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【就活生特集】 〜自分からサッカーを取った時に、何でチームや社会に貢献するかを考える4年間〜

社会に出る前の貴重な大学4年間をサッカーに捧げる決意を固め、ア式の門を叩いてきた部員たち。いくらプロサッカー選手になることを夢見ても、それを叶えることができるのはわずかに一握り。部員のほとんどがビジネスマンとなり、社会に羽ばたいていく。
そんな現実を前にした4年生がどのような思いで就活に臨み、その過程でどのような知見を得るのか。そして、それをどのように組織に落とし込んでいくのか。
今回は、そんな就活生を代表して5人の4年生に話を聞いた。

(※このインタビューは3月18日に行ったものです)

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○これが俺の就活

ーー皆さんがそれぞれどのような就活をやっているのか教えてください。

小山:早実の初等部出身だから、これまで親が自分にたくさんのお金を注ぎ込んでくれたというのもあって、「就職先くらいは自分の力で勝ち取らなきゃ」と思い始めたのが去年の3月くらい。先輩とかから自己分析が大事だと言われてきたから、「自分がどういう人間なのか」を振り返りながら”自分史”を書いた。「どうしてサッカーを始めたのか」「どうして早実という道を選んだのか」「どうして大学でもサッカーを続けているのか」などを考えて、自分がどのような人間なのかを知ってきたつもりだった。夏場はインターンに1社参加して、一定の手応えはあったから「このまま突っ走ってみよう」と思って夏場からエンジンはかけた。
でも、12月くらいにア式のOBの方とお話しをさせてもらう機会をいただいた時に、自分がこれまで積み上げてきた自己分析の甘さを徹底的に指摘された。そこで「いかに自分は組織に乗っかってるだけの怠け者か、大したことのない成功に過剰なプライドを持つ人間か」という自分の弱さが明らかになって目の前が真っ暗になった。
そこからは自分の弱さと向き合う作業は続けながらも、自分と合いそうな会社の説明会とかに行って志望企業を絞っていった感じかな。

坂本:自分はプロ志望で早稲田に入学したんだけど、自分の中で「3年の夏までにスタメンでコンスタントに試合に出られていなかったら、プロ志望一本でいくのは無理だな」とは思っていたから、就活をするかしないかの判断は2年生の時から自分の中でしていた。去年はベンチに入ったり入らなかったりが続いて、とても活躍している状況とは言えなかったから、必然的に就活をスタートさせた。スタートさせたのは去年の6月くらい。早い段階から動いていた小山と西前が就活支援の企業を紹介してくれたから、そこからいろいろな人に会うようになった。自分は長期インターンには参加せずに、アプリを使って社会で働いている人と会う方法をとって、どういう企業があって、どういう想いを持って働いているのかを聞いて、”社会を知る”作業を夏にやっていたな。自分が志望した企業はエントリーが早かったから、今年の冬には面接があった。”こういう仕事がやりたい”というよりかは”将来性のある企業”を軸にして選んでいたんだけど、その中で良い企業と出会うことができて、2月の終わりに内定を頂くことができました。
自分は、就活をやりつつも、プロ志望でサッカーも頑張っている感じになります。

鈴木怜:3年の春、外池さんが呼んでくれた企業の方の話を聞いたのが就活の始まりだったかな。プロ志望ではなかったから大学卒業後もサッカーをするつもりがなくて、今までサッカーがメインの生活を送ってきたけど、その生活がなくなった先のことを、時間のあるうちに考えておかないといけないと思った。イベントに参加したり、エンカレッジというキャリア支援団体の方と将来のことを一緒に考えたりしたのが3年生の時の大きな流れ。夏はインターン、9月に合同説明会、11月に選考直結の説明会、12月に内定、という感じ。その後に内定先の社員の方とお会いさせていただいて、最終的にその企業に決めました。

