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#4 お餅も経験値(障害者サークルでの話)

知的障害者の方の余暇サークルでの話。

冬の余暇として、1泊2日のスキー旅行に行った時のこと。
※私はボランティアとして初めてこのサークルに入参加しました。

今回はYさん(軽度知的障害)の話。

Yさんは、雪は見たことあるもののスキー場に来るのは初めてでした。そして何より

寒いところがとても苦手

保護者の方からは、『色々な体験をたくさんしてもらいたい』との要望があり今回参加したそうです。

朝、バスに乗るために集合した時から
「寒いね、寒いね」
とホッカイロを両手に持っていました。そしてスキー場に着くと、
「バス降りないよ、寒いね、寒いね」

私もスノーボードという趣味ができるまでは、冬は家から1歩も出たくないと思うほど寒さが苦手だったので、気持ちはよくわかりました。
なんとか話をして、バスから降りてスキー場内へ。
参加者の方々がスキーやスノーボード、そり遊びなど自由に楽しむ中、Yさんはレストハウスの窓から外を眺めるのみ。
それでも、小さな子供たちが雪を投げたり、雪だるまを作ったりする様子をニコニコしながら眺めていました。
あの手この手を使って、外に出てみないかと誘っても笑顔でお断り。保護者の方からの『色々な体験』の要望になかなか応えることが難しいなぁ…と感じていました。

宿にて夕食のあと、参加者でおしるこを作って(湯煎して)、お餅を焼いて食べるというレクがありました。
お餅は少し多めに用意されていて、分けたあとの残りの数個は毎年恒例でじゃんけんで勝った人が食べられるとのこと。
20人弱の参加者全員がこのお餅を賭けた、絶対に負けられない戦いに参加表明。
歓喜と悲哀の声が混ざりながら、
どんどん声が大きくなる
「じゃーんけーんぽん!」

数名の勝者が一際大きい声でお餅のおかわりを喜びました。Yさんもじゃんけんに勝ち残り、満面の笑みでハイタッチをしていました。

焼きあがったお餅が運ばれると、お餅を切って欲しいとのこと。
『1つ目のお餅はそのまま食べてたけどなぁ…食べにくかったのかなぁ?』
と思い、一口サイズほどに切り分けました。
すると、Yさんが箸でお餅を持ち上げ、空になっていた私のお椀に入れたのです。
私は思いもよらない出来事にびっくりしてしまい、
「どうしたの!?」
と聞きました。
Yさんからは
「今日ありがとう。」と。

翌日、バスに乗って帰り、保護者の方に様子を話しました。

・スキー場でバスから頑張って降りたこと
・レストハウスにいて外を眺めたこと
・雪に触ることはできなかったこと
・おしるこのお餅をおかわりできたこと
・そのお餅を私に分けてくれたこと

その他にもなるべく細かく、会話の内容やその時の表情を伝えました。
そして今回、スキー場に行ったのに雪に触れず、事前に申し込んでいたスキーブーツもスキー板も触らずに返却することになってしまい申し訳なかったという話もしました。

すると保護者の方からは
「ありがとうございます。」
の声が。
保護者の方は、バスから降りれず、宿で不貞腐れてそのまま何もせずに次の日帰ってくるだろうと思っていたそうです。それでも万が一を信じて、スキーセットを頼んでいたそうです。
「帰ってきたこの表情を見れば分かりますが、とても楽しかったんだと思います。本人は良い経験になったでしょう。他の人に自分の物をあげる余裕はリラックスしていたからだと思います」と。

『経験する』ということの意味を私はとても狭く考えていたようです。
こうしなきゃ、ああしなきゃと思って声を掛けるよりも、本人にとってはもっと別の大事なことがたくさんあって、その1つ1つがその人を作っていくんだなぁと(˶ᐢωᐢ˶)

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