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【エッセイ】初夏の予感:5月の30度

真昼の光が窓を通り抜け、僕の仕事部屋はまるで熱帯雨林のような温度になっていた。

5月なのに、室温は33度を示している。

コーヒーを淹れる手も、キーボードを叩く指も、焦げつくような暑さに緩慢になる。

まさに初夏の予感を感じさせる一日だ。


朝からの仕事を終え、窓を開けてみると、外からはじわりとした暑さが部屋に入ってくる。

近所の道路の木々は、まるで夏の日差しを浴びて輝いているかのようだ。

僕は椅子から立ち上がり、ほんの少しの間だけでも、この不思議な5月の太陽の下に立つことにした。

外に出ると、空はまだ春の青さを保っていたが、日差しの熱さは明らかに夏を予感させていた。


少し歩いたところの幼稚園の子どもたちはすでに半袖で遊んでおり、その姿を見て、今年の夏ももうすぐそこまで来ていることを実感した。


帰宅後、部屋に戻ると、やはりその暑さは変わらず、エアコンをつけることにした。

僕はエアコンのリモコンを手に取り、一瞬、そのボタンを押すことに躊躇した。

5月にエアコンをつけるなんて、それは少し早すぎるような気がしたからだ。


しかし、暑さは否応なく、僕を現実に引き戻した。


そして、エアコンの冷たい風が部屋を満たすと、僕は一安心した。


この日、僕は自宅での仕事を続けながら、季節の移り変わりを身をもって感じた。

5月という時期に30度を超える気温は、かつてない経験だった。

だが、それはただの異常気象と決めつけるだけではない。

それは初夏の訪れを告げる一つの予兆であり、僕たちが自然と共に生きていることを改めて思い知らされた瞬間でもあった。

僕がテレワークをしている間、外の世界は確実に動いている。

そして、僕は今日、その季節の移り変わりを強く感じた。

それは一日の中での小さな出来事だったが、それが僕の心に深く刻まれた。

5月の30度。

それは暑さを感じながら過ごす、一つの特別な日だった。

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