西前:自分の中で就活を始めたのが、3年の12月のオフに入ってから。自分は主務という役職になったと同時に「プロを目指さない」という気持ちにはなったんだけど、その時に「ア式だけじゃなくて外の世界も見てみたいな」と思った。学生の特権を活かして、社会人の方と会って話を聞きたいと思って、OB訪問という形でベンチャーから日系の大手、外資のトップトップでやられている方など、いろいろな業種の方にアポを取って話を聞きに行った。夏はインターンに2社くらい参加したんだけど、その会社に行きたいというよりは、いろいろな考えを持った、普段会うことのないような学生たちと何かを一緒にやることで、自分にとって新しい発見があるんじゃないかと思って参加した。
だから、本格的に”就活”という想いで始めたのは去年の12月から。OB訪問を中心に、直感で「良いな」と思った企業のことを調べて、2月3月はSPIをやりながらOBに会いに行って厳しく指摘される日々を送る感じ(笑)。3月1日にES(エントリーシート)に何を書けば良いかがだいたい分かるんだけど、それを待って、3月末までの締め切りまでにESを書く。どの企業も4月の末から5月の頭くらいから1次面接が始まって、5月半ばくらいから2次面接・3次面接があって、6月1日から最終面接。だから、6月の1週目くらいに握手ができれば自分の将来が決まる感じで、そこで握手ができなかったら「また来年やりましょう」って感じでやっています。

森本:去年の4月にエンカレッジの人にお会いしたことが就活の始まり。面接では社会人の方と話をすると思うんだけど、自分は1対1で大人と話す時に緊張してしまうタイプで、それに馴れたいと思って、マッチャーというアプリを使っていろいろな社会人の方にお会いした。そこで自分から話をしたり、話題を引き出したりする練習を続けていた。10月に初めて3日間のインターンに参加。そこで自分が行きたい業界・企業が見えてきて、そこからは業界を絞ってOB訪問をした。始めはなるべくア式のOB以外の方と会うことを意識して、今年に入ってからア式のOBの方とお会いするようした。3月に入ってからは本格的にSPIを始めた。今はエントリーシートをやっている感じです。

西前:新3年生が「もうSPIの準備をしておいた方がいいですか?」って聞いてくるんだけど、全くその必要はないと思う。

森本:それをやるんだったら、TOEICを受けた方がいい。

西前:受験をして早稲田に入学した人なら、2週間勉強すれば大丈夫。


ーーインターンではどのようなことをしていたのですか?

鈴木怜:インターンって、始めは”仕事体験”みたいな感じなのかと思っていたけど全然違った。

西前:社員さんの仕事に同行するイメージだったんだけど、全然違ったね。グループワークだった。仕事をする感じではなかった。

森本:あれは頭が疲れたな。優秀な学生が多いから無力感を味わう。「早稲田だから」とかは本当にない。むしろ無能くらい。

鈴木怜:「学生団体に入って、こんなことをしています」みたいな学生が多いんだよね。

西前:インターンに行って実感したのは、普段からいかに言葉で伝えることを端折っているか。ア式の”共通言語”に馴れて「10伝えたかったら3言えば伝わる」という感覚が自分の身体に擦り込まれすぎて、インターンでは自分の言いたいことを全然分かってもらえなかった。俺たちは、考えていることが悪くなくても言葉にできないところがあるから、下級生は今から”ア式言語”に染まりすぎないように意識して欲しいかな。

小山:自分のネガティブな要素も見つかるんだけど、ポジティブな要素も見つかる。何もできない自分が悔しかったんだけど、「俺って意外とサッカー以外のことにも没頭できるんだ」とは感じた。
あと、ロジカルシンキングがア式は弱いと感じた。筋道を立てて、軸を通して話すことが人に説得する時には必要。みんなインターンでそういう能力を得てきて、そこからは極端に学年ミーティングの質が上がったね(笑)。

西前:確かに。インターンを経ての学年ミーティングは質が上がったけど、変に大人になってしまったから、逆にかしこまりすぎて話がまとまらないこともあったね。

森本:めっちゃフレームワークを使おうとした人もいたもんね(笑)。

西前:「じゃあ1回ブレストしようか!」「これMECEじゃなくない?」みたいな(笑)。

小山:ピュアな学生が、吸収してきたものを披露したがる場になっていて(笑)。

ーーインターンに関して、後輩へのアドバイスはありますか?

