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#5 素敵なおにぎり(特別支援学校での話)

特別支援学校(小学部)での話。

今回は、小学5年生のAさん(幼児期の中途障害/知的・身体的ともに中軽度の障害)の話。

特別支援学校では、児童や生徒の嚥下や咀嚼のレベルに合わせて食形態が様々用意されています。学校や提供会社により、呼び方は様々ですが、
大きくは
・普通食/刻み食
・とろみ食
・ムース食
・ゼリー食
といったところです。赤ちゃんが母乳以降に食べ始める順を追うとわかりやすいとされています。

その中でAさんは刻み食ととろみ食の間、柔らかいものは歯を使わずになんとなく口の中で処理できるといったところ。
よーく煮た肉じゃがのジャガイモなら食べられるよ!お肉はちょっと難しいけどね!という感じでしょうか。

給食には食育という意味もあり、行事や食材に合わせて栄養士さんが色々なことを教えてくれます。
この日の給食は学校給食の始まりを学ぶということでおにぎりが出ました。
給食が大好きなAさん。いつものごとく、こちらがAさんの前に座り、スプーンを使って口元に運びます。

そこでふと、以前保護者の方から伺っていた話を思い出しました。

「小さい時(障害を負う前)、おにぎり両手に持って食べるぐらい食いしん坊だったんです。」

なるほど。

今日のメインはおにぎり。
Aさんに提供されているおにぎりは少しお粥に近くはあるものの、ラップに包んで持てるレベルの硬さはありました。
そこで、ラップでおにぎりを包んでみてAさんが持ちやすい様に形を整えて、動きがコントロールしやすい右手に持ってもらいました。
最初は何をさせられてるのかわからず

「??????」

の顔。そりゃそうですよね、ここ数年、基本的には誰かの手を借りてご飯を食べていたのですから。

「Aさん、これはおにぎりだよ。こうして口元に持っていくと食べられるよ。」

と伝え、2〜3口食べてもらうと…

明らかに何かを思い出したかのように少し笑った顔、そして嬉しい時の声を出しながら

今度は自分で口元におにぎりを持っていったのです。

自分の手で
自分の好きなタイミングで
自分の好きな物を食べられる。

どんなに素敵でおいしい瞬間なんだろうと思いました。
もちろんなかなかしっかりと口元にピタリと合わせて持っていくのは難しいので、こちらがタイミングを合わせて微調整はしますが。
それでも本人の嬉しそうな顔にこちらも
「おにぎり おいしいね!うれしいね!」と何度も声をかけました。

給食を残さず全部食べることももちろんいい。
食べられない物を食べられないと伝えることももちろんいい。
好きな物を好きな様に食べられることももちろんいい。

どんな形でも、楽しくおいしく食事が取れるということはとても素敵なことですよね(˶ᐢωᐢ˶)

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