そんなヘレンを教育したのが、家庭教師として派遣されてきたアン・サリバンです。サリバンも子どもの頃は弱視でした。サリバンは自身の経験を活かし、ヘレンに指の形で文字の存在を教え、物にはそれぞれ名前があることを教えていきます。例えば、ヘレンがケーキを食べると、ヘレンの手を握って指でアルファベットの形をつくり、C、A、K、Eと教えます(中略)そうしてヘレンは 〝KEY〟(鍵)や〝WATER〟(水)などさまざまなものの名前を教わっていきます。しかし、ヘレンは、「それぞれの物に名前がある」という 〝意味〟まで理解していたわけではありません。鍵に触れたら指でK、E、Yの文字をつくる。水に触れたら指でW、A、T、E 、Rの文字をつくる。それをただフィンガーゲームのルールのように認識していただけでした。ところが、あるとき、ヘレンとサリバンが井戸で水を汲んでいたとき、ヘレンは手で水に触れると突然〝WATER! WATER!〟とサリバンの手を取り手のひらに指で書き始めます。そのとき、ヘレンの中で「それぞれに物に名前がある」という〝意味〟がわかったのです。物と名前の関係という巨大なゲシュタルトが突然できたのです(中略)バラバラだった情報がつながり、ゲシュタルトができるという体験は、このシーンのヘレンのように大きな歓びを伴うものです。これを引き起こしたアン・サリバンは後にMIRACLE WORKER(奇跡の人)と賞賛されます。このように我々コーチの仕事はスコトーマに隠れていたクライアントのゲシュタルトの発見を促し、さらに新しいゲシュタルト構築をお手伝いすることです。