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【後半】犬5匹、猫5匹の私の家

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 犬猫と共に人生のほとんどを過ごしてきた中である現象に気づいた。それは「ペットの呼び方がいつのまにか元の名前とは変わる」という現象だ。強調しておきたいのだが、あくまで『呼び方』が変わるのであり名前は変わらない。人間でいう名前とあだ名の関係のようなものである。

 例えば、実家にいた茶色のオスのトイプードルの名前は『チョコ』だった。元の飼い主に虐待されてうちに来た可哀想な犬だった。引き取った際も改名はせず、うちの家族は『チョコ』と呼んでいた。しかしいつのまにか呼び方が『マッチョ』になっていた。これを読んだ人は首をかしげているだろう。なぜそうなったか、私の遠い記憶を辿ってみる。
 チョコは母の仕事場で飼われていて、その仕事場の入口のスライドドアは大人の腹の高さより上が透明のガラスで、外から仕事場を覗くことができ、ガラス下は木材だった。仕事中は仕事場でチョコは自由に歩き回っていた。そこに誰かが訪ねてきた気配がするだけで、歩き回っていたチョコはドアに駆け寄り、大人の腹の高さまである窓ガラスから顔が見えるほどにびょんびょんと跳ねた。それを見た母が、すごい体力だ!と感心し、チョコ→マッチョコ→マッチョという変遷を遂げ、チョコはマッチョになったと記憶している。
 彼は去年大雨が過ぎ去り晴れた朝に突然亡くなった。前日も大きな声で吠えていて、マッチョは最期までマッチョだったと母は言っていた。

 現在も実家でのんびり生きているサランという猫も同様である。そいつは『サラン』というのが正式名称だが、今は『ニャロ』と呼ばれている。家族の中でダントツでサランを愛している妹は『ニャロメ』と呼んだりもする。こっちはチョコ→マッチョどころではない。正式な名前は跡形も無く消え去っている。なぜこんなふうになったか?ということも、チョコと同様に説明したかったのだが、ニャロは私が東京に行ってから飼い始めた猫なのでよく彼のことを知らないので説明できない。残念。

 こんなふうに、ペットの呼び方が正式な名前とは変わる現象、これは他の家庭でも同様なのだろうか?私は気になっていた。友達の家のペットについても気にしてみたこともあったが、どうも正式な名前で呼ばれているようだった。まあ、それはわたしという「お客さん」がいるからかもしれないが…。にしても、きっとこういうユニークな現象が起こるのはうちの家族が特殊なのだと思っていた。

 ところが、そうではないかもしれない。つまり、割とよくあることなのではと最近思っている。
 私が昨年結婚して飼い始めた、茶色のメスのトイプードルも呼び方が名前と変わったのだ。
 彼女も保護犬なのでうちに来た時はすでに5歳で大人で、元々のチョコという名前から変えなかった。(世の中の茶色のトイプードルの半分はチョコという名前なんじゃないかと思えてくる。)
 ところが、一緒に暮らし始めて半年も経つとうちのチョコちゃんも、ちよちよ/ちよみ と呼ばれるようになった。夫という、別の家族で育った人間がいればそうならないと思っていたが、そうではなかった。
 チョコちゃんはどういう呼び方をしても来てくれる賢い犬だ。やはり、ペットの呼び方はどの家でも潮の満ち引きのように変わるものなのではないか。
 さらに私は最近、チョコちゃんのことを「ちよち」また新たな呼び方をしてしまう。自分でも理由はわからない。ミステリーである。


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