見出し画像

「深い学び」と教え方の科学

個人的にすごく好きなクレイス叢書。

学術的知見に基づきながら現代の教育における課題やそこへの対応について、勘や経験じゃなくてエビデンス重視で書かれているので、すごくありがたい。もちろん教育研究は、教室の実態に応じて大きく成果は異なると思うんだけれど、それでも量的データなどによって、一定の知見が残されているというのは意義深いと思う。

前回、「深い学びの科学」が出ているのだけれど、今回は「深い学び方」と「教え方」を一体的に説明するということに焦点を当てて書かれている。もちろんだからと言って、これをしたら深い学びになるというわけではなく、深い学びを達成するためにも教師が知っておくと良いことが書かれている。

各章は以下の通り
1章 「思考」の練り上げが学びを深める
2章 学びを深める「対話」の役割を考える
3章 「感情と意欲の自己調整」が学びを深める
4章 資質・能力を支えるメタ認知と深い学び
5章 「メタ認知」による学びの深め方
6章 「ワーキングメモリ論」からみた学びの深化のプロセス
7章 「個別最適化」によって学びを深める
8章 子どもの「道徳的感情」を育てる学びの深め方
9章 「学びの遅れがちな子」の支援による学びの深め方

章立てを読むだけでも、深い学びが学習の得意な児童だけを視野に入れているのではなく、学習の苦手な児童、特別な支援を要する児童も丸っと捉えて深い学びを達成しようとしていく考え方も大事だと感じる。

例えば2章の「対話」に関するパートでは、住田・森(2019)のけ研究を取り上げている。小学校4・5年生でのペア学習の対話に関する研究において、ペアでの対話の型は3つある。
①自己主張型(自分の意見や解決法が多いタイプ)
②他者視点言及型(相手の主張の繰り返しや付け加えが多いタイプ)
③調整型(両者の主張に新たな観点を加えて調整するタイプ)
くわえてこの「調整型」のタイプへとペア学習を発展させていくために、修正法の一つとして「共同注意」に注目し、対話の苦手な子どもの支援策を検討していることについて書かれている。

こうやって学術的な知見を知ったときに、自分の学級のペア学習はどうなっていただろうか、そもそもこの型を把握するために担任はペア学習においてどのような部分に着目したらいいんだろうか、組み合わせによって型はどのように変化していくんだろうか、みたいなことが次から次へ頭へ浮かんでくる。

「理論と実践の往還」って、言葉で発するのは簡単だし大学院でもめちゃくちゃよく聞くんだけれど、じゃあ本当に理論を実践に結び付けようとしているのか、実践も正しく理論に則って行われているのか。
往還したかったはずが、気づいたら自分の自己満足の結果を導き出していないか、こういうところに気を付けながら、学級や現場に参画していきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?