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娘が怪我をして、親が大騒ぎする話

娘が足の指を怪我してバスケから帰ってきた。
夫が言うには、怪我をしたのはバスケの練習中ではないとのこと。娘に聞くとバスケットゴールの片付けのときにタイヤに足の指を轢かれてとても痛いと、私に一生懸命話してくれた。

見てみると指は少し赤く腫れていた。歩くのにも痛いのなら、折れているかもしれないと思った。

昨年秋に娘は一輪車に慌てて乗って、正面から壁にぶつかり右手首を骨折した。後で知ったが、子どもの骨折は大人と違って見た目の色が変わらない。子どもの診察に慣れていない夜間診療当直の医師に、レントゲンも撮らずに問題なしと診断された。私も知識がなく、そういうものかと安心していたが、4日経っても痛みが引かず、別の病院に行き骨折が判明した。

それもあって、私は骨折に敏感になっていた。明日、病院へ行こう。

夫は、娘に激しく言った。なぜ気をつけなかったのか、楽しみにしているプールの授業は受けられないし、夏休みに海にいっても満喫できなくなり、今年の夏が台無しだと娘を責め立てた。

夫は練習中ではなく、片付けのときの怪我だったことを特に悔しがっていて、おそらく娘の気持ちを代弁し、その怒りを娘にぶつけた。そして、関係する多くの大人にも迷惑をかけることになると娘に強く言った。その関係者の管理の甘さから、娘は怪我をしたのに。

気持ちはわからなくもないが、いまさら?と私は思った。こんなこと、この7年間よくあったでしょ。高熱で入院してお正月が潰れたり、発熱で旅行に行けなかったり。

そのたびに自分だけ出かけたり、友達と旅行したりしていたので、今までは娘のことは他人事だったのかもしれない。娘の悔しい気持ちがわかるようになったということは、父親として成長した証かもしれない。

が、そんなことはどうでもいい。
娘の体と心の痛みをフォローせねば。

まず夫には、落ち着いて考えて。仕方がないことだし、娘が一番辛いのに責めるのはおかしい。関係者も管理を見直す必要があるんだから仕方がない。と言った。夫も納得するが、悔しさはおさまらないらしい。

娘には、私も前に、足の指を骨折したことがあるから、痛みはわかるよ。すごく痛いよね。大丈夫。明日、一緒に病院にいこう。学校のプールに入れなくても、足が治ったら一緒に室内プールにいこう!足を怪我してもしなくても、夏休みは楽しいから大丈夫。と伝えた。

こういうとき、娘は妙に大人しくなる。全て状況がわかっているか、感情をしまったのか。涙もなく、悔しい表情もない。私の言葉が慰めになるのかはわからないが、夫が責め立てた言葉一つ一つを修正しないと、娘の心に傷が残るのではないかと心配した。

翌朝、とにかく学校を休みたくない娘は、少し足を引きずりながら学校に行った。

早めに学童に迎えに行き、病院に着くと、すぐレントゲンを撮った。少し待合室で待つと、診察室に呼ばれた。先生を待つ間、処置室の画面に小さいレントゲン写真が並んでいるのが見えた。

折れているのかいないのか。

「子どもの骨は柔らかいので、ポキンと折れずに、若い木の枝みたいに伸びることがありますが、そういうのも骨折なんです。」処置室に入ってきた先生は言った。

やっぱり折れていたのか。

レントゲン写真が大きくなった。
「お嬢さんの骨は伸びてもいないし、曲ってもいないので折れてませんよ。」

きれいな骨の写真だった。よかった。

次に先生は、娘の足の指を見て、
「こーんなに小さなかわいい指の一本だけタイヤが乗ったの?」
「ふふふ。そうなの。一本だけ。」
「痛かったねぇ。」
「うん。すごく痛かった。」
「バイ菌が入らないように塗り薬出しとくね。」

確かに一本だけというのは不思議だと思っていた。
そして、指が折れていなかった奇跡に嬉しくなった。

夫に伝えると何事もなかったかのように、普通に戻った。私は、怪我をした日に、コーチに電話していたので、骨は折れていなかったことをメールした。

結局夫は気が動転していて、コーチに連絡もできず、診察結果のメール本文も考えられず、病院も連れて行けず、何の役にも立っていなかったが、進んで病院の送迎だけはしてくれた。出来ることを一生懸命やって、自分なりに力になろうとしたようだ。

「先生はなんて言ってた?」夫が聞いた。
「かわいい指一本だけ轢かれたんだねって言われて、なんか面白かった。」と娘が答えた。

先生が娘と明るく話してくれたことが、娘の心を軽くしてくれたようだ。

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