小山:俺はワンデーよりも長期で行った方がいいと思う。ワンデーは基本的に会社説明だから、3日とか5日のインターンがおすすめかな。

坂本:俺はインターンで練習を休みたくなかったから、基本的に長期インターンには応募しなかった。

西前:俺は逆の発想で、外池さんが「サッカーだけをやっていればいいわけじゃない」という考えの中で、世の中を知る手段のひとつにインターンがあって、もし行けるチャンスがあれば行きたいと思っていた。もちろん練習への影響はあって、俺もCチームまで落ちてしまったけど、「インターンに行って良かった」と思えた。ア式だけでは学べないものを学べるし、学んできた価値観をア式に落とし込むことで自分の思考の幅も広がるし、組織としてもプラスになるんじゃないかな。


ーーOB訪問について詳しく教えてください。

小山:部とかゼミのOB名簿を見たり、今ではアプリを使ったりして、OBの方にアポを取って会いに行く。聞くことはたくさんあるんだけど、主に「どのような就活をしていたか」「今どのような仕事をしているのか」「その仕事の良さ」「会社の魅力」を聞くのが第一段階だと思っている。
俺が最近やっているのは、実際にいろいろな人から情報を収集する中で自分で作り上げた想いをぶつけて、フィードバックをもらうこと。

西前:内定へのアピールを目的にするOB訪問は違うと思う。あくまでも本質は自分の考えをぶつけたり、考えを聞くことだと思う。
自分がOB訪問をする中で思うのは、ア式のOBの方は本気で自分たちに向き合ってくださる。ものすごく自分たちにコミットしてくれるから、それは頼った方がいい。そこはア式の良さだと思う。代も被っていない方が、俺たちのために2時間くらい説教してくださるんだよ。自分の仕事もある中で、学生に対して怒っても何もお金が生まれないのにそこまでしてくれるというのは、自分たちに対して本気で向き合ってくれているということだし、「ア式をもっと良くしたい」という思いから来るものなんじゃないかなと最近すごい感じるね。

森本:ア式以外の方でも対応はしていただけるんだけど、自分と全く関係性がないからそれ以上のものが返ってこない。だけど、ア式のOBの方とお会いすると、「ア式で学んだことが会社のこういうところで生きている」というアドバイスをくれる。それに加えて、自分の興味のある会社の知り合いの方を繋いでくれたりと、後輩である自分たちに手を差し伸べてくれる。就活を通して、OBの方の力の大きさを感じた。

小山:ア式のOB以外の方ってものすごくオブラートに包んで言ってくれるの。「君のそういうところ、うちの会社と合っているよ」「いいじゃん」みたいな感じ。これはこれで自信が出るし、世間から見た評価を知るという意味でも貴重な機会。
一方で、ア式のOBの方は「うちの会社に入らなくてもいいから、お前の人生をよくしてあげる」みたいな観点で話してくれるから、人間的な弱さを突きつけてくれる。自己アピールで「こういうことができます!」っていうのを持って行ったんだけど、図星すぎる指摘がバンバンきて。でも、図星だからこそ「ここで終わりたくない」って思えたし、自分の弱さと向き合わないとこの先の成長はないと思えた。本音で自分の弱さを徹底的に突いてくれる経験ができたことは本当にありがたかったね。


ーー学生から受ける刺激と、社会人から受ける刺激の違いはありましたか?

西前:学生はライバルで、「こいつらには負けたくない」っていう感覚。OBの方は「追いつきたい」「この人みたいになりたい」っていう感覚。

鈴木怜:社会人の方はモチベーションを与えてくれて、学生は危機感を与えてくれる。

西前:学生相手だと、「同い年なのにこういう言葉知っているんだ、こういう考え方ができるんだ」みたいな。


ーー就活を通して感じた、大人の凄みはありましたか?

