【#Real Voice】 「ア式のママ」 4年・羽田拓矢
「苦しい自慢はもう辞めだ。」
多くの同期の4年生が書いていたように、
ここまで、決して順風満帆なシーズンではなかったし、こんなに苦しいのか、きついのか、しんどいのかという出来事もあった。
自分自身、主務として過ごす中で、自分の弱さ、未熟さ、甘さを痛感しては自信を失うことも多いと感じる。
それでも、
今、自分は幸せだと思う。
例え、
最も信頼を寄せる相棒が怪我で長期離脱をしようとも、
最後に一緒に日本一を掴むチャンスがある。
例え、
大学ラストの早慶戦で敗戦して、一生後悔するような悔しさと絶望に打ちひしがれても、
その2日後には拓殖戦があって、仲間と勝利を掴むことができた。
例え、
インカレ出場が目の前にあるのになかなか手が届かなくて、チームの雰囲気が沈んでいても、
4年早慶戦に勝って、法政に打ち勝って、インカレ出場を自分達の手で掴み取ることができた。
結果論と言われればそれまでかもしれない。
関東リーグの最終節、法政に負けてインカレを逃していたら、ましてや降格していたら、
「幸せ」とは間違いなく言えなかった。
でも、
過去の勝利も、今の立ち位置も、未来の可能性も、
苦しみながらもチーム全員で、掴み取って、踏ん張って、紡いだ結果だからこそ、
今、俺は幸せだと胸を張って言える。
どんなに苦しくても、きつくても、しんどくても、
こんなにも充実した、濃密な日々を一生懸命に生きていけることが、尊くて仕方ないと思う。
ただ、幸せだからと言ってチームの課題から、自分の未熟さから目を背けるつもりはさらさら無い。 最後まで、チームに・仲間に・自分に向き合い続けたいと思う。
だからこそ、
苦しい自慢をして、互いに慰め合うのではなく、
この幸せを十二分に噛み締めて、長くても残り1ヶ月で終わってしまう2021シーズンを仲間と共に全力でやり切りたいと思う。
そんな想いを胸に、最後の部員ブログで自分の想いと、皆への愛を綴ろうと思います。
今シーズンのいつからか、同期や後輩の何人かから、
「ママ」と呼ばれるようになった。
勿論、ふざけて呼んだり、イジるために呼んでいるのがほとんどだが、個人的にはとても気に入っている。
自分で言うのもなんだが、
今シーズンは特に、本当に、本当に、本当に、
言葉では表せないくらい、
とにかく、みんなに少しでも良い環境でサッカーをして欲しくて、少しでも思うようなプレーをして欲しくてたまらない。
どうにか運営面から、ピッチの外から勝利の可能性を1%でも高められないかと日々模索している。
そんな想いが、ついついみんなへの声かけや、行動に出てしまっているのだろうか。
お母さんの気持ちがわかるなんて、冗談でも言えないが、
ア式の皆のことが愛おしくてたまらなく大切なのは間違いない。
ただ、その想いが強くなったのも、
大きなきっかけがあったと今になって思う。
7月1日
忘れもしない。
同期で、同部屋で相棒で、戦友の拓己が前十字靭帯を断裂する大怪我をした。
大学サッカーの象徴は?
と聞かれれば、即答で「加藤拓己」と答える。
自分にとって拓己の存在はとてつもなく大きい。
そんな拓己が急にピッチからいなくなることが想像できなかったし、心にぽっかり大きな穴が空いた瞬間だった。
怪我をしてしまったことへのショックは勿論のこと、それと同等か、それ以上に
6月26日の関東リーグ前期最終節の明治戦後に外池さんから言われた言葉がとても引っかかって、後悔となった。
こちらも忘れもしない。
「加藤と一番仲が良いのはお前だろ。加藤の甘さはお前の甘さなんだよ。拓矢は優しいんじゃなくて、甘くて緩くてぬるくて、そして軽いんだよ。」
明治戦の敗戦後、電話で、そして翌日にコーチ室で直接、2度言われた言葉。
拓己が今シーズン、エースとしてのプレッシャーと、4年としての責任、皆からの期待を全て背負って、苦しんでいる姿は見ていた。
勿論毎日話していたし、ふざけた話から真剣な話までありとあらゆる話をしていた。
それでも、俺が拓己にもっと違う形で話をできていたら、拓己の認識を変えられていたら、
もしかしたら拓己のあの怪我は防げたんじゃないか。
そんな風に思えて仕方なかった。
勿論怪我と直接的に繋がることではないかもしれないけど、怪我をしたあの日、拓己の中で空回りをした状態でも全力でプレーをしなきゃいけない状況であったのは間違いなかった。
今まで、辛い時もしんどい時も、いつもプレーとその姿勢で支えてくれていた拓己を、本当の意味で支えることができなかったのが本当に悔やまれた。
そして、拓己を支えているようで、拓己に依存していたことに気付いた。
7月2日の深夜
「もう一度みんなとサッカーをするために俺はリハビリを頑張るから、拓矢はピッチの外から戦い続けてほしい。離れることにはなるけど、それがお互いの成長に繋がるし、頑張ろう。」
そう拓己に言われた。
必ず、拓己の帰る場所を作り続けると心に誓った。
そして、大学サッカーの象徴である、加藤拓己を日本一のチームのエースとしてプロの世界に送り出したいと強く思った。
と同時に、何故自分が「加藤拓己」と言うプレイヤーにここまで惹かれたのかを考えた。
勿論ダイナミックなプレーとゴールは見る人を魅了する。
だけど、違う。
大きな身体を張って泥臭く戦う姿勢に勇気づけられる。
だけど、これも違う。
じゃあ拓己の不器用だけども、想いのこもった言葉?
