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【#Real Voice】 「応援されてきた人」 4年・大西翔也

ア式での4年間、そしてこれまでのサッカー生活を思い返してみると、非常に濃密で充実した時間を過ごしてきたなと思います。正直、苦しいことやキツいことは数多くありました。つらつらと言葉を並べれば、これまで経験してきた苦悩をそれなりに伝えることはできるでしょう。ただ、自分は改めてこの場で感謝を綴りたいと思います。

苦悩を書くことの方が、もしかしたら共感を得られるのかもしれません。表に出しにくい素直な気持ちを吐露することの方が文章としては引き込まれるのかもしれません。自分も苦悩を知って欲しい、共感して欲しいというような思いもないわけではありません。

ただ、それと同時に感じることは、苦悩を抱えているのは自分だけではないということです。自分だけではなく、ア式の他の部員だけでもなく、他の大学の部員もあらゆる苦悩を経験してきていると思います。

組織運営のことで頭を悩ませ、険しい表情をしている先輩の顔をたくさん見てきました。苦しんでいる同期や、悩みを抱え込んでいる同期の顔をたくさん見てきました。環境の変化に適応する難しさや苦悩に立ち向かっている後輩をたくさん見てきました。自分だけではない。皆それなりに苦しんでいる。それが普通だと思います。目指している姿があるからこそ悩みは付き纏うし、成長意欲があるからこそそれに伴う痛みがあるだけです。

だからこの場では自分の苦悩に共感してもらうのではなく、それを乗り越えて、改めてこれまでの感謝をここで言葉にしたいと思います。









自分は応援されてきた人でした。

自分には常にサッカーがあり、応援してくれる人がいました。まるで主人公のように、何不自由なく存分にサッカーに打ち込めるだけの環境がありました。家族や友人はいつも気にかけてくれ、声をかけてくれました。いつも手厚いサポートをしてくれました。

「サッカー頑張ってね」
「応援しているよ」

何回かけてもらった言葉でしょうか。サッカーをしているというだけで、サッカーを頑張っているというだけで、自分はいつも応援されてきました。何気ない一言が、さりげないメッセージが、力になっていました。それが自分の原動力でした。

サッカーをしていれば常に競争があり、チーム内だけにとどまらず、他のチームの選手とも凌ぎを削ることもあります。年代を重ねるにつれて次第に実力者だけが残り、夢や目標を諦める人をたくさん見てきました。

これまで自分は、たくさんの人に勝ち、たくさんの人に負けてきました。ただ、こうして大学までサッカーを続けることができたのは、紛れもなく応援してくれた人や支えてくれた人たちの存在があったからです。うまくいかない苦しい場面も、逃げ出したくなるような辛い場面も、その人たちの顔を思い浮かべて、乗り越えてきました。原動力であるその人たちのために頑張ることが、自分にとってのやりがいであり、喜びでありました。

自分にとって嬉しい瞬間は、セレクションや試験に合格した瞬間よりも、その知らせを知って喜ぶ周りの人たちの表情を見た瞬間です。自分にとって嬉しい瞬間は、自分がゴールを決めた瞬間よりも、自分のゴールで喜ぶ周りの人たちの表情を見た瞬間です。

応援してくれる人が喜んでくれる。支えてくれる人が笑ってくれる。その瞬間をいつも求めてきました。


これまでサッカーを続けてきた中で「何のために頑張っているのか」と立ち止まり考えることが度々ありました。特に大学に進学してからは頻繁にその問いに悩まされていました。何のためにこんなに苦しんでいるんだろう、何のためにこんなに葛藤しているんだろう、何のためにサッカーを頑張っているんだろう。

その度に辿り着くのは、応援してくれている人の期待に応えたい、支えてくれている人に感謝を伝えたいという想いでした。

自分の原動力である人たちに、サッカーという自分の強みを活かして元気を届ける。懸命に励んでいる姿を届ける。自分にはそれができる。自分が頑張ることで、誰かの希望になれるかもしれない。自分が活躍することで、誰かの刺激になるかもしれない。自分の姿に触発されて頑張っている友人やサッカー仲間もたくさんいました。

自分には頑張る理由や頑張る意味がありました。だから自分は頑張っていました。


周りを見渡せば猛烈な劣等感を感じることは多々あって、自分なんかが、自分なんて、と自分を卑下することはいくらでもありました。それでも、自分を応援してくれている人や支えてくれている人、凄いねと言ってくれる人、誇りに思ってくれている人、気にかけてくれている人がいることもまた事実でした。