森本:こっちがうまく言葉にできないものを単語単語でぶつけると、「つまり、こういうことだよね」ってうまく整理してくれる。

西前:俺たちの”ア式言語”を”世の中用語”に変換してくれるんだよね。

小山:ビジネスって人と人の繋がりの中で成り立っていて、俺たちと比じゃない広さのコミュニティの中で生み出されている。だからこそ、限られた時間で正確に伝わるように話をまとめる能力であったり、構造的に物事を捉えて本質を突く力が全然違うと思った。



○就活×体育会

ーー就活を通して、体育会の強みを感じることはありましたか?

鈴木怜:「体育会は就活で強い」って言われているけど、実際に会社の方が体育会生をどう見ているかというと、「真面目に、愚直に頑張ってくれる人」みたいなイメージを持っている。それを必要としている会社からしたら強みになると思うんだけど、それだけじゃダメだろうなとは思った。ただ言われたことを真面目にやるだけじゃなくて、自分で考えて、身体だけじゃなくて頭も使って行動できる人がどこに行っても通用すると思うから、”体育会”っていうことだけだと、就活では大した強みにはならないんじゃないかな。ただ、”チームの中でコミュニケーションを取りながら役割を発揮する”ところはいつも通りやれた感覚はあった。

坂本:「体育会は就活で強い」のは、OBとの繋がりが強いからいろいろな機会をいただけるだけで、実際の選考の場では周りとの差なんてない。だから、俺は「自分が体育会生だから」みたいなメンタリティーではなくて、あくまで一般学生として臨むようにしていたな。

森本:体育会は、他の学生よりもいろいろな経験をできる環境があるから有利。「体育会生はどうして重宝されるんですか?」ってOBの方に聞いたことがあるんだけど、「PDCAサイクルを回すことが習慣化できている学生が多い」ということを言われた。例えばサッカーに置き換えると、「こういうプレーをしよう→実際にやってみる→うまくいかない→じゃあ次はどうしようか」を当たり前にやる。でも、他の学生がそれを習慣化させる機会はそこまで多くなくて、例えばサークルで娯楽の一環としてやっている人はそこまでしないと思う。でも、体育会は成果が求められるから必然的にそういうことをやらないといけないし、そういうことを習慣化できているのが体育会生の強みだと思う。

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鈴木怜:就活をやっていると「大学でこんなことをやっていますよ」「こういうビジネスをやっていますよ」みたいな学生と出会うんだけど、俺らにはスポーツを通してPDCAサイクルを回している強みがあるから、そこは自信を持っていいと思う。

小山:サッカーしかやっていないけど、サッカーの中でいろいろ考えてやってきたことは自分の中で大事にしている価値観。確かに、海外への留学経験があるわけでも、起業しているわけでもない。サッカーを続けてきたからこそ見えてきた自分らしさは強みになるんじゃないかな。

西前:「”体育会”に身を纏っているから強い」ということは全くなくて、「”体育会”という環境の中で何ができたか」が結局のところ1番大事。その環境が他の学生よりも整っていることは間違いないけど、その中で”自分で考えて行動する”ことを繰り返し続けられるか、そこから何かを学ぶことができるのか、が本当に重要になってくる。
一方で体育会の弱みとして、それを言葉にできないことがある。だからこそ、自分たちが伝えたいことがうまく伝えられなくて選考でいい結果を残せないことがあるから、「自分が考えていることを実行する+それを言語化する」ことは下級生のうちからやっておいた方がいいと思う。でも実際それに気付けるのは、就活が佳境を迎えて切羽詰まってきている時になっちゃうのかな。



○「大学でサッカーをする意味」とは

ーープロ志望でなければ、今後サッカーが仕事になることはありません。例えば体育会に入っていなければ、もっとインターンに行けたり海外留学もできたりと、自分の可能性を広げる活動がもっとできたと思います。
では、社会に出る直前の貴重な4年間を皆さんはなぜサッカーに費やしたのか? それこそ「大学でサッカーをする意味」とは何なのでしょうか?

