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私的アンサンブル論(ポップス歌ものバンド編1 リズム)

普段何を考えて演奏しているのか人それぞれだと思うが、個人的に気をつけていることを記していく。(ポップス歌ものバンド編)とあるが、他に何を書くかはまだ決めていない笑
ここでいうバンドは、ボーカル、ドラム、ベース、ギター、キーボードの編成とする。

現在私の仕事の大部分を占めるポップスの歌ものだが、テクニカルな部分ではそこまで高度なことを求められないが、アンサンブル的には高度なバランス感覚とセンスが求められる。いくつかの観点から分析する。第一回目はリズムについて。

私がポップスで一番大切にしているのはリズムである。リズムと一言で言っても色々な要素がある。タイミング、アクセント、アタックスピード、切るタイミング、切りぎわの処理…などなど

タイミング

基礎中の基礎として、クリック(メトロノーム)にぴったり合うタイミングで弾くことがとても重要。でもこれが出来ない人は結構いる笑。表拍だけ合っているのでは全く不十分で裏拍はもちろん、少なくとも16分音符単位でぴったり合わせて弾けるようにならないとダメ(少なくともそのつもりで!)。ただ運指的に難しいフレーズはこの限りではない。(そもそも基礎というのはあくまで基礎であって、それを死守すればいいというものでも無い。だが無視もしない。人は白黒はっきりつけたがるが、実際は無段階のグラデーションだ。)
クリックを裏拍にしてやる練習は有効。もっと鍛えたい人は16分音符単位でずらしてもいい。正確に弾けるようになって初めて、次の段階に進める。

アンサンブルにおけるタイミング

アンサンブルにおけるタイミングとは各々がしっかりとした基準を持ちつつ、そのメンバーたちの中のどの場所に自分を置くべきかを感じとり、それを実践する事である。
基準となるのはドラムだ。なぜなら音量も大きく音色も鋭いので、ビートの支配力がとても強いからである。どんなに自分のビートの感覚がそのドラマーとズレていても、ドラマーに合わせるのが基本だ。そして大切なのは「どう」合わせるかだ。合わせるというと「点」で合わせがちだが、それではいつまで経っても合わない。もっと長い流れを感じて合わせると合いやすい。まずは1小節。次に2小節。4小節、8小節、1セクション、1曲。最終的にはライブ1本!の流れを感じて合わせる。どうしても合わない時には言葉で議論する。ドラマーが何を基準にしているのかを知ると理解できたりする。自分かもしれないし、歌を聴いてるかもしれない。

キーボーディストとしてのタイミング

キーボーディストは歌と2人きりになることが多い。
2人きりの時は基本的にはしっかりテンポをキープして弾くことになるが、信頼関係があればお互いに微妙にテンポやニュアンスを揺らしながら演奏すると情感が溢れた感動的な空間になる。一番大切なのは慌てないメンタル。イントロの最後の音からAメロの入るタイミングとか、キメの後の休符とか、気持ち長めに取るくらいが丁度いい。拍を点で取らずに線で取る、面で取る感じでやると穏やかになれる。
ミスタッチしてもお客さんはそこまで気にしない。それより動揺してテンポが速くなったり不安定になったりする方がよっぽど目立つ。やっぱりリズムが大切なのだ!

アクセント

アクセントもとても大切で、4拍子であれば、基本的に2拍目と4拍目にアクセントがくる。ただこれはあくまでビートの感じ方(ドラムのパターン)であって、必ずしも演奏する時にアクセントが付くわけではない。私は結構感覚で弾くタイプなので理論的な説明はあまり得意でないのだが、確実にパターンは存在する。
いわゆるシンコペーションをしっかり感じることが大事で、裏拍にくる長い音符(もしくは長い休符)には基本的にアクセントをつける。でもそれはフレーズによっても変わってくる。例えば「タタータ」というリズムは基本的には2つ目の音符にアクセントが来るが、一番目の音が一番高い音の場合どうだろうか。
アクセントはフレーズの中の高い音につく事も多く、リズムとフレーズが組み合わさって最終的なアクセントの位置が決まってくる。そして歌はもっと複雑で、そこに言葉が絡んでくる。基本的には言葉優先のアクセントが付くが、サウンド優先のアクセントが付く事も珍しくない。
結局のところいろんな要素が複雑に絡んでアクセントの位置は決まってくるので、いろんな音楽を聴いて自分が心地よく歌えるようなニュアンスで弾くことが大切である。

アタックスピード

アタックスピードはアクセントと密接に関係しているが、ドラム、ギター、ピアノのような音が減衰する楽器については、イメージに頼る所が大きい。鋭く小さい音、丸く大きい音は強く意識しないと出せない。腕の質量をコントロールするイメージだ。弦楽器や管楽器、そして歌はより自由に表現できる。

音を切るタイミング、そして切り方

音を出すタイミングと同じくらい大切なのが音を切るタイミング、切り方である。それを意識しているかどうかでリズムの印象が大きく変わる。
ビートのジャストのタイミングで切ることも大切だが、それより難しいのが4分音符や8分音符など(もちろんそれに限らないけども)をどれくらいの長さで刻むのか。
パッと思いついた具体例は、MISIAさんの「つつみ込むように・・・」のイントロやサビのピアノの刻み。この長さのコントロールが非常に難しい。短すぎてもあっさりしちゃうし、長すぎてもノリが失われる。これはこの曲の根底にあるバウンスしたビートを体の芯から感じないと出来ない、音符では表せない長さ、ニュアンスである。
この曲や曲調に限らず、今出している音が最適な長さなのか、常に意識して演奏したい。

まとめ

記事を書き始めた時は、アンサンブルで意識していること全体を1つにまとめようと思っていたが、リズムだけでかなり長くなってしまったので分けることにした。
私は基本的に自信がないのだが、これだけ考えて演奏していることに自信を持ってもいいかもしれない笑。
次回はコード、ハーモニーについて書こうと思う。


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