文化としてのゴジラ考察。ただの怪獣映画にとどまらない理由
「ゴジラ」と聞いて、何を思い浮かべますか?黒いトゲトゲした背びれ、独特な鳴き声、象徴的なBGM......高層ビルくらい大きな怪獣の姿をありありと思い浮べられると思います。
ですがゴジラのイメージは思い浮かんでいても、ゴジラ映画を観たことがない方も多いのではないでしょうか。
ゴジラ映画はなんと、その数36作品。これだけの作品が生まれた理由は、愛されているからにほかなりません。
どデカイ図体に秘めた人間への警告と、人間の罪深さを描いた重いテーマ。「俺の考える最強のゴジラ」を作り上げ、世に送り出していくクリエイターたち。
ゴジラシリーズが長年愛され続けている理由は“こすればこするほど出てくるエモさ”にあります。
ただの“怪獣大暴れ映画”ではない
海から上陸するゴジラ。建物を潰し、電線を千切って街を破壊していく。口からビームを吐いて、一瞬で大損害を与える......。映画を見たことがなくても、その暴れる光景が目に浮かびますよね。
暴れる光景だけを切り取ると「悪い怪獣が人間を襲った」という話のように見えます。
ゴジラが暴れる理由はもっと闇が深いんです。
ゴジラという怪獣はなぜ生まれたのか。それは人間の水爆実験や核廃棄が原因です。わたしたち人間の核兵器がゴジラを生み出したのです。光に対して攻撃的になる習性を持つゴジラは、何度も陸に上がってきては、あらゆるものを壊していきます。人間たちは「ゴジラを倒すこと」を選び、核以上の武器を探す...
こんなふうに「人間の罪深さ」を描いている作品がゴジラなんです......!
戦後たった9年で作られた反核のメッセージ
最初のゴジラ映画は終戦からわずか9年後に生まれました。ゴジラの上陸シーンは空襲のように描かれました。病院に怪我人が集まり、その辺の女性たちが手当てに駆り出される。「また疎開か。せっかくナガサキから生き延びたのに」と露骨に原爆を想起させるセリフ。
戦争の傷跡を生々しく引きずったまま、反戦・反核のメッセージが強いゴジラ作品を世に出したのです。
現代なら不謹慎だ!という感想が出てきてもおかしくないくらいに直接的な描写をやってのけて、戦争をタブー視せず、怪獣の存在を通して強いメッセージを打ち出しました。
この「アツさ」が人々の胸に響いたのではないでしょうか。
ちなみに2015年に公開された「シン・ゴジラ」でのゴジラ上陸シーンでは、東日本大震災を想起させるような被害が出ます。船が陸まで飛ばされ、上陸後の放射線量に怯える人々。作業服で記者会見をする総理大臣。災害時にテレビの外枠に出ていた、被害と避難の情報。
ゴジラは戦時・震災のつらい痛みと向き合い、「これからどうするか」を考えて乗り越えようとする人間たちの姿を見ることができる作品です。
クリエイターたちが腕によりをかけた「俺たちのゴジラ」
ひとくちにゴジラと言っても、いろんなゴジラがいることをご存知ですか?例えば、2010年代のゴジラは4作品にものぼります。
この4作品、実はシリーズものではありません。いわゆる別の「世界線」の話です。それもそのはず。海外・アニメ・特撮など、それぞれのクリエイターたちが自分たちの設定でリメイクしたゴジラ作品なのです。
2010年以前も、「昭和ゴジラ」「平成ゴジラ」「ハリウッドゴジラ」「ミレニアムシリーズ」とラインナップされています。これらのゴジラ作品も話のつながりはありません。
各時代のクリエイターたちが個性を出しながら作り上げた、オリジナルの世界観のゴジラが描かれているのです。この味わい深さとも言えるシリーズごとの違いが、ゴジラを見続ける人が多い理由になっているんです。
「知ってる人」が一番ニヤつく。オマージュだらけのゴジラシリーズ
ゴジラファンには、ほぼ全てのシリーズを観ている方も多いです。
「へえ、熱狂的なファンが多いんだなあ」
と思うところですが、あなたも一度映画を観ると他のシリーズが気になってきてしまうかもしれません。ゴジラシリーズには「全部を見たくなるシカケ」が隠されているのです。
例えば、ゴジラシリーズには必ず出てくる「芹沢博士」という研究者がいます。昭和のゴジラにも、平成のゴジラにも、もちろん、ハリウッドのゴジラにも。何を研究しているかはシリーズによって違うものの、物語のキーワードになる重要な部分で「芹沢博士」が必ず登場します。
他にもハリウッドのゴジラの名シーンがアニメのゴジラでオマージュされていたり、初代のゴジラに使われた武器が別のシリーズでも使われていたり......。
知らなくても面白いけれど、知っていた方が断然面白い。オタクになればなるほど面白くなる“やり込み要素”がゴジラにはあるんです。
ようこそ、ゴジラの世界へ。おすすめゴジラ映画3選
ゴジラ作品、気になってきましたか?