小山:そもそもサッカーを始めたきっかけは、地元に友達がいなかったから。仲間を作りたい一心で、公園でボールを蹴って仲間を増やしていったんだけど、”ボールを通じて心が通う”瞬間が本当に楽しかった。そこからサッカーを続けていくと、今度は仲間と一緒にひとつの目標に向かっていって達成した時の達成感は素晴らしかった。でも、それはサッカーを本気でやらないと味わえないから、大学に入っても本気で仲間たちと高みを目指して励むことができる組織に入りたかったし、それが大学でもサッカーを続けている理由のひとつ。
あとは、初等部出身だから受験でサッカーから離れることもなく続けてこられた環境があった。これは親が与えてくれた環境なんだけど、中学で挫折をして、そのまま高校も不完全燃焼で終わってしまった。今までこんなに支えてもらってきたのに、そこで涼しい顔をしてサッカーから身を引くのは違うと思った。だから、今まで支えてくれた親への感謝を体現して、長年通わせてもらった早稲田を背負ってピッチに立つことで自分のサッカー人生に区切りをつけようと思った。

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森本:俺には2つ理由があって、まずは単純に辞める理由がなかった。あとは、高校まで全然試合に出ていなかったけど、自分の中ではやれると思っていた。でも、監督やコーチに評価されなかった。だから、それを大学で証明したかった。俺が強い大学に行って試合に出れば、自分の正当性を証明できると思った。単純に、下克上を証明したくて大学でもサッカーを続けている。

西前:俺はもともとプロを目指していて、中高6年間本気でやっていたし、プロになることから逆算して生活していた。高3に上がる時に初めてトップチームのキャンプや練習に参加させてもらった中で、プロの世界を知ると同時に、J2の環境の厳しさも知った。それでもプロになりたいと思ったんだけど、結局トップチームに昇格できなかった。
あと、高3の時のチーム状況が壊滅的で、その雰囲気を変えることができなかった。それがめちゃくちゃ悔しかったけど、自分の無力さを痛感すると同時に、周りの仲間がどういう思いを持ってサッカーをしているかを知ることが大事だと思った。早稲田に練習参加する中で、練習に対する前のめり感や目標に向かっていく雰囲気に惹かれて、尚且つア式だったら本気で日本一を目指せると思った。当時の実力からして試合に出られるとは思っていなかったけど、成長して周りと同じ土俵に立って日本一を成し遂げられたら、こんな幸せなサッカー人生はないと思った。当時は、そこを頑張った先にプロの世界があると思っていたから、ア式を選んで受験をした。

坂本:練習参加をした時に、「早稲田だな」って直感的に感じた。自己推薦という形で早稲田に入ったんだけど、部活に入っていなかったら毎日友達とお酒を飲んで遊んだりする道もあったかもしれない。でも、達成されるものが確実視されることよりも、達成できるものが確実ではないけれど、大きな目標に向かってみんなで進んで成長していくプロセスにやりがいを感じている。そう考えた時に、必然的に体育会という選択になった。

鈴木怜:高2の時は大学でサッカーをしようと思っていなくて、薬学部のある大学に行こうと思っていた。化学が好きだし、高校の受験コースが理系だったから薬学部に行こうと思った。でも、高2の選手権でベスト8に行った時に日本一が少し見えてきたことで、もっと上を目指したいと思ったし、もっとやれるとも思った。自信もついたし、日本一に届きそうだった分日本一に行きたいと思ったから、大学でもサッカーをすることを決めた。だから、プロを目指していたというよりかは、もっと上を目指したいと思ったから大学の体育会を選んだ。
大学で部活でやろうと決めた時に、理系の学部では無理だと思った。理系の学部よりも体育会の方が自分の中で優先順位が上になったから、高3の時は受験科目を国数英に絞った。どこかしらの大学にスポーツ推薦で入れると思っていたんだけど、夏にそれが無理だと分かって受験に切り替えた感じ。


ーー坂本選手・鈴木選手・西前選手は全国大会に出場して活躍していましたが、そんな自分が就活をしている現状をどのように捉えていますか?

