見出し画像

【前半】犬5匹、猫5匹の私の家

26年間の人生で、20年以上は動物が身近にいる人生を送ってきた。
 私が生まれた時、既に家には元野良犬の2匹の犬がいた。「ワンコ」と「ボロちゃん」という、今思うと変な名前をつけられていた。「ワンコ」に関しては母以外が触ろうもんなら触ろうとした人に噛み付くという、恐ろしい犬だった。
 私が8歳くらいの頃、母が自宅の敷地内でトリミングサロンを始めた。トリミングサロンとは、犬(店によっては猫も)の美容室である。母はその仕事を現在も続けている。


シュナウザーあたりが混ざったミックス犬だった


 そういう仕事をしていると、お客さんから捨て犬や捨て猫の相談をされることが頻繁にあった。さらに母のお客さんだけではなく子供である私の友達までも(当然妹の友達も)なんの悪気もない純粋な心でそういう不遇な犬猫をうちに連れてくることもあった。上手く言えないが、どういった関係の友達であっても、こういうことをされると一概にモヤモヤした。一方で少しだけ得意気な気持ちもなくはなかった気がする。

 母はトリミングの仕事の傍らせっせと連れ込まれた犬猫の里親探しをした。方法は、車がよく通る道の歩道にちょこんと里親募集の看板を置いておくことで、なんだかんだそれによって里親を見つけることができた。当時インターネットはそこまで普及していなかったのと、インターネットを使わない老人が市の大半を占めるような田舎なのでそれで良かった。
 しかし連れ込まれた犬猫の中には成犬成猫もいて、そういう大人の子のもらい手はなかな見つからなかった。世間のペットショップも当然のように仔犬子猫しか扱っていないし、彼らの値段は生まれてから間もないほど高額で、年をくうほど値段は下がる。大人の犬猫の需要は少ない。

 さて、そんなどこにも行けなかった犬猫はうちの家族として迎え入れた。そんなことをしていたらものすごいことになりそうだが、まさにすごいことになっていた。一時期は犬猫でそれぞれ5匹、つまり家族の倍の数動物がいた。動物が苦手な宅急便の人などは絶対に来たくなかった家だろう。私は結構楽しく暮らしていた。今ではありえないが、野放しで飼っていた時期は、犬が学校帰りの私を迎えにきて一緒に帰ったり、ダイエットのために家の周りを走ろうと思った際は、また別の犬を連れ出し、散歩に見せかけてランニングをしたり、また、家族全員が寝静まった冬の夜に、2階の私の部屋の窓に猫が現れて入れてくれと鳴くので、一緒のベッドで眠ったりもした。

 大学から東京に出てから結婚するまでの5、6年間は動物と離れたが、絶対に将来は犬か猫を飼おうと決めていた。東京での一人暮らしは実家にくらべたら恐いくらいに自由で、それはそれで好きだったのだが、やはり多少の寂しさもあったのだろう。動物と人間間独特の、言葉を介さない陽だまりのようなコミュニケーションを渇望していた。
 そして昨年結婚し、夫との新居で念願の犬(トイプードル)を飼い始めた。この犬も例によって、母のお客さんの実家で飼えなくなったと相談をされた犬で、東京の私の新居に来た時は既に5歳だった。彼女はとても人懐っこくて、私と夫と共に毎日起きて、夜になればベッドに潜り込む。幸せである。


この記事が参加している募集

#ペットとの暮らし

18,657件

#眠れない夜に

69,940件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?