上には上がいる、自分なんて大したことないと思いながらも、それでもこんな自分を信じてくれている人のために頑張らないといけない、努力しないといけないと自分に言い聞かせて、その都度乗り越えてきました。地味でタフなトレーニングも、毎日のコンディション管理も、サッカー以外のことも、その人たちのことを思えば踏ん張ることができました。

自分が与える影響の幅が決して広くはなくても、何かを届けたい与えたいと思える人たちがいるというだけで、そこに喜びと感謝を感じて、毎日を頑張るのでした。


こうして応援されてきた自分は、学生生活の大半をサッカーに注いできました。サッカーである程度のところまで登りつめるということは、それと同時に多くのものを失っているということでもあると思います。サッカーをしてきたことであらゆる犠牲や我慢も経験してきました。

「何かを得るためには何かを捨てる必要がある」

自分はサッカーを選んだことで、何かを選ぶことができませんでした。ただ、サッカーを選んだことで、犠牲にしてきたものや我慢してきたものと引き換えに、多くの人に応援されたという経験や、多くの人に支えられたという経験を得ることができました。サッカー人生を通じて得たものが、他のものを捨ててまで手に入れたかったものです。

もしサッカーをしていなかったら、サッカーに打ち込んでいなかったら、ここまで応援されることもなく、支えられることもなく、自分を律し続け、頑張り続けることはなかったかもしれません。応援されることも、支えられることも、決して当たり前のことではありません。サッカーが自分に頑張る理由を、頑張る意味を与えてくれました。だからこそ、自分はサッカーを選んで良かったと強く思います。


そして引退が近づいている中で、自分が今後大事にしていきたいと思っていることがあります。それは「応援され続ける人である」ということです。

これまで自分は、紛れもなく応援されてきた人でした。嬉しいことにサッカーを長く続けることができて、サッカー仲間はもちろん学校の友人を含め多くの人たちと出会う中で、多くの人たちに応援していただきました。時には、顔も名前も知らない見ず知らずの人でさえも、自分が所属しているチームを応援してくれていました。何かを頑張っている人は輝いて見えるように、誰かにとっては自分も輝いた存在だったのかもしれません。

これらの記憶や経験が、今後生きる上での自分の原動力です。最大の武器です。応援されてきた自分が今後あるべき姿は、今後も応援され続ける姿であり続けるということだと思っています。

大事なことは、どこで何をしているかではなく、そこでどうあるのか、どういう姿であるのかです。応援されるに相応しい姿であり続ける。それがこれまで多くの人たちに応援されてきたことに対する恩返しです。昔は頑張っていた、そして今も頑張っている。それが自分が今後も大事にしていきたいことです。



終わってみれば大学生活もあっという間でした。簡単な言葉ではまとめられないほど複雑で貴重な時間でしたが、総じて有意義な4年間でした。

決して楽でも簡単な道でもなかったこれまでの経験をこうして前向きに捉えられるのは、自分をいつも奮い立たせてくれた原動力があったからです。そして、その原動力になってくれていた人たちがいたからです。自分を信じてくれている人たちのために、どうしても情けない姿は見せられませんでした。

自分のためだけのサッカーではなく、多くの人たちの期待や想いも込められたサッカーだったからこそ、自分は直向きに頑張ってきました。間違いなく自分ひとりの力ではここまで来ることはできませんでした。自分はサッカーに生きていたようで、サッカーに生かされていたのかもしれません。改めてこれまでの長いサッカー漬けの日々を振り返り、感謝の想いが芽生えてきます。


最後になりますが、これまでのサッカー生活の中で本当に多くの人たちに応援していただき、支援していただきました。そのすべての人たちに、この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

例えサッカーを辞めたとしても、自分の経歴が消えることは一生ありません。自分が所属してきたチームは記録として一生残り続けます。そこに所属していた人として見られることになります。
どのような道に進もうと、サッカーから離れようと、応援されてきた人であったことに変わりありません。そして、自分に携わっていただいた人たちは皆、自分が充実した人生を歩んでいくことを望んでいることでしょう。その人たちのためにも、これまでの経験に誇りと責任を持ち、頑張る人であり続けます。

生まれ変わっても再現できないような、刺激的で恵まれたサッカー生活でした。その背景には多くの人たちの尽力があったことを身にしみて感じています。応援された経験、支えられた経験。それが、自分にとって最大の誇りです。また新たな世界で、これまで積み上げてきた経験を武器に、挑戦していきます。


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大西翔也(おおにししょうや)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:浦和レッズユース


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