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月刊「読んでみましたアジア本」

日本で出版されたアジア関連書籍の感想。時には映画などの書籍以外の表現方法を取り上げます。わたし自身の中華圏での経験も折り込んでご紹介。2018年までメルマガ「ぶんぶくちゃいな」(…
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#新型コロナウイルス

【読んでみましたアジア本】中国ITを支えるのは「モチベーション」だと再確認/山谷剛史『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』(星海社)

一時はほっと気が緩んでいたのに、冬に入ってまた新型コロナウイルス話題が日々のニュースのトップを飾るようになった。専門家が冬に向けてずっと警鐘を鳴らしていたことは知っていたけれど、それでも心のどこかでそれを打ち消してしまいたい気持ちは誰にもあったと思う。

喉元すぎれば熱さ忘れる。

わたしのような凡人の世界ではあいかわらずそれが繰り返されているわけなのだが、それでも新型コロナのビフォー/アフターと

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【読んでみましたアジア本】細やかな感受性と落ち着いた視野が印象的な天才ハッカーの言葉/アイリス・チュウ、鄭仲嵐『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(文藝春秋)

「オードリー・タン」あるいは「唐鳳」という名前を言われても、日本ではまだまだ「だれ?」という人のほうが多いだろう。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大後、広くメディアに取り上げられつつはあるが、それでもその名前はかなり一部の人たちの間で語られているに過ぎない。日本における最大情報拡散ツールである、テレビ局のニュースワイドショーでまだ本格的に取り上げられていないからだ。

でも、だからといって、

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【読んでみましたアジア本】骨太でマッチョ、そして近未来の「公権力」と「私情」を描く:王力雄『セレモニー』

もし、中国を揺るがした感染症騒ぎがでっち上げだったとしたら?――という、今ならなかなかどきっとするようなシチュエーションから始まる政治SF小説。

これがなんと2015年末から中国人作家の手で書き始められた小説で、さらにその時代はどうも2021年を想定していた…という事実に驚くと同時に、すでに昨年4月末に出版されていた本書をこれまで、日本の中国事情関係者が誰一人、話題にしていないというのはなぜなの

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200327 「現代ビジネス」寄稿:中国政府が、コロナ危機で「戦時ハイ」になっていた…その危うさ

日本でも深刻な事態に入って、「欲しがりません、勝つまでは」といった戦時用語を振り回す人が出てきました。でも、この記事を読んでいただければわかるように、現状を安易に戦時ムードに喩えてしまうと、さまざまな解釈が進み、個人の基本的な尊重される権利までが踏みにじられる恐れがあります。

「欲しがりません、勝つまでは」はその最たるものです。欲しがっていいのです、でも近くのスーパーに食材がなければ、我慢するの

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