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【宇宙ビジネス最新動向解説】ITハードウェア産業における中国の台頭。衛星通信とも密接に関わる、地上モバイル通信機器市場の最新業界分析!!【ワープスペースCSOが語る: Mobile World Congress 2024 前編】

 衛星光通信の提供を目指すワープスペースは総務省による2023年度のSBIR推進プログラムに、衛星光通信ネットワークにおける互換性および相互運用性を持つ光通信モデム及びルータの開発の案件が採択されております(*1)。宇宙機器開発全般の傾向として、地上でも用いられている民生品の転用(商用オフザシェルフ:COTS)が重要です。そうした背景を踏まえ、地上の通信機器の動向を把握するため、ワープスペースCSOの森は2月28日〜29日に、バルセロナにて開催される、携帯電話をはじめとする地上のモバイル通信に関する世界最大級のイベント「MWC(Mobile World Congress)」に参加しました。
(*1 【ワープスペース】ワープスペース、2023年度のNEDOの研究開発型スタートアップ支援事業「SBIR推進プログラム」に採択)

 前編である本稿では現地参加したワープスペースCSOの森へのインタビューを基に、移動モバイル機器市場の最新動向について解説します。
 後編の記事はこちら

 移動通信機器の市場はとても巨大であり、参加者は10万人を超える規模でした。会場にはHUAWEIやSAMSUMG、Qualcommといったモバイル通信技術関連企業に加え、IBMといったグローバルIT企業やintel等の半導体ベンダーなどがそれぞれ巨大なブースを展開していました。
MVCにて出展されていたブース。(左上)HUAWEI、(右上)SAMSUNG、(左下)IBM、(右下)intel。中でもHUAWEIのブースが特に巨大であった。

 昨年以前もMVCに参加していた森は、開口一番、

中国の台頭が印象的でした。

と口にしています。その変化を顕著に表すものが各企業のブース展示です。各企業はブースの面積や展示の規模等で企業の威容を競っています。昨年まではMicrosoft社等の米国企業が最も目立っていたのに対して、今年のブース展示の一番の目玉は、中国のHUAWEI社であったと述べます。

 その上、企業ブースのあり方も昨年から変化があったようです。MWCで主役となる半導体産業には米中はいずれも国策として取り組んでいます。半導体は国家の通信インフラの基盤であるだけでなく、半導体製品を全世界に輸出し、各国の通信インフラ市場を掌握するという観点でも非常に重要な産業です。そのため、昨年のMWC以降、米中双方がお互いに情報を漏出させないことに注力している傾向があると森は語ります。一部の企業のブースは仕切りによって囲まれ、ブース内部が外から見えないようになっており、入口の受付から予約をしてブースを見学する必要がありました。。

 しかし今年は、全体的にその傾向が若干緩和されたものの、中国企業の方が米国企業よりもブースが閉じている割合が高かったと森は語ります。その理由について森は、

詳細な理由は不明ですが、一般的な感覚に従えば、「デキる組織ほど隠す、デキない組織ほど全部出す。このような変化は、米国企業に対する中国企業の自信の表れである可能性も見逃せません。

と考察しています。連日のニュースでは中国のマクロ経済での失速が報道されますが、ITハードウェア全般のカンファレンスでは、例年存在感を増しています。安全保障の観点からも、今後の中国の動向から目が離せません。

(執筆:中澤淳一郎)

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