【ぶんぶくちゃいな】李淼・香港フェニックステレビ東京支局長インタビュー(前編)「東京から伝えた3.11」

中国メディアときいて、直接見聞きすることのできない一般日本人は何を想像するだろうか。中国のメディアにもさまざまな姿勢が存在することは拙著『中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』にも書いた。しかし、そこで敢えて詳しく書かなかったテーマがある。

それが「中国における日本報道」である。敢えてそれを大きく取り上げなかった理由は、日本人にとって常に話題になるテーマであり、一般的なものはある程度日本でも取り上げられ続けてきたからだ。「中国メディア戦争」では中国のメディア関係者の置かれた政治や社会条件をめぐる奮闘を描くことに集中したため、日本についての報道以上の大環境を描こうとした。

だが、一旦中国における日本報道についてを語るならば、絶対に避けて通れない人物がいる。

香港に本拠地を持ちつつ、中国の標準語である「普通話」で世界各地のニュースを報道しているフェニックステレビの当局支局長である李淼(りー・みゃお)さんだ。

中国の東北地方、吉林省出身の李さんは吉林大学で日本語を学び、その後慶応義塾大学に留学した。日本滞在歴はもう20年にもなる。大学時代の同級生と結婚し、日本で家庭も築いており、日本に根ざした報道を続けており、中国在住で中国語でもニュースを見聞きする日本人の多くが「一番的確に日本の現実を報道している」とべたぼめする記者である。

彼女の報道は他の中国メディアが他者である日本人を自分たちと切り離して報道するのに対し、常に日本人コミュニティの一員としての視線を忘れない。そんな彼女に「日本から報道する意義」と「中国と日本のメディア報道」について尋ねてみた。2回に分けて掲載する。

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