坂本:就活することが悪いことだとは思わないし、俺も「サッカーだけをやっていればいい」という思考の人間ではないから、いろいろなものを広く見てみたいと思っていた。自分が小学生の時、21歳・22歳の大学生を見て大人だなって感じていたけど、いざ自分がその年齢になった時に「選挙に行ったことがない」「政治も知らない」ではまずいなと思った。そこから新聞を読むようになったし、サッカー選手である前に人として最低限知っておかないといけないこともあるから、プロ志望だからといって就活することにネガティブな印象は全くなかった。むしろ、新しいことを学んで、それが他のところで点と点で繋がる感覚が好きだから、自分が知らないことを知ることは本当に楽しいんだよね。
逆に、就活をしないでサッカー1本で勝負する人は相当な覚悟があると思うよ。自分がどんなに頑張っても最終的に評価するのは他人であるわけだから、自分だけの力ではどうにもできない中で、プロになれなかった後の選択肢を捨ててまでプロに懸けるのは俺にはできなかった。だから尊敬するし、そういうメンバーが練習の中でチームを引っ張ろうという意識が最近見えているから、覚悟がすごいんだなと感じる。

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鈴木怜:本気でプロを目指す人は正直にかっこいいなと思う。俺は大学でサッカーを辞める選択をしたけど、この先も夢を追いかけて、サッカーで食べていく覚悟があることは本当に尊敬している。
かと言って、自分が就活をしていることに劣等感を抱いていることはなくて、人それぞれ全力で取り組むことができるものがあれば、それはどういう形であってもいいのかなとは感じている。

西前:俺は素直に悔しい。プロを目指せなかったことが自分の人生にとってひとつの敗北だと思っているから、その土俵にまだ乗れている選手は、就活してようがしてまいがものすごく羨ましい。その一方で、中高6年間ずっとライバルだと思っていた同期がゼルビアに戻ることが内定したんだけど、それは心の底から嬉しかった。高卒の段階だったらこの気持ちには絶対になれなかったと思っていて、それは大学に入っていろいろな角度からサッカーを見ることができて、サッカーの道で生きていくのが”選手として”だけではないと思えたことが大きいと思う。今思うのは、ア式の同期でプロになれる可能性がある人間は全力でプロを目指してほしいし、プロになってJ1で活躍してほしい。自分のひとつの夢として、サッカー界に携わりたいという思いがあるから、どのような切り口で関われるかは分からないけど、いつの日か日本代表の試合で選手側と運営側という立場で仕事として接点を持てたら最高だね。



○世の中的に見た、早稲田大学ア式蹴球部の価値

ーー就活を通して世の中のいろいろな人やものを見てきたと思います。その中で感じた、社会に出た時に生きそうなア式の良さや強みはありましたか?
例えば、ア式を経た新卒社会人1年目の自分と、ア式に入らずに迎える新卒社会人1年目の自分にはどのような違いがあると思いますか?

坂本:早稲田はスポーツ推薦の枠が他の大学よりも少ない中で、俺は他の大学からの推薦も断って、受かるかどうか分からないけど小論文の勉強をしてまでして早稲田に入ってきている。だから、単純に負けず嫌いで努力する人が多い。高校まで自分のことを他の人よりも努力するタイプだと思っていたけど、大学に来たらそれ以上に努力している同期がたくさんいて、それに刺激をもらって「もっとやらないといけないな」と思うようになった。
あと、良い意味で変人が多い。自分の意見を持っていて面白い人がたくさんいる。同じような人間が同期にはいないかな。

西前:同期に出会えたことは自分の人生にとって大きなものになると思う。これまでの人生で、ここまで本気でぶつかり合って本音で議論をして、お互いのことを良くするために弱みを言い合う関係性を大人数で築くことはできなかった。そういう仲間は一生モノだと思うし、これからの人生は良くも悪くも同期のことを意識しながら生きていくことになるんだろうなって思っている。それはア式に来て良かったことだし、自分の人生の財産になると思う。

