちと信頼を掴むために重要なことや、何か心がけていることってありますか?


岡田さん:

今度のFC今治高等学校 里山校は別だけど、日本の教育ってみんな人は同じだってとこからスタートするんだよね。でも、顔も違うし、身長も違うし、性格も価値観もみんな違うんだよ。まずはその違いを認めなきゃいけないと思ってる。日本は小学校1年生でも全員きちっと席に座って、素晴らしいクラスですって。それはおかしいと思う。 1年生だったらきっと座ってたくなくなるやつもいるはずなんだよ。大人の価値観だけで、1つの価値観にみんなを押し込むんじゃなくて、みんな違うんだということ。そこからスタートする必要がある、サッカーのチームでも組織でもなんでも。ただし、共通のパーパスとか目標がないと、やっぱりそれはお互いを認め合えないわけ。

例えばサッカーのチームだったら、50人いたとして、みんなが仲良しなんてありえない、絶対。組織でもそう、会社でもそう。全員が仲良しなんて絶対ないんだよ。でも、それはいいんだよ。こいつどうも好かんけど、 こいつのここは俺たちの共通の目標のために必要だよねとか。サッカーで言えば、こいつどうも好かんけど、こいつにパスしたら絶対点決めてくれるとかね。そうやって違いを認めて、1つの目標に向かって力を合わせていくっていうのが 1番大事で、その違いを認めるってこと。大体、勝つチームを分析すると一体感があるって出んだけど、サッカーも野球も日本代表チームを見てると、お互いの違いを認め合って、 結果が出だしたら、だんだん一体になってくるんだよ。一体感から作ろうとしたら大体失敗する。そんなもんなんだよね。

だから、そういう意味では、信頼を買う、違いを認めることとか、存在を認めること。例えば監督だったら、いろんなやつがいるわけで、そいつの存在を認めてやる。要は、1年間お前を1回も使わないかもしんないけど、俺はお前を見てるよとか、 ちゃんと必要としてるよってことを伝えることなんだね。それは「お、元気か?」ちょっとした挨拶からでも。感情の共有っていうんだけど、そういう場面をたくさん作っていく。

例えば、俺がまだ会社入ってきた頃に、うちの社長は、すごい頭いいんだけど、いつもブスっとして「おはようございます...」って入って来てた。
お前な、そんなんで入ってきたらダメよと。社長は「おはよう!」つって入ってこいと。「おお、どうだ今日。」って、なんかそうやって一言でもちょっと声をかけてやる。目を合わせて「おうっ」て言うだけでもいいんだよ。そういう存在を認めてやるような感情の共有をすること。

これがやっぱり一番大事なことなんだよ。それと共に主体性を引き出してやること。うちのFC今治高等学校 里山校の先生にもお願いしてるのは、なんかあった時に、「どうしたの?」と聞くこと。例えば、喧嘩をした時、殴り合いの喧嘩をした時に、裁判官にならないでくださいと。「どうした。(事情を聞いて)じゃあお前悪いな。」いや、そうじゃない。

2人に話し合わさせなきゃいけない。でも、まず一番大事なのは目的を本人たちに確認させること。まず、「明日から2人とも毎日殴り合いしたい?」と。そしたら大概は、「いや、僕たち明日から毎日するのは嫌だ」と言う。でもこいつ頭にくる。じゃあどうしたらいい?毎日喧嘩するのが嫌だったらどうしたらいい?と。そうやって自分たちで考えさせていかなきゃいけない。何かこうしろって言うんじゃなくて、主体的に自分たちで動くようにさせなきゃいけない。

だから、 先生にもよく今言ってるのは「どうしたの?」って聞いてくださいと。それで、「こう、こう、こうです」って生徒が言った時に、答えを言わないでください。「それで、君はどうしたいの?」と聞いてくださいと。それを言った時、いや、こうで、いや、こうで、と上手く出てこないからその時は選択肢を3つぐらい与えてくださいと。で、「こうしたい」と言ったら、「先生になんか手伝えることある?」と。じゃあこうしろって絶対言わない。

これがある意味全てだと思ってる。だから、お互いを認め合って、1つの共通の目標や目的に向かっていくこと。それが1番大事なことだと思うね。

インタビュー中の様子


ーーありがとうございます。お互いを認める時のコミュニケーションが、目を合わせて「おうっ」って言うだけでもいい。すごいですね。


岡田さん:

