コント漫才と観客

最近の【コント漫才】の中で、最も有名なのは和牛であろう。
『M-1グランプリ 2017』での《ウエディングプランナー》をテーマにしたネタは次のように始まる。

川西 どうも!和牛と言います。よろしくお願いします。
水田 お願いします。…あの、僕ね、この間テレビ見て思ったんですけど、ウエディングプランナーさんってすごい素敵な仕事やなって。
川西 ウエディングプランナー?まあ、ゆうたら、結婚式にいろんな提案をして、ご夫婦の一生の思い出を作るっていう仕事ですもんね。
水田 ……初めまして。僕が担当のウエディングプランナーです。えー、新婦の、ミユキ様ですね?
川西 ……ミユキ?
水田 新郎様が忙しくて来れないみたいですねえ。
川西 ……仕事ばっかりしてるんですう。

挨拶の後にそのネタのテーマを掲げる(ウエディングプランナーは素敵な仕事=ウエディングプランナーをやりたい)、ここまでは【しゃべくり漫才】と同じ流れであるが、この後【コント漫才】では、漫才師2人が何かの役になり寸劇的に会話を進める。
《ウエディングプランナー》のネタの場合、ボケ・水田がウエディングプランナー役(後半は新郎役)、ツッコミ・川西が新婦役として、結婚式の打ち合わせから当日までの流れが漫才として構成されている。

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【コント漫才】内のセリフはボケ⇆ツッコミでやり取りが完結する言葉である。そのため、セリフが観客に向かって投げかけられることはない。漫才師と観客の間には見えない世界の境目が存在しており、観客は漫才師を見ることができるが、漫才師は観客が見えない(という設定)なのである。(ミキの《十八番》をテーマにしたネタでは、ツッコミ・昴生が観客に向かって問いかけるセリフがあるが、【しゃべくり漫才】ではボケ⇆ツッコミまた漫才師⇆観客となる)

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このネタの中で、ウェディングプランナーである水田は非常識的なプランを提案する。【しゃべくり漫才】では、ボケと観客は反対の立場にいると述べたが、これは【コント漫才】でも同様であり、観客は水田の提案する意見に共感することができない。そして、観客は、常識的な意見を持ちながらもなぜか振り回されて続けてしまう新婦役の川西に同情している。

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ネタの中にこのようなセリフがある。

水田「あと、キャンドルサービスなんですけど、やっぱ、ひとつずつテーブル周るのってキツイじゃないですか。」
川西「キツイとか言うたらあかんと思うけど。」
水田「ですから、周らなくてもいいように、持つとこ回してもらったら伸びるようになってますんで。」
川西「なにそれ、なにそれ、なにそれ。なによ、その便利グッズみたいなやつ。いや、そんなふざけたやついらないんです。」

水田の「持つとこ回してもらったら伸びるようになってますんで。」という説明に、川西が「なによ、その便利グッズみたいなやつ。」とイメージの情報を補足的に加えることにより、観客は鮮明にその情景を想像することができる。
ミキの【しゃべくり漫才】では、ボケ・亜生の不可解なセリフに対してツッコミ・昴生が補足として解説するということを述べたが、このように【コント漫才】でも同様のことがありうる。

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ここまで【コント漫才】には、
・観客→ツッコミへの同情
・ツッコミ→観客への解説
の2つの要素があると述べた。
『M-1グランプリ 2017』では、和牛以外にもゆにばーす、とろサーモンの《旅館の女将》のネタが【コント漫才】であった。和牛のネタではこの2つの要素がおおよそ半々で登場するが、とろサーモン、ゆにばーすのネタは、どちらも前者の要素は少なく、ツッコミの発するセリフはほとんどが後者の役割である。


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