見出し画像

淡水レンズと天橋立|海水に浮かぶ淡水井戸の謎

天橋立にある真水の井戸

駅チカ日本三景、天橋立の中ほどに昔から不思議がられた井戸があります。磯清水と呼ばれるその井戸は海に挟まれているというのに淡水が沸くということで古来から知られており、和泉式部も歌に詠んだほど平安の時代から有名だったようです。

こちらがその磯清水。天橋立駅寄りに位置します。

古来は原理がつかめなかったこの井戸水ですが、現代ではなぜ海に囲まれた土地で真水を得ることができるか説明することができます。これからその話をしようと思います。

海水に浮かぶ淡水

ところで真水は塩水よりも比重が小さく軽いというのはよく知られた事実ですが、規模を大きくして同じことを考えてみます。海に浮かぶ島に雨(淡水)が注がれると、興味深い現象が起こります。地中では、水の拡散速度が比較的遅いため、雨水は海水と容易に混ざり合うことなく、比重の違いに従って領域を分けたまま住み分けます。この領域は、淡水が海水に浮かぶような形をしており、これを「淡水レンズ」と呼びます。

水資源に乏しい島では、淡水レンズにたまった地下水を実際に利用することもあるそうです。ただ、レンズという名前の通り、薄く広がるためそのままでは利用が難しいことがあるそうです。そこで一本の縦井戸から取水するのではなく、レンズ内で水平に伸ばしたパイプで横に幅広く取水する方法とかもあるそう。

他にもレンズの端のほうに壁をくるっと作り、淡水が流出しないようにして、レンズを分厚くするフローティング型地下ダムという工法もあったりと思ったより奥が深い話でした。

島に住む人々には密接に結びつく技術ですが、普段生活しているとなかなか知れないことですよね。

磯清水も淡水レンズ

話の流れから明確かもしれませんが、冒頭に紹介した磯清水もこの淡水レンズによって古来から真水を引くことができているそうです。少し調べてみましたが、大昔から知られ観光地化している井戸で淡水レンズによる井戸は他に見つけることができませんでした。

磯清水は一度訪れたことがあるのですが、裏にはこんな現象がはたらいているとはつゆ知らずでした。旅は思いもよらない知識との出会いがあるのでいいですね。訪れた時のブログはこちら!磯清水を含め天橋立駅周辺をまるっと観光する方法を解説しています。

参考サイト

https://www.ogb.go.jp/nousui/nns/c2/furo-tfingu

この記事が参加している募集

#スキしてみて

526,955件

#地理がすき

691件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?