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メディア取材を受ける個人に、知っておいてほしいこと

先ほどこんなツイートをしました。最近はインフルエンサーみたいな人が増えているので、そういう個人が取材先として選ばれるケースも出てきています。

でも同時によく聞くようになったのが、

「取材に応じたけど、言っていないことを書かれた!」
「原稿確認もなく掲載された!」
「掲載後に修正をお願いしたら、無言で記事消された!」

みたいな不満の声。SNSで声を上げるのが簡単になったので、メディア側にもすぐに批判が届きます。難しい問題ですが、ある程度は個人の「取材受けリテラシー」を上げることで解決するんじゃないかなと思っています。

私はずっとPRコンサルや広報などをやってきて、過去にアレンジした取材は数百件にものぼります。テレビ番組から零細WEBメディアまで何でもやってきたので、多少は役に立つことが言えるかなーと思い、個人でメディアを取材を受ける人に知っておいてほしいことを書くことにしました。

別に敵でも味方でもないので、怒っているインフルエンサーさんなどに軽く読んでいってもらえればと思います。

はじめに:「取材」とはなんなのか

日常に当たり前のように根付いている「取材」という概念、間違って認識している人がけっこういます。

取材とは、「報道したいことが先にあって、それを裏付ける情報・ネタを集める行為」のことです。

たまに勘違いしている人がいるのですが、編集記事は広告でも宣伝でもありません。あくまで報道であり、ニュースコンテンツです。

ここではWEBメディアに限って話しますが、世の中の情報に敏感な編集者さんたちが、「この切り口で取り上げたいな」と思ったとします。そこにたまたま良い具合にいた「あなた」を見つけて、話を聞きたいと連絡を入れてきます。

当然、自分の思いどおりには報じてもらえません。それは企業も同じです。それでも、少しでも自分たちにとって良い報道になるように、情報の調整役として「広報」が存在しているんです。

社会文脈に合わせて、自分の発信できる情報をどう乗っけていけるのか、試されていると思いましょう。

メディアから問合せが入ったら?

メディアからのファーストコンタクトは、メールやDMだと思います。まずは問合せ内容を確認しますが、大まかに下記2つの段階で話が進みます。

①掲載可否の確認
②対面取材の場合、スケジュール等調整

最初に、そもそもこの内容で取材を受けてくれるかどうか可否の確認。それでOKの返事をしたら、次のステップに進みます。

わかりにくいのがテキスト取材の場合です。いきなり質問がきて、それに回答を返信した時点で、①と②が同時に完了しているからです。提供した情報は「素材として使用OK」と見なされるので、当然クレジットなども入りません。簡単に修正できるWEBメディアのせいで忘れられがちですが、報道は一度されたら不可逆です。あとから文句は言えないので、慎重に対応しましょう。

対面取材の場合は、取材概要書は必ずもらうようにしてください。まともなメディアなら用意してくれるはずです。

掲載時期、掲載スペース、想定質問内容、記事イメージなどを確認し、具体的に「どこにどのように載るのか」が想像できてからようやく判断します。足りない情報があれば、この時点で質問してOKです。

メディアバリューの判断

そのメディアの価値、すなわち「メディアバリュー」を判断するのは、受ける側の当然の権利です。

このメディアに載る価値はあるのか?自分にとってメリットになるのか?どれくらいの影響力が見込めるのか?

などなど。貴重な時間を割いて対応するわけなので、対価を考えて可否判断を下しましょう。

「取材依頼」を受けるか受けないかの判断は、まったくもって依頼する側/される側で対等です。自分にとって価値が低いと思ったら、きちんと理由をつけたうえで断っても何の問題もありません。

ここはけっこう感覚値になりますが、普段からメディアをよく見ていれば、そのメディアの業界内での立ち位置やインパクトが判断できるようになります。過去に取材を受けた人のなかに知り合いがいれば、聞いてみてもいいですね。

メディアバリューがいい感じでも、取材内容によってはネガティブに作用することもあるので注意です。自分自身のステージや、タイミングや時流も影響します。

ここはプロの広報でも難しいところですが、目先の利益や周りにとらわれずに、自分の見せたい方向性を考えて判断するとよいですね。

【重要ポイント】掲載前の原稿確認はできるのか

「取材を受けたあと、掲載前に原稿確認ができるのか?」は絶対に確認しておくべきポイントです。

「確認できなくて当たり前」「普通は確認させてもらえる」と、両方の意見がいろいろなところで言われています。が、実はどっちも間違っていて、原稿確認に関して何が常識というのはありません。

昔々は、確認できないことが普通でした。その名残もあって、今でも新聞では原稿チェックをさせてもらえません。そのため最近も「原稿チェックを要求する広報はカス」みたいなことを言っているオールドスクールな記者さん・広報さんがたまにいますが、そんなこともありません。

最近は、メディア側も間違った情報を出さないために、原稿確認はしてほしい場合が多いです。特にインタビュー取材などの場合は、何もいわなくても向こうから確認を頼んできてくれますね。

