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「2021年の想いを」 3年・須藤友介

誰もいないピッチで、1人で黙々とシュートを打ち続けている。蹴っては拾いに行き、拾ってはまた蹴る。
その光景が、ア式に来て初めて、ア式らしさを学んだ瞬間だった。

入部期間。さりげなくボール回しに誘ってくれて、チームに馴染ませてくれた。私が周りよりも早く入部できたのは、彼らの存在があったからだと、心から思っている。

大学に来て、人生で初めて試合に出場できなくなり、一番下のCチームで苦しんでいた時。
泣きじゃくる私の話を聞き続け、私の安易な判断を、踏みとどまらせてくれた。

お酒の飲み方、オフの遊び、プレーの方向性、上級生としての振る舞い方、部室でのじゃれ合い、友達のようなバル。と、バル会員達。

私はこの3年間で、4年から計り知れない恩を受けた。
彼らの4年目のパワーは凄かった。でもそれだけではなく、自分の中では、3年間、ずっと凄かった。幹部だけでなく、モブキャラまで。1人1人が優しくて、何より人に対してリスペクトを持って接する姿勢に憧れを抱いていた。

今シーズンを戦って、素直に自分が思うことは、
4年への感謝と、自分への無力感でしかない。

もっとバズりそうで、イケていて、カッコイイことを言いたいけど、
心の底からそれしかない。


2020年4.5.6月のコロナ自粛期間、私は自分と向き合う時間が増えた。
残りのア式生活で、何を達成したいのか、何のために自分は頑張るのか。

その中で、辿り着いたのは2つの想い。

2020年 4年を笑顔で送り出す
2021年 4年として、同期と、チーム全員と笑顔で、サッカー人生を締めくくる。

この想いが実現できるなら、あと2年、全力でサッカーをやれる自信が湧いてきたのを覚えている。


結果を簡潔にいうと、私は2020年、何の成果もあげていない。
4年を笑顔で送り出す。そこに値する価値は何にも生み出せなかった。

上級生となり、デカイ態度を振りかざしながらア式生活を送っているものの、何にもなかった。

ざっと今年を振り返る。

コロナ自粛開けの6月に、前期の関東リーグに初期登録してもらったのがピーク。
開幕1週間前には、両腿を同時に肉離れし、約3ヶ月の離脱。
結局、前期はプレーすることができずに、関東リーグでみんなが体を張り続ける姿を、自宅で、画面越しに見ていた。

秋に復帰するも、思うような結果が出ない。
Bチームで、FCやIリーグに出場する機会もあったが、チームに勝利を与えることはできなかった。

試合に負けて、泣いている4年を見た時に、
「力がなければ、どんなに強く想っても、成し遂げたくても、何にも叶えることができない」
自分の無力さを痛いほど、認めるしかなかった。

年末。#atarimaeni CUPのメンバー選考。チーム事情から、Aに上がり、メンバー入りのチャンスが。ラストプレーで失点に絡み、掴めそうだったメンバー入りを逃した。
せめて最後くらいは。
そんな身勝手な想いは、あっけなく散っていった。

結果、#atarimaeni CUPメンバー以外はオフに入り、今シーズン最後の試合も、画面越しに見ることになる。惜しくも3位という結果に終わってしまったけど、最後の大会を戦うメンバー達の姿は輝いていて、2020シーズンのア式蹴球部に在籍していたことを誇らしく思った。
難しい状況下で戦い抜いてくれたメンバーに、心から感謝している。ありがとう。


