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「やっぱり、私はJリーグで働きたい」 2年・菊地彩花

高校2年生の夏、アメリカ留学から帰国した。

夢に一歩近づいたと思った。


早稲田大学政治経済学部に合格した。

また、夢に一歩近づいたと思った。


ア式蹴球部に入部した。

またまた、夢に一歩近づいたと思った。




「Jリーグのフロントになること。」



11歳、鹿島スタジアムでエスコートキッズをしたとき、選手目線で見たスタジアムの光景が鮮烈だった。


人気チーム・浦和レッズとの試合ということもあり、観客席は2色の赤い服を着た人で埋め尽くされて、スタンド全体がタオルを掲げて謳っていた。なぜかサポーターひとりひとりの顔が鮮明に見えて、試合に心躍らせる笑顔、絶対に勝たせるという意思が伺える表情、老若男女関係なくスタジアムが一体となっている姿が一面に見渡せた。


何度も訪れていたスタジアム。

でも緑の芝の上に立ったら、いつもの景色が全然違って見えた。

グラウンドを照らすライトが凄く眩しく感じて、
初めて、本当の意味での「感動」を覚えた。



勝利の笛が鳴った瞬間、
ゴーッというように熱気を増すスタジアム。

知らない人とも肩を組んで、
日々の出来事なんか忘れて、
ただその一瞬一秒を楽しめる非日常空間。




私がやりたいこと、

"あの光景"をつくること。


そして、

そこで感じる衝撃を、心躍る感覚を、

たくさんの人に感じてもらうこと。


私が大好きなサッカーというものを

興味がないと言う誰かにも

好きになってもらうこと。

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部屋に飾ってあるエスコートキッズ時の写真




『サッカー界で働きたい。』




どうやったら夢を叶えられるのか。


小さい頃にサッカーを始めたが、サッカーをする人の中で"女子"という存在は特異なことを実感していた。「サッカーをしています。」と誰かに言う度に、「女の子でサッカーなんて珍しいね。」と言われた。


だからなのか、"女性がサッカー界で働くこと"は難しいというイメージがあった。実際、私が訪れた色んなスタジアムで見るスタッフは基本男性だったし、その方がやりやすい部分もあるということも納得できる。

もしそうであるなら、

そのディスアドバンテージを超える何かを。



自分を構成する何らかの要素たちに磨きをかけなきゃいけない。性別で区別することが頭に浮かばないくらいに、他を圧倒しなきゃいけない。


"サッカー界"、広く言えばスポーツ界という環境において、何が武器になるのかは正直わからなかった。だからこそ、武器になり得るものをなるべくたくさん用意して、振り返って「これをやっておけば良かった」と後悔しないようにしていこうと決めた。

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そんな自分にとって、
ターニングポイントというか、今の自分から見て重要な武器となるかもしれない3つのことを紹介したい。



1つがアメリカへの留学。


日本でなんとなく過ごして、いつも通り勉強して、サッカーして、遊んで。そこに価値がない訳じゃない。何に価値を見出すかは人それぞれだし、日常の中で何かヒントを見つけて自身を成長させられる人だっている。


でも私はそれじゃダメだと思った。

「高校の時、サッカー強豪校でスタメンで出ていました」そんな人と自分を比べた時、私は確実に劣っていた。私のレベルで「サッカーを頑張っていました」は、特に印象にも残らない。


アメリカへ行き、語学力を磨く。
異国の地に単身で身を置くことで人間的にも強くなれる。


きっと私の武器になる。

中学3年生、15歳の時の決断だった。


母国語が通じない見ず知らずの場所で1年間暮らすことは、当たり前だけど順風満帆にはいかなかった。言いたいことを上手く言い表せないもどかしさや、日々のカルチャーショックの連続。居場所がないなって感じることが何度もあった。


その架け橋になってくれたのが「サッカー」という共通"言語"。女子サッカーの本場であるアメリカ(それもアメリカへ行くと決めたひとつの要因であったが)。グラウンドで一緒にボールを蹴る、試合で勝利の喜びを一緒に分かち合う。それだけで今まで崩せなかった壁が、いとも簡単に壊れていった。

チームではキャプテンを任せてもらい、リーグ初優勝を果たすことができた。優勝を決める笛が鳴った瞬間に私のもとに駆け寄ってくれるチームメイトの笑顔は一生忘れらない光景である。


"サッカー"というものの新たな可能性を、芯から感じられたような気がした。これを実体験できたのも、ある意味自分の武器になったと思う。

同時に、
自分の夢に少し自信が持てた。

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2つ目は早稲田大学への入学。
そして、政治経済学部にいくこと。


