【#Real Voice】　「全てを捧げる」　4年・加藤拓己

2021年11月1日 18:59

平素よりお世話になっております。
日頃のア式蹴球部の活動へのご支援・ご声援誠にありがとうございます。

怪我で始まり怪我で終わる大学サッカーで、多くの人に支えられて今の自分が存在できていることを心から感謝しています。
最後の部員ブログで何を書こうかとても悩みました。最後くらい、これまでかっこつけてきた自分をすべてさらけ出して伝えたいことを書こうと思います。

『鞠躬力を尽し、死して後己むのみ』
この言葉に今に自分の全てが込められていると感じる。

1年生の時、毎日のように「存在意義=レゾンデートル」を問われた。
この組織にきてから4年間、自分の存在意義は何なのか。たくさん考えた。
正直今でも答えはない。というより存在意義なんて自分ではわからない。
この言葉に何度も苦しめられた。しかし、この言葉がなければ今の自分はもっと未熟だったはず。
1年のころなんて、部員でもないのに毎日ビデオ撮影や得点板の仕事ばかり。
やる意味なんてないと思ってた。けど結果として、今となってその経験がたくさん考えさせてくれるきっかけだったことに気づいた。
この組織を好きになることなんてなかった。
この組織で誰かと仲良くなろうなんて一度も思わなかった。
この組織が大嫌いだった。
何度も笑われて、何度も不可能と言われて、何度もこの組織にいらないと言われた。
その度、この組織が消えてなくなってしまえばいいと思った。
監督に言われる言葉はすべて綺麗事だと思った。
試合に出始めてからもその気持ちは変わらなかった。
勿論、選手としてチームのために全力で戦う。けれど、この組織を誇ることなんてなかった。
自分がプレーするのは自分自身のためであって、自分を批判した人を見返すためだった。
同期には感謝しかなかったが、別に自分だけプロサッカー選手になって、早稲田大卒の経歴をもらうことさえできれば何でもよかった。
2年の時、チームが残留争いしていたとき。大切な試合前日に寝坊した。
「今後試合に出しません」と4年生から言われた。別にどうでもよかった。
このチームがどうなろうと関係ないとも思った。
しかしその寝坊が自分を大きく変えてくれた。
「自分には試合に出る資格はありません」と学年ミーティングで発した時、同期に本気で怒られたこと。
同期が自分のことを本気で考えている姿を見たこと。
毎日コミュニケーションを取ってくれる先輩がいたこと。
多くの人が全力で自分にぶつかってくれたこと。
毎日考えることを促してくれた監督がいたこと。
その時これまでの自分に腹が立った。
こんなに多くの人が自分に向き合ってくれているのに、自分の中で壁を作っていたこと。
変わらなければいけないと分かっていても、組織を理由に変わらなかったこと。
そんな自分を本気で変えたいと思った。振り返ると、前述したように1年の時から何度も変わるためのきっかけを多くの人が与えてくれていたことに気づいた。
チームの仕事も何もかもが自分には必要なことだった。
自分を変えることができるのは自分しかいない。これだけ人に尽くされたことはなかった。
だからこそ、自分はこの組織のために自分を犠牲にしてでも変わらなければいけなかった。
そんな決意を抱いてからの景色はとても晴れやかだった。
チームのために走ること、チームのためにゴールを決めること、それこそが自分の仕事だった。
誰に何と言われようと、このチームを勝たせる選手になりたいと思った。
このチームで笑いたいと思った。
このチームを自分が背負っていくと心の中に強く刻み込んだ。
勝って笑っている姿に幸せを感じたし、負けて泣いてる姿は見たくなかった。
残留を決めたとき、泣き崩れるチームメイトの姿を見て安心した。
3年になってからもこの組織を勝たせることだけが仕事だった。
紅白戦で負けて悔し涙を流しながら思いを伝える先輩の姿を見て、その思いを背負って戦わなければいけないと思った。
試合前日に呼び出され思いを語ってくれたキャプテンに、逆転勝ちの末に抱き合って涙ながら言われた「ありがとう」の言葉に、重圧と責任を背負う難しさを感じた。
解散式の時に全体の前で言われた「加藤がやるんだぞ」と言われた瞬間に、これから来る最高学年としての覚悟ができた。
4年生になってからは想像を絶するほど自分との戦いに苦戦した。
自分を殺してでもチームのために戦わなければいけないが、4年生として存在感も出さなければいけない。
去年まで何もかもを背負って自由にやらせてくれた先輩がいなくなって、4年生の偉大さを感じたからこそ逆に後輩たちに責任を感じさせたくなかった。
勝っても常に付きまとうのは焦りばかりで、何とか騙し騙しで自分を偽ってでも戦うしかなかった。
怪我人が多かった4年生が復帰してくるまでチームを引っ張るしかなかった。
苦しいのは自分だけではないと何度も自分に言い聞かせて、グランドに行くと襲われる吐き気に耐えながら変わらず笑顔を作った。
苦しくても戦う選手の姿や、ピッチの外から大きな声で鼓舞をしてくれる学生スタッフに何としてでも結果で安心させたかった。
骨が折れようと、頭が揺れてボールが見えずとも、チームのために戦いたかった。
この組織が他人に批判されたり笑われることが何よりも悔しかった。
全てを背負って、全ての批判が自分に来ようとも、この組織を勝たせたかった。
自分を変えてくれたこの組織に、仲間に、笑ってほしかった。
その思いだけが原動力だったし、その思いこそが何もかもを犠牲にしてでも戦える理由だった。
怪我をして大学サッカーは終わりと言われたときも、何とかまたみんなとサッカーするための方法を考えた。
チームを離脱して離れた地でリハビリをすることにとても悩んだし、簡単な決断ではなかった。
けれどもう一度その思いを、みんなにピッチの上で見せたいと思えば苦しくはなかった。
チームを背負って戦わせてくれたこと、多くの期待を背負わせてくれたこと、その全てが幸せだった。だからこそ、まだまだみんなと戦いたい。その思いは決してブレることはない。
1年の時から問題児と言われ、組織もチームも監督も大嫌いだった自分は組織の中に隠れた人狼だった。
けれど、そんな組織を蝕む人狼でも何かきっかけがあれば変われる。
簡単に「チームのために戦いなさい」なんて俺はみんなに言えない。
「今の自分を変えろ」とも言えない。
俺が自信をもって言えるのは「自分が誇れる自分になれ」ということだけ。
一度決めた「このチームのために戦う」という決意に俺は全くの後悔もないし、何よりも今の自分を誇りに思う。
俺はこの4年間で大嫌いだったこの組織が大好きになれた。
このチームになら自分の全てを捧げられると心から思えた。
人狼だろうと、気持ち1つで騎士にも狩人にでもなれる。
組織に不満が出るのも当たり前、苦手な人がいるのも当たり前。
けれど、そこに壁を作らないで立ち向かうことが大切。
怒りがあるならば素直に出せばいいし、納得がいくまで逃げるな。
その姿勢こそが組織を変えていくし、自分を変えるきっかけになるから。
もしかしたら自分の存在意義はこの思いをみんなに伝えることだったのかもしれない。
だからいつか、みんなが自分と同じ思いを抱いてくれたらこのブログも少しは意味があるものになると思う。
俺はみんなが大好きだし、みんなとならどんな壁も越えられると信じている。

