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「こころで見る」 3年・高田侑真

「クイズの時間だ」 教授はそう言って、大きな壺を取り出し教壇の上に置いた。その壺に、彼は一つ一つ岩を詰めた。壺がいっぱいになるまで岩を詰めて、彼は学生に聞いた。

「この壺は満杯か?」 学生は「はい」と答えた。
「本当に?」 そう言いながら教授は教壇の下からバケツいっぱいの砂利を取り出し、その壺の中に流し込み、壺を揺すりながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。
そしてもう一度聞いた。
「この壺は満杯か?」 学生は答えられない。
1人の生徒が「多分違うだろう」と答えた。教授は「そうだ」と言い、今度は教壇の陰から砂の入ったバケツを取り出した。それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺はこれでいっぱいになったか?」
学生は声を揃えて、「いや」と答えた。教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと注いだ。彼は学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何が言いたいのか分かるだろうか。」

最近読んだ本にこんなことが書かれていた。

私はこう思った。
大きな岩でいっぱいに詰まった壺でも、小さな岩があればさらに詰め込むことができるから、どんなにスケジュールが忙しい時でも、最大限の努力をすれば、さらに予定を入れることができるってことか。

しかし本にはまだ続きがある。

教授はこの寓話が暗示していることを話す。
「大きな岩を先に入れない限り、それが入る余地はその後二度とない、ということなんだ。
ここでいう"大きな岩"とは君たちにとって一番大事なものだ。それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと君たちはそれを永遠に失うことになる」

なるほど、私にとっての"大きな岩"ってなんだろう。
家族、友人、自分の夢、サッカー、仕事、趣味ーー。
壺を自分の人生の持ち時間と考えると、誰もが限られた時間しか持っていない。
その壺の中に何を入れたいのか、二度と入れられなくなってしまってはいけないものはなんなのか。

大事なことに時間を使い、大事ではないことに時間を使わない…
人生において何が大事で、何が大事ではないかなどわからない。

ましてや、その答えを導き出すなんて簡単なことではない。
私には答えが出なかった。

しばらく経ったある日、気晴らしに友人に借りた「星の王子さま」という本の中に、こんなエピソードがあった。

王子さまの星に咲いていたたった一輪のバラ。
王子さまはその一輪のバラを大切に育てていた。
そのバラを、この世にバラが一輪しかないと思っていた王子さまは地球に咲く無数のバラを見てショックを受けた。
そんな王子さまにキツネが言った一言だ。

「ものごとはね、心でみなくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」

王子さまは出会ったキツネとの会話を通して大切なことに気が付いた。それは王子さまのバラと他のバラには「バラのために使った時間」という決定的な違いがあるのだ。

私にとってのバラってなんだろう。
この話を読んだ時、"大きな岩"の話を読んだ時と同じような感覚を得た。

私にとって本当に大事なことはなんだろう、限られた時間の中で永遠に失いたくないものってなんだろう、心に問いかけた。

"サッカーをしてきた日々" だ。

自分のミスで負けた日、試合で勝って嬉しかった日、大事な試合で負けて悔しくて寝れなかった日、どんなに忙しくても必ず応援しにきてくれるお父さんお母さんのために必ず上手くなると決めた日。そんな日々は全てサッカーが与えてくれた。

いよいよ今年、大学最後の1年を迎える。

もしかしたら、サッカーを夢中でできる日々も、もうあと1年しかないかもしれない。

私の中でのサッカーを、ただの思い出だけにはしたくない。
人生をサッカーに費やしてきた、サッカーをやってて本当に良かった。本気でそう思いたい。

"大きな岩"を自分の壺に入れる、最後のチャンスかもしれない。

これを逃すと、一生後悔すると思う。
今日という日は二度と来ない。そんな日々の中で1日1日を全力で生きたいし、自分に負けたくない。

この大学生活最後の1年の過ごし方が、これからの自分の人生を創っていくだろう。

自分にとって一番大切なことは何か。
その答えが出た時に、人は大きく、逞しくなると思う。



高田侑真(たかだゆうま)
学年:3年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:東山高校


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