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”特異な才能”のある児童生徒、国が来年度から支援開始へ。2023年4月、実証実験スタートの予定

文部科学省は来年度から、【特定分野に特異な才能のある児童生徒】への支援を始めます。
23年4月からは、予算1000億円規模(今年8月の概算要求時点)の実証研究を行う予定。実践事例を集め、それを横展開していくことで、特異な才能のある児童生徒が力を発揮しやすい環境を全国的に整えていく考えです。

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「鉛筆で文字を書く速度と、脳内での処理速度が釣り合わず、プリント学習にストレスを感じていた」
「早熟な知能に対して情緒の発達が遅く、感情のコントロールが未熟なので、些細なことで怒られたり泣いたり、他の児童と言い争いになったりする」

(文部科学省「特定分野に特異な才能のある児童生徒の本人・関係者に対するアンケート結果」より)

その才能や認知・発達の特性等に起因して、『学習上・学校生活上の困難を抱えることがある』と指摘されることの多い、特異な才能のある児童生徒。
しかしこれまでの学校教育では、こうした児童生徒に主眼を置いた指導・支援の取り組みはほとんどなされてきませんでした。

そこで文科省は、当該児童生徒に焦点を当てて支援する方針を決め
23年度の概算要求で、関連予算として計1億1300万円を計上しました。

困難解消しつつ、個性・才能伸ばす

基本的な考え方は、【学習上・学校生活上の困難を解消】しながら、【それぞれの個性・才能を伸ばす】指導・支援を行うーーというもの。

そのための施策として

  • 【個々の特性を把握するためのツール】に関する情報共有

  • 【特異な才能のある児童生徒向けのプログラム&イベント】等に関する情報集約・共有

  • 主に教職員向けの研修パッケージの開発

  • 特異な才能のある児童生徒の指導・支援に関する実証研究

を予定しています。

「学校外の機関との連携」を検証

【特異な才能のある児童生徒の指導・支援に関する実証研究】は、各都道府県・市町村の教育委員会や、学校法人など8団体に委託した上で、具体的に下記の項目について検証していきます。

  • 子どもの関心等に合った授業

  • 多様性を包摂する学校教育環境

  • 多様な学びの場の設定や、過ごしやすい居場所としての環境整備

  • 学校と、学校外の機関の連携による学習面・生活面の指導・支援

  • 才能と障害を併せもつ児童生徒の対応 
    などについても検証する方針です。

このほか民間企業1社に委託した上で

  • 教職員や保護者に対する、児童生徒の対応に関する相談支援

についても検証する方針です。

「特異な才能のある児童生徒」とは?

そもそも【特異な才能のある児童生徒】とは、どのような児童生徒を指すのでしょう。

【才能】の定義は定まっておらず、諸外国においても様々な捉え方がなされているようです。
その中で文科省は、【才能】の全般的な特徴として

  • 普通より優れた能力

  • 創造性

  • 課題への傾倒

の大きく3要素があり、これらが相互に作用し合うことで発現する…という考え方を紹介。
この考え方に則ると、【3要素のいずれかが高いこと】が、才能を見出す手がかりになるようです。

「数値化・才能の定義づけはしない」

一方で

「何らかの特定の基準や数値によって才能を定義し、定義に当てはまる児童生徒のみを【特異な才能のある児童生徒】と取り扱うことは行わない」

との考えも提示しています。

あくまで【個別最適な学び】と【協働的な学び】の一体的な充実を目指していく中で、特異な才能のある児童生徒に対しても支援していくーーというのが支援の基本的なスタンス。

「子どもたちの特異な才能を示す行動・特性を広く把握」した上で
「それぞれの子どもたちにとって、多様な学びの機会が提供されること」を重視する考えです。

なお、報道等で用いられることの多い「ギフテッド」という用語についても、それが必ずしも英語「gifted」の本来の意味で用いられているとは限らず、また対象となる児童生徒のイメージが論者によって異なることが多い実態を踏まえ、有識者による支援策の検討時にこの用語は使用しませんでした。


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