外池さんへ

これまで沢山の迷惑をかけました。何度も納得がいかずに意見をしました。その度に向き合って多くの気づきを与えてくれたことに感謝しています。上手くいかないときに夜遅くまで話を聞いてくれたこと、元気がない自分をドライブに連れて行ってたくさんのアドバイスをくれたこと、決して否定せずに「加藤らしく」と自由にやらせてくれたこと、そして何より他人に何と言われようと自分を信じてくれたこと。その全てが厳しさであり優しさだと感じています。最後にまた外池さんとモネールダンスをするために今はチームを離れることをお許しください。人生の中で重要である大学生活を外池さんの下で過ごし戦えることを誇りに思います。必ず最後に胴上げします。必ず戻ります。

拓矢へ
4年間毎日一緒に過ごしてきた拓矢の期待に応えられなくて本当にごめん。
拓矢を笑わせたくて、拓矢を苦しめたくなくて、拓矢と同じ夢を叶えたくて俺はここまで突き進んでこれたよ。
いつどんな時でも味方でいてくれたこと、どんな状況でも「拓己ならできる」と信じてくれたこと。その期待に自分のプレーで拓矢に活力を与えられるようにと、少しでも元気を届けられるように頑張ったけれど、今はピッチに立つことができない。怪我した時誰よりも泣いてくれた姿は忘れないし、まだまだ拓矢とやらなければいけないことが残っているから俺は頑張れるよ。もっと写真フォルダを勝利後のツーショットで一杯にしたいし、もっと勝利後のダンスを見たい。今は離れてリハビリをしているけど、必ずもう一度期待に応えるよ。ピッチの外からだと限界はあるけど、その熱量は必ずチームを勝たせると信じているよ。

エスパルスへ
こんな自分を迎え入れてくれたこと、本当に感謝しています。
怪我の診断が出たとき「みんなで支えるから」と言ってもらえて安心してリハビリができています。焦る自分にたくさんの話をしてくれて選手としての価値を再認識させてくれたこと、甘えを許さずリハビリに本気で向き合えるように最高のサポート体制を整えてくれていること、そしてたくさんの貴重な経験をさせてくれていること。多くの温かいサポーターに出会わせてくれたこと。本当に感謝しています。今は選手としての価値はないけれど、必ずエスパルスに必要な選手になれるように努力します。