ただここで気をつけないといけないのが、やるべき確認は「ファクトチェック」ということです。

自由に書き換えていいわけではありません。あくまで「事実誤認」や「誤解を生む言い回し」、「発言しちゃったけどどうしてもカットしてほしい箇所」に絞って修正します。

好きなことを発信するのは、個人ブログやオウンドメディアでやってくださいって話ですね。第三者の目線をとおして情報が出ていくことに価値があるので、多少の粗さは目をつぶりましょう。自分では微妙だと思った部分が、案外世の中には響いたりするものです。

【重要ポイント】報酬・謝礼について

もうひとつ気になるのが、取材の報酬・謝礼だと思います。

最初に書いたように取材とはあくまで「報道のための材料を集めること」なので、基本的にはボランティアだと思ってください。個人的には、むしろ受ける側がお金を払ってもいいくらいだと思っていますが、最近のインフルエンサー界隈ではなぜか「謝礼をもらえるのが普通」みたいになっているのが納得できないですねー。

個人の力が大きくなっているので、謝礼を求めたい気持ちはわからなくもないです。が、企業取材で個人が応える場合には、多くの場合は謝礼は発生していません。時間対価ガーと思う人は、ただ断ればいいだけの話です。

一部の人が主張している「時間を提供しているのに謝礼をもらえないなんてありえない」という考え方は、あまり真に受けないようにしてください。

何かの専門家で、その人にしかわからない研究結果や、まだ世の中に発表していない情報などを取材された場合はまた別です。私も過去にやったことがありますが、こういったケースの相場は1取材(〜1時間)で3万円くらいですかね。もちろん、かなり振れ幅はあります。

謝礼のやりとりは表立っては行われないので、SNS上など見えるところでの議論も起こりづらいのですが、私個人の感覚としては、ここ数年で個人に対して謝礼を払うメディアは爆増しているように思います。

メディアのみなさん、負けないでください……!個人に媚を売る必要はありません。。

記事になるのは一部だけ。「100分の1の法則」

最後に気をつけてほしいのが、時間をかけて取材に応じても、実際に記事になるのは本当に一部だよ〜ということです。これは、私自身ライターもやっているので、わかります。

特にテレビの世界では「100分の1の法則」がありまして、100分くらい時間を割いて取材に応じたのに、実際のオンエアを見ると1分だった……というやつです。初めてテレビ取材をうける現場の人はかなりガッカリされるので、私も広報として立ち会うときにはしっかり事前説明をしています。

(でもその1分に何百万円の広告換算値が付いたりするのが、テレビの世界なんですけどね)

WEBでも同じで、1時間のインタビューに応じたとして、せいぜい記事になるのは3000字とかですね。読んでみると、だいぶ話がカットされていると思います。発言したとおりの言葉にもなっていないはずです。

取材はあくまで概念や事実を得るための場なので、話したとおりのことが書かれるわけではありません。それを「話してないことを書かれた!」といって憤慨するのはやめましょう。

良識のあるメディアなら、うっかり話してしまっても「これは書かないほうがいいだろうな」という部分はちゃんとカットしてくれます。それができていなかった場合、自分のメディアバリュー判断の部分が甘かったと反省して、次に生かせばいいと思います。

さいごに:メディアの力を維持するために(個人的なミッション)

なぜこんな記事を書いたかというというと、取材リテラシーがないまま個人の発言権・影響力だけが増していくことは、メディア界全体の未来にとってとてもよくない気がするからです。

メディアというのは、社会を監視して良好に保ち続ける役目があります。そういう立場として、ある程度の暗黙の了解化した閉じた世界のなかで、うまく均衡を保ってやってきた部分があると思うんです。

でも最近は、ドカンと個人インフルエンサーが出てきて、その力関係が崩壊している……。個人がマスメディアに匹敵する影響力をもったり、マスメディアに対して物申したりしてきます。

批判に屈するように、ポリシーを曲げてしまうメディアもあるわけです。記事の取り下げとかもよくあります。パワーが弱くなっているなーとも感じます。

自分の身を守るために、SNS上で晒し上げることは簡単です。記事は取り下げられるか修正されるかして、企業側からは平謝りされ、支持者たちからは同情と共感のリプライが届くでしょう。

それで満足ですか?まったく対等な「メディア対個人」の取材やりとりにおいて、自分側に一切の落ち度がなかったと言えるんでしょうか?

もっと長期的に俯瞰的に見てみると、メディアの力が弱まることは、社会にとって不利益しかないはずです。自分勝手な保身のために、そういう社会のバランスを崩す1投稿をしていること、もっと自覚をもってほしいと思います。

ここに書いたようなことを意識して対応したら、たぶん変な記事は生まれないはずです。メディア取材は双方対等ですよ、本当に。

取材の依頼がくるということは、自分の発信が社会にとってなんらかの価値をもっているという証でもあります。もっと誇りと素直な心をもって、社会全体をよくしていくために情報を扱っていきませんか?

PRを真面目にやっている人より、独り言でした。おわり。


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社会をよくする消費づくりを10年来のテーマに、PR / Communicationをやっています。サステナブルな街Byron Bay在住。東京のPR会社→フリーランス→複業社員→無職→日豪往来。認定PRプランナー。スノー業界、環境と自然、消費社会に興味あり。雪を守りたい❄︎
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