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第五話: ビビデバビデブーの呪文

このピーナッツの妖精の家に引っ越してきて1週間も経ってないある日のこと。

彼が朝ごはんを作っている。典型的なアイリッシュブレックファーストだ。羊の肉にオート麦を混ぜて腸詰めしたケルト民族のソーセージ・ホワイトプディング、トマト煮のビーンズ、オーブンで焼いて甘みが増したトマトにマッシュルーム、そして今日は特別に栄養たっぷりダチョウの卵を焼いたらしい。アイルランドでよく食べられる穀物がたっぷり入ったソーダブレッドを添えて。


彼がキッチンの下の棚にある食器を取ろうと、屈んだときだった。

「ブリブリブリブリ(ビビデバビデブー)」

みなさん、なんだと思いますか。この音。


彼はかがんだ瞬間、オナラがでてしまったらしく、その音をかぶせるように「ビビデバビデブー」と言っております...。笑


いやいや、ビビデバビデブーじゃないよ!オナラをするなよ!しかももちこは一応性別は女だよ!決して単純ではないオナラの音声なんてとてもじゃないけど聞きたくないけど、そこにビビデバビデブーと言われても何も面白くないよ!笑


いや、一回ならまだ許そうかな、と思ってその時は何も言わずスルーしましたよ・・。でもね、これが一回じゃないんです。別の日も、また別の日も、何回かビビデバビデブーの呪文を聞いてたらさすがにイライラします。


そのことを行きつけのパブのアイルランド人に話してみると、、みんな大爆笑。。。

「よかったな、これでヤツはきみのことを女性ともなんとも思っていない証拠だよ!」


まぁまぁ...。そうなのかな?いや、これはアイツの単なる性質じゃないか??

とは思いましたが、さすがに被害者としてはスルーせずにもいれませんでした。


2週間くらいたったある日のこと。彼がいきなりメッセージを送ってきた。

内容は以下である。

「やぁ、元気かい?僕はきみに家賃のデポジットを要求しようと思うよ。これは普通のことだからね。そして今まで要らないと言ったことはちょっとおかしかったかなと思ってる。ま、このことをきみは理解してくれるよね。それじゃあまたあとで。」

ん?いきなりなんで要求してきたんだ?もしかしてもちこのこと信用できないと思われ始めたのかな。とりあえず連絡を返さなかった。そして彼とその日会うことはなかった。

すると翌日、もう一通、デポジットとは全然関係のないメッセージが一件。

「どうも〜、僕だよ。きみが今日もいい日を過ごしていることを願って。食器を洗ってなくてすまないね。昨夜は時間がなかったんだ。明日の午後には帰るからその時までにはアイルランドで一番のキレイな家になるよ。それじゃ、平和な日を。」


平和な日?? 後に、行きつけのパブでこのことを話すと、「have a peaceful day.」なんて言ってくるアイルランド人なんて居ないよ!とみんな大爆笑している。これはお互いの関係にそう言ってるようにも聞こえるし、こんなときにアイルランドで一番キレイな家になってるとかいうジョークも要らない。ほんとイライラする。。笑

その数時間後、もうわたしは溜まりに溜まっていたビビデバビデブー事件について、ついにストレートに言ってみることにした。


「やぁ、元気にしてる?メッセージありがとう。食器については大丈夫だよ。全部じゃないけど少し片付けておいたよ。

実は、わたしも言いたいことがあるよ。わたしがリビングに居るときは、お願いだからオナラをしないでもらえない?本当に気分が悪くなる。ついでに言うけど、トイレもちゃんと流してね。

デポジットについては理解したよ。後で話しましょうか。

それじゃ、残りの日、いい時間を過ごしてね:)  もちこより」


するとすぐに返信が。

「残りのことは後で話そう。デポジットについては話し合いを受け付けてないからね、とにかく300ユーロ、用意しといてくれ。」

数時間後。

「さっきはごめん、さっきは忙しくてつい取り乱してしまったよ。うん、また後で話そう。」


このやり取りをアイルランド人に話すとみんないろんなポイントで大爆笑してくる。わたしがストレートに伝えすぎたオナラストップ要求、そしてその返答について。。当時のもちこはただ真剣に物事に向き合ってただけなのだけど、確かに振り返ってみたら面白いのかも。。。笑


ということでその後話し合いが行われるのでした...

(つづく)




読んでいただきありがとうございます! これからもわくわくする物語を綴っていけたらと思います。 続きが気になる方はぜひフォローして頂けるとうれしいです*