坂本:「物事の本質を見る」意識はすごく変わった。組織に所属していると継承してきた文化に何も考えずに乗っかっちゃうんだけど、「非体育会の人から見たらどう思うんだろう」「J下部組織から来た新1年生はどう見えるんだろう」というのは学年ミーティングで話し合うし、ひとつの事象に対していろいろな角度から考えて多面的な視野で見る能力は、この先社会に出てからも大事になると思う。そういう作業はア式が他の大学よりもやっていることだと思うし、そこは自信を持って言える。

鈴木怜:頑張ることや一生懸命やること、きちんと考えることが素直に評価されるところがア式の良さだと思う。自分の考えを自分の言葉で伝える姿勢をみんなが評価してくれる。高みを目指すことが良いこととして評価されるからこそ、自分もさらに頑張れる。ア式の中で「もっとこういうことをした方がいいんじゃない?」って言えば、それに対して「確かにそう思う」「もっとこうした方がいいんじゃない?」って反応が返ってくる。「いや、お前何言っているの?」みたいに浮いた感じになることがア式だと起こらないし、だからこそ自分が考えていることをちゃんと発信しようという気になれる。そういう文化はいいと思うね。

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西前:自分の本気に対して、周りも本気で乗っかってきてくれる。これは、当たり前のようで当たり前の環境ではない。社会に出ればちっぽけなことだと感じるかもしれないけど、そういう環境は非常に恵まれているんじゃないかな。

小山:俺はア式に来なかったら、将来なりたい自分の姿を見つけることはできなかったと思う。周りにいるのは優秀な選手なのに、自分に全く満足しないで貪欲に成長を目指している。それが1人じゃなくて全員だし、しかもその全員がまとまってチームとして優勝を目指して本気で働きかけている。そこはア式の良いところだし、それが俺にとって大きな刺激になったし、自分の将来やりたいことにも繋がっていると思っている。
高校まではチームの中で重宝されてきたタイプだったけど、ア式に来てからは何も通用しない挫折を味わった。練習試合の時のボードに貼られる自分のネームマグネットはいつも右下(メンバー外)で試合にも全く出られなかったけど、その時に「俺って小さいプライドで生きてきたんだな」「他のメンバーは本当にすごいんだな」って思った。そこからは「絶対に試合に出て、こいつらともっと上を目指したい」「日本一を目指すチームの環境づくりをしたい」と思うようになった。こういう同期がいたからこその考えだし、自分が意外と組織の環境を作り上げることが好きなことに気づいて、それを仕事にしたいと思った。

森本:ア式に来ると「レゾンデートル=存在意義」を問われると思うんだけど、最初は嫌いだったの。チームの中で存在意義を出すために仕事を頑張る、みたいなことはレゾンデートルの本意じゃないから好きじゃなかった。だけど最近その言葉の意味がようやく分かってきた。自分の利益のために頑張ることはあったんだけど、言葉上ではなんとなく分かってはいた”チームのために”という考えが自分の中では実感がなかった。自分の利益を最大化して自分が良い結果を出せば、それが勝手にチームに反映されるとずっと考えていた。だけど、4年生になって同期が「チームのために何ができるか」を考える中で、「自分のために何ができるか」じゃなくて、「自分をどうすることがチームにとって1番良いのか」というふうに考えられるようになった。外池さんが言っていたレゾンデートルってこういうことなのか、と自分の中に落とし込むことができた。ア式という組織で存在意義を問われなかったら、こういう感覚を味わうことはなかったんじゃないかな。

西前:プロになるにしてもならないにしても、ア式にいるんだから、自分の目標をア式と繋げて日々の活動をしてほしいと思う。ここにいられる環境は決して当たり前なことではないから。毎日過ごすだけでは分からなくて、いろいろな人に会って、いかに自分たちが与えてもらっている環境が幸せかを知って、自分たちがこの組織にふさわしい人間になるための努力をしていかないといけない。古賀さんからは自分と向き合い続けることを教わって、外池さんからは存在意義を問い続けることを教わっている。プロになるにしてもビジネスマンになるにしても、そういう毎日を積み上げることが、特に下級生にとっては大事なことなのかな。

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ーー逆に、就活を通して感じた、ア式に足りないことや変えないといけないことはありましたか?

