【獣医師監修記事】犬の皮膚炎はストレスの現れ?犬が足を舐めるような常同行動に注意⚠️

ストレスは皮膚の健康に深く関係しています。
ストレスによって皮膚のバリア機能が弱くなってしまっしたり、免疫力が低下して皮膚感染を起こしやすくなってしまったりする可能性が示唆されています。
また、ストレスによる常同行動が原因の重度の皮膚炎も報告されています。

愛犬が体を痒がっていたら危険なサイン

しほ先生「今回は、愛犬が体を痒がって舐めるのをやめてくれない、という相談者様がいらっしゃっています。とうの先生、よろしくお願いいたします。」

とうの先生「初めまして。獣医師のとうのです。よろしくお願いいたします。早速ですが、詳しい状況を教えていただけますか?」

相談者「初めまして。よろしくお願いします。我が家には1歳半のミニチュアシュナウザーがいるのですが、しばらく前から前足を舐める行動を、暇さえあればずーっとするようになってしまいました。
皮膚も少し赤いような気がするのですが、病院で診てもらっても皮膚の感染症はないから様子を見ましょうとのことで…感染症以外に何か考えられることはありますか」

とうの先生「そうですね。体を痒がっている原因は感染症にアトピーなど、本当に様々なことが考えられます。」

犬が皮膚を痒がる主な原因

  • 感染症(寄生虫や細菌など)

  • アレルギー、アトピー

  • 外耳炎(首をかいているように見えることも)

  • 自己免疫疾患(皮膚エリテマトーデスなど)

  • ストレス

    その他にも虫刺されや換毛期などの時に体をかく仕草が見られます。
    内臓疾患が関与している可能性もヒトでは報告されています。

とうの先生「大体のかゆみの原因は、かゆみが起きている部位の特徴や様々な検査を重ねることである程度予測ができます。しかし、この中でもストレスだけは、動物では診断がとても難しいものになります。」

相談者「こんなにもたくさん考えられる原因があるんですね!ひとまず、皮膚の感染症ではないとのことでしたが…」

とうの先生「となれば、他の原因を探っていくしかないですね。相談者様の愛犬は1歳半ということで若いですから、お話からするとまずはアトピーなどが疑われます。
「皮膚エリテマトーデス」などの自己免疫疾患は特徴的な皮膚症状が出るので、すでに動物病院で診てもらっているなら可能性は低そうです。
いつも同じ部位ばかりを無目的に舐めているようであれば、ストレスが原因の可能性も考えないといけないですね。」

犬のストレスと皮膚の痒み

ヒトや動物で報告されているストレスと皮膚の関係

  • アトピー性皮膚炎の悪化

  • 皮膚バリア機能の低下

  • 免疫力の低下

  • 常同行動

免疫力の低下と常同行動については以前の相談の回でもお話しました。
(参考ブログはこちら→犬が自分の尻尾を追いかけ回したり手をなめ続けたりするのはストレスが原因?)

ストレスによって心の病気にかかり、ひたすら同じ行動を繰り返す常同行動。体を舐め続けるというものも、症状の一つとしてあります。

常同行動の場合、かゆいから舐めているのかは不明で、あくまで心の問題と考えられていますが、舐めすぎて皮膚炎を起こしてしまうとかゆみが伴うこともあります。

常同行動で舐め続けた部分の皮膚が脆弱になり、感染を起こしやすくなる。また、免疫力の低下でさらに細菌感染などが起きて悪化していく、ということが考えられるのです。

アトピー性皮膚炎の悪化や、皮膚バリア機能の低下の話はヒトの研究でストレスによる影響が示されています。

相談者「なるほど…確かに、前足の同じ部分をずっと舐めています。皮膚が赤いのも舐めているところだけですね。
もしかしたらうちの子は心の問題が原因かもしれない、ということですね?」