話は変わるが、高校・大学と、5年間、同じチームで戦った、西前一輝という先輩がいる。
良く言うと、私を早稲田ア式に導き、5年間面倒を見続けてくれた先輩。
悪く言うと、不機嫌になると、めちゃくちゃ当たってくる先輩。
でも、お互いを信頼して、応援し合うような、特別な関係だと思う。
顔も態度もデカイから、新シーズンにいないとなると、存在感と面積的に寂しくなるだろう。
ある日
「お前はまだ甘い、何よりもチームのために行動しろ」と言ってきた。
「サッカーをやりきった、悔いはない」
ひくほどに、人より悔しがることの多い彼が、Aの公式戦に出場することなく、大学サッカー人生を終えようとしていても、そう言い切ってきた。
5年間、付き合ってきて、「西前どうした」って思ったけど、
For the team の働きぶりを見ていると、その言葉の意味を理解したように感じる。

こうなるべきなんだろう。来シーズンの私自身の立場を踏まえても、結局、また、その姿を追いかけることになる。すごい癪に触るけど。


4年になる。ア式での4年は、重く、重く。重い。
100人をまとめ上げる立場になり、同時に100人の人生を背負うことになる。
この1年間、どのような結果を残せるのかが、プロに行く奴、就職する奴、初めて大学サッカーに来る奴、みんなの人生を左右する。それくらいの責任があると、本気で思う。
3年いるとわかる。ア式では、4年の態度が、行動が、想いが、1日の練習の強度を上げ、1試合の勝敗を左右し、1年間の結果と達成感を叩き出す。

「4年になると景色が変わる」代々の4年生が伝えてくれた言葉だ。
まだ、4年になってはいないけど、それを間近に控えた今だからこそ見えることがある。
だからこそ、この1年、「4年」という立場を謳歌してやりたい。


2020 年の想いを叶えることはできなかったけど、幸いにも、2021年の想いを叶えるチャンスが私にはある。

「試合に出場して活躍する」
そこへの欲望は、自分の中で、消えることはなく、追い続けていくものだ。

しかし、それ以上に、大切にしないといけないものがある。

何よりもチームが勝つために。

そして、私は、4年に与えてもらった恩を、今度は自分が後輩に与えたい。
きっとそれが、4年への恩返しになるとも勝手に思っているし。

上手くいかない選手に寄り添い、誰もが前向きに、生きていけるような。
不思議とチームを応援してしまうような。
そんなチーム運営を目指し、私は働く。

みんな、何か悩みや相談事があったら相談してね。


終わりに。

#atarimaeni CUPの期間、オフに入った私は、地元の公園でサッカーをしていた。

チームでの活動が無くなるたびに体を動かしにきたのは、15年間通してこの公園だった。きっと年末年始にここで体を作るのは、人生で最後になるだろう。

多くの幼い子供がサッカーをしている。ズルをした、していないで、お母さんに怒られている子供もいる。
ボールを蹴る子供に、昔の自分を、何も考えずに、ただ上だけを目指して、自分の可能性を信じてサッカーをしていた自分の影を不思議と重ねてしまっていることに気づく。
もしあの頃の自分に伝えることができるなら、
「サッカーというスポーツが多くの学びを教えてくれる、色々な人との出会いを紡いでくれる。そして、それに気付いた時に、自分の人生を誇ることができる。だからこそ、その日々を大切にして、その道を突き進んでほしい」と伝えたい。

私の最後の1年は、どのような物語になるのだろう。
終わりに立った時、今よりも成長した自分がいるのだろうか。
支えてくれた人々に、何かを残せたと、胸を張って、引退できるのだろうか。
後輩は、2021年シーズンに在籍してよかったと、誇ってくれるのだろうか。

1年先のことは、全くわからない。
ここからの1日、1日は、1歩ずつ、着実に、終わりへと私を近づけていく。

だけど、少しでも、今度こそは、自分の想いを達成するために。

圧倒的に無力で、それでも努力して、なんとか困難を乗り越えてきた自分へ。

幼い頃から、上の相手を目指して戦ってきたように。
もう一度、子供の頃に戻ったように。

2021年 4年として、同期と、チーム全員と、笑顔で、サッカー人生を締めくくる。

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須藤友介(すとうゆうすけ)
学年:3年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:FC町田ゼルビアユース


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