とはいっても、冒頭で述べた通り、ゴジラ映画は36作品にものぼります。どれから見るのがいいか、迷ってしまいますよね。ここからは筆者が厳選したおすすめのゴジラ映画作品を3つお伝えしていきます。
①豪華俳優のチョイ役が楽しめる!「シン・ゴジラ」
まずおすすめは、2014年に庵野秀明監督がメガホンを取った作品、「シン・ゴジラ」。
エキストラじゃないの?というちょっとした役に、前田敦子や片桐はいりなど、「知ってるー!」という芸能人が多数出演しています。
エヴァンゲリヲンシリーズを制作した庵野監督の作品ということもあって、極太明朝体の字幕、作戦実行時の聞き覚えのあるBGMなど、ファンがニヤリとする演出も多いです。
もちろんストーリーも一級品ですが、ゴジラに親しみがない方にも楽しんで観てもらえる作品です。
②これでゴジラに惚れました。ひたすらカッコイイ「キングオブモンスターズ」
こちらは海外のゴジラシリーズ。「モンスターバース」というシリーズの3作目にあたります。ですが、最初の2作を観ていなくても十分楽しめます。
この映画の見どころは、怪獣が大集合する大盤振る舞い具合。ゴジラの他に、「キングギドラ」「ラドン」「キングコング」など、一度は耳にしたことがある怪獣たちが王者の座を争います。
そして、とにかくゴジラがカッコいいのです。
モンスターバースシリーズのゴジラは、表情が人間的。そしてかなりイケメンです。また、今回のゴジラは人間の味方。宇宙からの侵略者キングギドラと死闘を繰り返します。
ゴジラの恐ろしいほどの頼もしさ、ぜひ見届けてください。
③SF要素満載。人間が地球を追われた世界を描く「GODZILLA 怪獣惑星」
最後はアニメーション映画です。このゴジラは「魔法少女まどかマギカ」の脚本家である虚淵玄氏が脚本を担当しています。虚淵氏の得意とする、圧倒的な絶望感を表現する作品です。
物語の始まりから衝撃的で、人間はゴジラから逃げることを選び、地球を捨てて宇宙を漂流しているところから始まります。そして漂流をするにもあらゆる資源の限界が近づき、地球に戻る決心をする人間たち。
しかし戻った地球ではすでに2万年近くが経過していて、姿がまるっきり変わってしまっていた......そんな思い切ったストーリーです。
絶望的な強さのゴジラを味わってください。
ゴジラはカルチャー。
ここまで、ゴジラの魅力とおすすめの作品についてお話してきました。
まとめると、
という魅力があります。
おすすめの作品は
の3つです。
ゴジラは1954年から愛されていきた作品で、クリエイターの魅力と過去シリーズのオマージュがより愛される理由です。これからは、どんなクリエイターが新たなゴジラを作っていくか、いちファンとして待ち遠しくて仕方ありません。
あなたもゴジラというカルチャーを追いかけてみませんか?
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