とうの先生「そうですね。あくまで他の可能性を全て否定できてからにはなりますし、一般的にはアトピーが一番疑わしい、ということになります。
ただし、たとえアトピーでもそうでなくても、ストレスは見落とせないところですね。何か、ストレスの原因になるようなことに心当たりはありますか?」

相談者「う〜ん…強いて言うなら、息子が中学校に入ったのを機に遊ぶ時間が減っていたり、私もそのタイミングでパートを始めたのでお留守番の時間は長くなりました。
それって関係ありますか?」

とうの先生「そうですね。それは関係がありそうです。
遊べない、お留守番が長い、今まで一緒にいた家族がいないというのは、ワンちゃんにとっては不安や欲求不満の原因、つまりストレスになります。
おもちゃなどはあげていますか?」

相談者「おもちゃは前に壊してしまってから全部没収しています。生活のことを考えるとパートを辞めるのも難しいです…」

とうの先生「もちろん、一緒にいられる時間、遊ぶ時間を増やすことが本人にとっては一番なので、その努力をしてもらう必要はあります。でも、どうしても難しいという場合はやはり、留守番ができるようなしつけ・トレーニングをする必要がありますね。
おもちゃも全て没収するのは、ワンちゃんにとっては辛いでしょう。本人の力量に合わせて壊れづらいものを選んだり、壊れそうな部分がないか毎日チェックをしてください。
詳しいことはしほ先生に相談してもらうのが一番です。」

相談者「わかりました!愛犬のストレスを減らす方法について、しほ先生に相談してみます!」

終わりに 皮膚炎なりやすくストレスを溜めやすい犬種

しほ先生「手足を舐めているワンちゃんはよく聞きますが、ストレスによる影響も考えないといけないとは…!ストレス、恐ろしいですね。」

とうの先生「はい。もちろん、動物病院で他の検査を受けた上での話にはなりますが、ストレスは皮膚を舐める原因の一つとしてしっかり考えておかないといけないことだと思います。」

しほ先生「ストレスが関係した皮膚炎になりやすい犬種はあるのですか?」

とうの先生「残念ながら、犬ではっきりとわかっていることはありません。
ただ、ストレスの影響を受けるとされているアトピー性皮膚炎は、アイリッシュ・セター、ウェスティー、ボストン・テリア、ミニチュア・シュナウザーなどの犬種が起こしやすいと言われています。」

しほ先生「なるほど。相談者さんの愛犬もミニチュアシュナウザーですし、可能性は十分にありそうですね。」

とうの先生「そう思います。病院とドッグトレーナーさんが協力しながら、この子の皮膚の問題を解決できたらいいですね!」

参考文献

1、Eung-Ho Choi 他 ”Mechanisms by Which Psychologic Stress Alters Cutaneous Permeability Barrier Homeostasis and Stratum Corneum Integrity”2005 The Society for Investigative Dermatology, Inc. Published by Elsevier Inc.(最終閲覧:2020年4月18日)
https://www.jidonline.org/article/S0022-202X(15)32217-X/fulltext

2、片桐一元 他「神経ペプチドおよびストレスによる皮膚バリア機能障害のメカニズム解析」大分大学医学部皮膚科学、獨協医科大学越谷病院皮膚科
https://www.kose-cosmetology.or.jp/research_report/archives/2011/fullVersion/Cosmetology%20Vol19%202011%20p100-102%20Katagiri_K.pdf

3、安藤泉「イヌにおける様々な外因性ストレスの評価指標に関する研究」一般学位論文2012年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://tuat.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1417&item_no=1&attribute_id=16&file_no=2

4、永田頌史「ストレスによる免疫能の変化と脳・免疫連関」JuoEH(産業医科大学雑誌)1993年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/15/2/15_KJ00002623664/_pdf/-char/ja

5、内田佳子「常同行動を呈した猫5頭の長期観察報告」J-STAGE,2010年(最終閲覧:2020年4月2日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/19/3/19_3_95/_pdf/-char/ja

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