それがスタートです。
それともう一つ我々にできることは、非日常を作ることだね。俺は、Jリーグのチームでも代表でも、なにかとキャンプ連れて行ったりとかするわけだ。そうすると、 焚き火の火見ながら俺子供の頃さ、こうでさあ、こいつこんなとこあったんだとかね。例えば、営業で押しの弱いやつがうちにいたんだよ。で、なんでお前最後もうちょっと押せないんだって言ってて、ある時一緒にお酒飲んでたら、いや、僕こっち来る前には東北にいて、3.11で自分の仲間がみんな流されたんですと。

あ、こいつその経験してるから最後人に優しくなるんだな、これは素晴らしいことだなって。そうやって違う側面が見られる環境を与えるわけ。もちろんその1番原点はそうやって感情の共有をすることだけど、 それ以上により知り合えるようなシチュエーションを作っていくってことよね。



ーーありがとうございます。

ーー兵藤さん。岡田さんから主体性という話も出ましたが、外池前監督の頃からア式では学生主体を大事にしていると思います。ただ、学生が主体性を持って活動すると言いながらも、いろいろ悩みながらやってるところもあると思うのですが、主体性を持たせるために、意識されていることはありますか?



兵藤さん:

はい。外池前監督が主体性、学生主体っていうところで、主体性を求めて学生が主体的に動くっていう組織にしてくれて。僕自身は 素晴らしい取り組みだなっていう思いを持って、昨年10月からコーチとして、少し関わらせてもらっていた中で、学生たちの中に少しその「主体性」っていう言葉に逃げてるっていうところが、垣間見られて。

じゃあ本当の意味での主体性ってなんだろうっていうところで、学生が気づけていない部分がたくさんありました。素晴らしい目標だったり、ア式ってどうあるべきだっていう組織の価値を高めるための言葉はすごく一流の言葉を並べてるのに対し、「じゃあ本当にそれに対する取り組み方ってどうなの」って。そこが昨年の結果を自分たちで生み出してしまったっていうところに繋がったのかなと思います。

その目標とかビジョンとかは、今年も変えたくないっていう学生がすごく多くて、僕はじゃあそこに対して何ができるのかなっていうときに、 同じアプローチの仕方じゃ当然ダメだよねっていうところで、変化を求めたんですけど、何かを変えるっていうことに対して、 やっぱり学生たちは自分たちで考えてきたっていうプライドがあったので、何も変えたくないっていう状況からスタートして。

じゃあ何も変えないんだったら、結果も変わんないんじゃないかっていうところで、 最初の2か月様子を見てた部分はあったんですけど、やっぱりこのままじゃ二の舞になるなと感じて、僕の考えを少し受け入れてくれと。そこから少しずつ学生が受け入れてくれる幅が増えてきたのかなと。


自分たちで考えてプライドを持つことはすごく素晴らしいことだなと思いながらも、やっぱり変化をあまりにも学生が恐れすぎてて、 何かにチャレンジしない、失敗することが悪いことだっていうのをすごく思ってたので。

僕は失敗することが悪いんじゃなくて、チャレンジしないことの方がリスクが高いと思ってるので、そういう部分では、学生にどのようにチャレンジさせるのかっていうところと、ビジョンは同じでも、中身をどうやって変えていくのかっていう作業を、手を替え品を替え、なんとか選択肢を増やしていけたらなと思っています。

先ほど岡田さんがおっしゃられた、「非日常」っていうところでは、今の4年生がコロナ禍で多分、合宿ですらほとんど経験してないような学年になってて。やっぱり合宿や遠征って、みんなで同じ時間を共有したり、ある意味「非日常」の状態でチームとして活動するって中で、一体感が出てくるような何かが生まれてきたりだとか、きついことを乗り越えて、チームとして成長するっていうところが、 ちょっとあまりにもなさすぎたのかなっていうところを感じてました。

今年コロナが緩和されて、少しそういう活動ができるって中で、なんとか合宿できないかって模索して本当は今週末合宿に行く予定だったんですけれど、この前の関東リーグが試合中断で延期になってしまって結局合宿に行けなくなってしまいました(笑)

なので、成長のためには何かまた新しいところを入れていかないといけないなっていうところで、なんとか非日常を体験してもらうことで、 「生きる」ってことに接続できるような何かができたらなとは今考えています。成長できる環境のために何ができるかなっていうのを日々考えながら、今動いてるという感じです。


ーーありがとうございます。 


100周年特別OB対談
岡田武史×兵藤慎剛  
【第3回】へ続く
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