サッカー界に"学歴"は必要なのか。

答えはきっとNoに近いと思う。
これはほぼ私の偏見だし、実質どうなのかはわからないが。


今の時代、サッカー界で働きたい人はたくさんいるし、その中には強豪校出身の人とか、スポーツ専門学校に行っている人とか、私より"サッカー"を深く知っている人がほとんどかもしれない。

その熱量やサッカーへの想いを持った人と並んで、同じような路線を歩けば、たぶん勝ち目がない。


だからこそ早稲田大学政治経済学部を目指した。

「早稲田政経からサッカー界に就職する」
聞いたことはない。あまり前例はないかもしれない。


でも、それがインパクトになると思ったし、話を聞いてもらえるきっかけになればいいなと考えていた。
実際、「将来何したいの?」と聞かれたときに「サッカー界で働きたい」と答えると、驚かれることがほとんどなので意外性はあるのかなと思う。


また、サッカー界は"スポーツ界"の一部である一方で、その外側の世界とも密接に関係している。例えば、スポンサー企業、メディア、教育界など幅広い分野と繋がり、"スポーツ"というものだけでは完結しない。

サッカー界でなくとも、他の色んなフィールドで、「早稲田政経」というワードはある程度の影響はあるはず(?)ということ踏まえれば、それまで頑張ってきた勉強を活かすチャンスになるかなと思った。先にも述べたが、武器になりそうなものは手にしておく他ない。




ここまでの流れで、「ずっと早稲田に行きたくて受験勉強してました!」感が出てしまっているが、実際に早稲田に行くと決断したのはすべての合否が出た後。
前述したことを考えてはいたものの、最後までK大経済学部と迷っていた。もしかしたら私が先ほどまで早稲田早稲田言っていたものが、長年のライバル校の名前になっていたかもしれない。


決め手は何だったのか。

それが「ア式蹴球部に入ること」であった。



これは3つ目としてこの後紹介したい。
「このブログ長いな」と思った方、もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。
ちなみに理由の8割は「ア式に入ること」だったが、2割は「政経校舎がすごい綺麗だった」からである。みなさんもぜひ3号館へ。



3つ目、
ア式蹴球部に入ること。


大学でサッカー部のマネージャーをする。Jクラブで働くために、大学生の期間にできることで思いついたのがこれだった。大学サッカーのマネージャーはチームマネジメント、広報、外部との連絡など業務が多岐に渡り、将来に活かせることがかなり多いのでは、と考えた結果だ。

「"早稲田大学ア式蹴球部"でマネージャーをする」


何をするにしても、「どこで」はとても重要だと思う。
マネージャーをすると決めても、大学によって仕事や役割だったりがかなり違っている。(ア式や学連の活動の中でそれを今強く実感しています。)


だから、大学を選ぶ(早稲田かK大か)となって、本格的にマネージャーについて調べた。両校のホームページ、SNS、早慶戦のマネージャーへの取材の記事。何日間かかけて相当なリサーチをした。知り合いにK大、早稲田のマネージャーさんに繋げてもらって、直接話を聞いたりもした。


そして、早稲田大学ア式蹴球部を選んだ。


私が入学する前年度、ア式は関東リーグを優勝し、プロ選手を4人も輩出していた。単純にその強さに惹かれたのも大きい。また、自分が元プレーヤーだったこともあり、ピッチの近くにいたいなという思いから、グラウンドでの作業が多いア式に入ろうと決めた。


入部してからの話は、更に長くなってしまうので割愛する。別の機会があれば、そこで話せたらいいなと思う。一言で言えば、「何だこの組織」でした。

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そんなこんなで今に至る。
選手歴15年、マネージャー歴1年7ヶ月。



前提を覆すようだが、
このブログの冒頭に書いた通り、
私がこれまで挑戦してきた結果としては

「夢に近づいたと"思った"」だけである。



英語が得意になった。
注目してもらえる学歴を得た。
ア式でマネージャーの経験を積んだ。



でも、

それらが本当に私の武器となり得るのか、
夢に近づく一歩となったのか、

正直分からない。


今まで自分が歩いてきた道が、
あの時の決断が、

果たして正解だったと言えるのか
不安になることも多い。


周りから「難しいんじゃない?」「せっかく早稲田に行ったのになんでサッカー?」と否定されることもあるし、自分自身も現実の厳しさと対面して将来から逃げたくなる時もある。


でも結局、

サッカーが本当に大好きで、
サッカーで沢山の人の心を動かしたい。

そんな自分に変わりなかった。



だから、


やっぱり私は


Jリーグで働きたい。

そして、あの眩しい光景を生み出したい。



この夢に向かって
この先も進んでいこうと思う。

菊地彩花、これからも頑張ります。

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長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。こんな子もいるんだな、面白いな、なんて思っていただけると嬉しいです。



菊地彩花(きくちあやか)
学年:2年
学部:政治経済学部
出身校:渋谷教育学園幕張高校


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