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【#Real Voice 2023】 「考える葦」 2年・村田新直

「人間は自然のうちで最も弱い葦の一茎にすぎない、だがそれは考える葦である」(パスカル)
最近この一文の意味がようやく分かるようになってきた。




私は先月、6年ぶり2度目の顔面陥没骨折をした。
あの日は最悪な1日であった。
9時からAチームの練習に参加し、15時からBチームの練習試合に出場するという鬼畜なスケジュール。自転車で東伏見グラウンドに向かっている途中で突然のゲリラ豪雨。何とかモチベーションを保ち出場した練習試合、開始5分で顔面骨折。唯一良かったことがあるとすれば阪神が勝利したことぐらいである。

翌朝、洗面器に向かって吐いた血を見ながらこんな疑問を抱いた、
「なんで人生で2回も顔面骨折しないといけないんだろう」

様々な思考を巡らせ1日中考えたが、答えは簡単だった。
サッカーをしているからである。
サッカーをしている以上怪我は付き物である。そんなことは百も承知でこれまで続けてきた。しかし実際に怪我をするとどうしてもネガティブになってしまう。
石井(2年・石井玲於奈/FC東京U-18)ほどではないが。


そしてまたこんな疑問を抱いた、
「なんで大学生にもなってサッカーしてんだろう」

今まで莫大な時間を割き、大怪我をするリスクを負ってまでなぜサッカーを続けてきたのであろうか。サッカーのどこにそれ以上の価値が存在するのだろうか。
高校まではこんな疑問を持つことはなく、ただ何となくサッカーを続けてきた。しかし大学生になり、様々な世界が見えるようになった。今まで一緒にサッカーをやってきた人たちの半分以上はサッカーから離れ、サークルや仕事など別の世界を楽しんでいる。そんな人たちを羨ましく思うことも多々ある。実際、私もア式蹴球部に来る前は雀友会とかいう早稲田の麻雀サークルにでも入って毎日授業が終わったら高田馬場の雀荘で他愛もない話をしながら麻雀をする大学生活に憧れを抱いていた。
しかし今はア式蹴球部の部員としてブログを書いている。なぜだろうか。


ひとつの答えに辿り着いた。


「新たな景色を見たいから」


もちろん雀友会でも今まで見たこともない新たな景色を見ることができるだろう。しかし私は今まで十数年間積み上げてきたサッカーという世界でもっと高い景色が見たい。

Mr. Childrenの終わりなき旅という曲にこんな歌詞がある。

「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんな」


ア式に来て1年半程度経つがすでに様々な景色を見ることが出来ている。しかしもっともっと高い壁を登り、その先の景色を見てみたい。その景色を見るために今もサッカーを続けているのだと思う。




このように私は怪我をしてア式の活動から離れている間、数多くの疑問を抱くようになった。今まで物事に対して深く考えることはあまり無かったが、一度自分を取り巻く環境から離れ自分を客観視することによって様々な疑問が浮かびあがってきた。そしてその疑問について深く考え、それに対する答えを導き出す。このサイクルによって自分という存在がどのようなものでどのような思考をしているのか理解を深めることが出来た。

なんで負けてしまったんだろう
なんであんなミスをしてしまったんだろう
なんであそこであのプレーを選択してしまったんだろう

人生は些細な疑問の連続である。
パスカルが言うように、人間は自ら「考える」ことができる。人間にのみ与えられたその力を無駄にせず、浮かんでくる疑問に対して自分の頭で考える。もちろん、自分の考えた答えが正しいかどうかはわからないし、思考には時間も労力もかかる。しかし、自ら考えて導き出したその答えこそが「自分そのもの」を表しているのである。自分が自分らしくあるためにこれからも「考える」ことを続けたい。



◇村田新直(むらたにいす)◇
学年:2年
学部:商学部
前所属チーム:國學院大學久我山高校


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