いや、これも違う。
勿論1つに断定できるものではないけれど、一番大きな要素はこれだった。
「顔」
サッカー選手なのに、顔?と思うかも知れない。
拓己の顔に惹かれてたの?本当?と思うかもしれない。
でも、間違いなく俺は加藤拓己のサッカー選手としての顔とその表情に魅せられていた。
いつもはめちゃくちゃふざけた顔しかしていないのに、ストライカーとして気持ちを激らせた目、
マウスピースをはめて笑う口
ただ単に顔がどうとかじゃなくて、拓己の想いやキャラクターを知った上で拓己の顔と表情に一番勇気づけられていたと気づいた。
サッカーを観るのは好きじゃないけれど、サッカーに魅せられている本質はここにあると思う。
ただ上手い、凄いプレーに人々は魅了されるのではないと思う。
その人の、顔に、表情に、姿勢に、プレーに「想い」が乗って、それが感じられるからこそ人々はサッカーに、スポーツに魅了されるんだなと思う。
そんな様々な感情に溢れたみんなの顔と出会えるサッカーってやっぱり最高のスポーツだと思う。
だからこそ、顔を上げて、みんなの顔を見て活動に取り組もうと思った。
「加藤拓己」への依存から卒業して、チームの代表として、誰よりもこのチームを支え、共に闘う存在になる。
それこそが、自分の目指す、
「”日本一”チームを愛せる主務になる」
ことに繋がると強く感じた。
それからは皆の顔を凄く見るようになった。
雄大(4年田中雄大)
プレーをしながら舌を出す、正に「サッカー小僧」としてサッカーを楽しむ雄大の顔は本当に見ていてワクワクする。
どんどん、楽しくなさそうな表情でプレーをさせてしまったけど、4年早慶戦で見た雄大の表情に、これぞ「田中雄大」を見た気がする。
悠(4年田部井悠)
内に秘める想いと、仲間の想いを訴えかけるような強い眼差しでプレーをする悠は本当にカッコ良い。
マサ(4年杉田将宏)
とにかく必死の形相で、チームのために仲間のために、どこまでもボールを追い回すマサは、俺ら4年の象徴だと思う。
大(3年平瀬大)
いつものおちゃらけた表情はどこへやら。
どんな日でも毎日、とにかく真っ直ぐ自分に向き合う真剣な表情。
どこまでも真っ直ぐに進んでいってほしい。
実を言うと、大と一緒に戦うことができなかったことは本当に残念だし、最大の心残り。
これから先も誰よりも応援しているし、不器用でも真っ直ぐに大らしく突き進む姿を楽しみにしています。
リクト(3年平田陸人)
この1年はピッチ上での表情は見れなかったけど、その分主務部屋で一番色々な顔を見た気がする。
嬉しそうにチョコを食べていたり、
気持ちよさそうにソファで寝ていたり、
時には泣いていたり、、、、、
あれ??(笑)
不思議だけど、選手兼主務として泥臭くもカッコ良い姿を体現するんだろうなという期待しかない。
ふじ(2年藤本隼斗)
いつもニヤニヤしていて、サッカーはめちゃくちゃ上手いのに素直に上は目指せなかったりして、、
だけど、時々ふじが見せてくれる熱く、燃えている顔つきを見ると本当に嬉しくてたまらなくなる。
ふでぃ、最後まで一緒にサッカーしような。
陽琉(2年奥田陽琉)
メンバー発表の時、誰よりも、真っ直ぐな強い眼差しで目を見てグータッチをしてくれる陽琉。何かやってくれるんじゃないか、そう思わせてくれるストライカー。
陽太(2年小倉陽太)
あまり感情を顔に出したりしないし、陽太は自分から誰かによって行くタイプじゃないけど、
話をすると、陽太が考えている素直で熱い想いを話してくれて、そのちょっとした表情の変化がすごく好きです。
公平(1年北村公平)
意外と感情が顔に出やすくて、落ち込んでいるんだろうなってのがわかりやすい気がする。
だけど、声をかけると決まって元気に返事をしてくれるし、その感じが公平の人間味を感じる。
泉(1年泉颯)
練習後の自主練の時に、薄く笑みを浮かべて他の1年生と楽しそうに1対1やボール回しをしているね。
仮入部期間の時のことを思い出して、そのサッカーに対する素直な想いを全面にぶつけて上を目指してほしい。
全員は書けなかったし、
残念だけど、現実として部員全員と深い関係性を築けているわけではない。
だけど、それでも、
部員1人1人の顔と表情に日々俺は魅せられています。
最後の最後まで、
ア式で、ア式の仲間と共に、闘いたい。
日本一を取って笑って、泣いて、中には悔しがって、沸々と心を燃やしているそんな部員達の顔を見たい。
拓己との約束を果たしたい。
拓己がピッチに立てるかどうかは勿論わからない。
それでも、最後の最後まで帰る場所を作り続けたい。
甘くて緩くてぬるくて、そして軽い自分からは抜け出せたのだろうか。
まだまだ未熟だし、足りない。
だけど、ア式のママを名乗る以上、みんなが安心して、万全の状態で闘えるよう、全力で皆の背中を押したいと思う。
だから、図太く、ポジティブに、チームのために、信じて突き進む姿を体現する。
ア式の「ママ」として
今日も、明日も、明後日も、その先も、
皆の顔を見て、表情を見て、誰よりもアツく、強い想いを持って声を出し続けます。
12月25日
クリスマスにみんなと最高の顔で、最高の歓喜の瞬間を掴み取ります。
◇羽田拓矢(はだたくや)◇
学年:4年
学部:人間科学部
出身校:都立駒場高校