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【#Real Voice】 「やまない雨はない」 2年・富永東吾

「やまない雨はない」
 
 
この言葉に支えられたシーズンだったなと感じます。
「ア式」にきて、まもなく2年が経過しようとしています。今シーズンの半分以上怪我をしていましたが、そこで感じたことがたくさんありました。「こんなこと考えてたのかよ」とチームメイトに思われるのも恥ずかしいですが、自分なりに綴ってみようと思います。
 
 
 
チームが始動して早々に私は怪我をした。今年はトップチームの試合に絡みたいと思っていただけに、始動早々に怪我をした自分は、ついてないなと思った。この怪我は長く、3月から2ヶ月間サッカーから離れることになった。サッカーができないことにストレスを感じる日々であったが、週末にはビデオ係や公式戦のボールボーイなど怪我人としての大変な仕事があった。5月になり復帰するとすぐに怪我が再発し、3ヶ月サッカーができなくなった。
 
 
絶望した。
 
 
またあの生活が始まるのかと思うとイライラした。サッカーができずに外からサッカーしている姿を眺めることは辛かった。グラウンドに行くのも嫌になった。でもこのストレスをぶつける場所もなく、自分なりに感情を押し殺していた。この期間で私は今まで自分のことしか考えずにサッカーをしてきたことを痛感した。怪我をする前の私は、「自分のサッカー」にしか興味がなかった。自分のプレーや結果にばかりこだわり、自分以外のことには、ほとんど興味を持てなかった。同じポジションの人が得点を取れば、チームが勝っていても、素直に喜べず、心のどこかで、「やばいな」と思う気持ちも小さい頃からずっとある。
 
 
そんな自分からサッカーがなくなり、チームのためという日常に変わったとき、大きな壁にぶち当たった。振り返ると大学生活が始まってから、大きな充実感を与えてくれたのはサッカーだった。大学の授業も、少しある対面授業とオンラインやリアルタイムの授業がほとんどで、想像していた大学生活とは、かけ離れている。飲食店の短縮営業やマスクを着用しての生活が私たちの当たり前になり、コロナとの共生を受け入れて生活しているが、心のどこかで「もどかしさ」や「息苦しさ」を感じたりもする。だからこそ、このようなご時世でも、サッカーをできることに喜びを感じていた。むしろ怪我をして、サッカーができないことの喪失感は、とても大きいものであった。

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しかしこの半年間、自分の弱い部分とたくさん向き合った。多くのチームメイトが怪我中の自分を気にかけてくれたからこそ向き合えたと思っている。チームや学年に目を向ける回数が必然的に増え、客観的に物事を見たり、小さなミスや変化に気づく回数も増えた。
人は楽しいものや自分の欲を満たしてくれるものに対してお金を払ったり、時間を割いて、幸福を感じる。苦しいことや辛いことに対して、自発的にお金を払ったり、時間を割くことはあまりしないのではないか。だからこそ、この半年間の辛かった経験は、自分自身にとって何にも変えられないものだと感じる。
 
 
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怪我中にサッカーについて客観的に考える時間が増えた。
私は友達と会うと、「大学でもサッカー続けて偉いね」「週6部活なんて俺じゃできないわ、頑張れよ」と声をかけてもらう。素直に嬉しいし、頑張ろうと思える。でも「ア式」でサッカーをすることだけが人生の「正解」でもないし、偉いわけでもない。サッカーを続ける上での1つの選択肢である。
大学のサークルでサッカーを続けたり、社会人チームでサッカーを続けたり、海外に留学してサッカーを続けたり、色々な方法でサッカーを続ける仲間がいる。それぞれに良さがあり、もしかしたらそれぞれに悪い部分があるかもしれない。サッカーをしている目的やゴールも異なるし、社会的な優劣がつくものでもない。
 
 
しかし「ア式」にきて、そして「大学生」になって、1つ確信した。「サッカーを通じて、今まで気づけなかった価値に気づけるようになった」ことを。それは「サッカー」と「社会」を分けて考えず、社会の縮図として考えることだ。今年のア式が重視している「熱量」「感受性」「礼儀」は、「パス」や「ドリブル」、「シュート」などのスキルとは違うが、全てサッカーを通じて学ぶべきものである。「サッカー」を「社会」と切り離して考えるなら、技術的な部分のみ大切にすれば良いのかもしれないが、私はそうではないということを確信した。

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どうして「ア式」に自分はいるのか。「ア式」を通じてどのような自分になりたいか。今の自分と理想の自分をどこまで近づけられるか。はっきりとした答えは出ないが、自分自身に問い続ける日々を過ごしている。正解のない自分の人生で、必死に考え、その答えを自分自身に証明したい。
 
 
 
そして現在復帰をして2ヶ月になる。ベストコンディションにはまだ遠いが、怪我が続き、諦めそうになったり、心が折れそうになったりしたこともあったけど、今私はサッカーができる喜びを感じることができている。どんなに辛くても諦めなければ、いいことが起きる。
 
 
 
----やまない雨はないし、明けない夜もない。----

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富永東吾(とみながとうご)
学年:2年
学部:社会科学部
前所属チーム:早稲田大学本庄高等学院


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