森本:勉強しなさすぎ。世の中に対して何も興味が向いていない。ニュースを見たり新聞を読んだり、本当に簡単なことで良いんだけど、それすらもやらない人が多い。もっと世の中を知った方が良いと思う。
インターンの時に話していることが分からないことが結構あって、その言葉の意味も、どういう時に使う言葉なのかも全く分からなかった。世の中の学生はいろいろなところで接点を持っているから、そこで学んでいることが多いんだと思う。自分たちはサッカーに没頭しているから、逆に周りが見えていないことも多くて。そういう意味で、もっと周りを見ることを意識した方がいいんじゃないかなって思う。

小山:後輩には、「自分がやっていることは正解じゃないかもしれない」ということを常に疑う目線を持ってほしい。ア式でサッカーをやっていることが正解ではないかもしれないし、サークルでサッカーをしている学生が不正解でもない。何をしてもいい4年間を、どうして自分たちはサッカーに捧げているのかを考えた方がいいし、そうじゃない人のことを受け入れる感受性も必要。早稲田大学という多様な人が集う大学にいるんだから、限られた4年間の中で、視野を広げて自分たちと違う学生生活を送っている人と繋がって、それを学びに変えていくことが大切だと思う。だからこそ、自分たちがやっていることを正解だと思い過ぎない。

坂本:プロ志望かどうかは関係なく、「自分からサッカーを取った時に、何でチームや社会に貢献するかを考える4年間」だというのは、就活を通してものすごく感じた。サッカーしかしていないから、自分が将来やりたいことがなかなか見つからないんだと思う。それは悪いことではないんだけど、自分からサッカーを取った時に、自分に何が残って、自分のどこが強みで、何でチームにプラスの影響を与えられるのか、を考えることが社会人になる上で必要になると感じた。

鈴木怜:サッカーにしても私生活にしても、常に考えて生きる人とそうじゃない人とで、4年間積み上げた時に大きな差が生まれてしまうとは思うね。

小山:大学生活って、全部が”社会に出る前にどんな準備をするか”なんだよね。ア式もそこは変わらないと思う。その社会はプロでもいいし、ビジネスマンでもいい。

西前:そう考えると、それを伝えることが4年生の使命なんだと思う。下級生の時は考えられなかったけど、今ア式にいるからこそ気付かせてもらったことがあった。それには早く気付いた方がいいんだけど、その場を提供することで下級生を育てて未来のア式を作っていくことが、日本一を目指すことと同じくらい大事なことだと思っている。そういう機会を、自分も主務という役職上で作っていきたいと思っているから、そういう機会を「自分とは何なのか」「自分は本当に何がしたいのか」を考えるきっかけにしてほしいし、その先に部員全員が心の底から喜べる”価値のある日本一”があると思っている。だから、そこに乗っかってほしいと思うし、乗っかってもらえるように自分たちも頑張ります。



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ア式でのかけがえのない経験は自分の人生にとって確かにプラスに働くはずですが、一度ア式の外側に出てしまえば、組織内での常識や自分の立ち位置は何の助けにもなりません。いかにして”ア式”という枠から自分を外し、物事を多角的に見る意識を持つことができるか。それが大切だと改めて感じました。

(インタビュー:林 隆生)

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小山修世(こやましゅうせい)
学年:4年
学部:商学部
前所属チーム:早稲田実業学校高等部
坂本寛之(さかもとひろゆき)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:横浜F・マリノスユース
鈴木怜(すずきれい)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:駒澤大学高校
西前一輝(にしまえかずき)
学年:4年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:FC町田ゼルビアユース
森本貴裕(もりもとたかひろ)
学年:4年
学部:教育学部
前所属チーム:埼玉県立浦和東高校

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