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指先の動きがもたらす脳への効果;手仕事教育の可能性

ウォルドルフ教育のカリキュラムは、子ども全体の成長をサポートすることを目的にしています。肉体、感情(心)、知能(頭)、精神の成長に合わせてカリキュラムが組まれており、手仕事教育もその一部です。これにより、個々の子どもたちの成長を大きく促すことができるのです。

手を動かして指の小さな動きを練習することは、とても大切です。指先が上手に器用に動くと、脳のシナプスが活性化され、つながりが強くなるのです。子どもの頃に、手仕事を通して試行錯誤したり、想像し考え苦労しながらものづくりに取り組むことは、大人になってからの抽象的な考え方や、論理的な思考力へと繋がっていくことが分かっています。


しかし、ここ15~20年の間に、子どもたちの手先の運動能力は著しく低下していると言われています。なぜなら子どもたちは、丸太や石、泥や砂といった自然素材、つまり不揃いの有機的なさまざまな感触のものではなく、精密に作られたおもちゃで遊ぶことが多くなり、もちろん、デジタル機器やオンラインの「ゲーム」に触れる機会も格段に増えました。


外で遊ぶときに繊細で複雑な手の動きをしたり、素朴なおもちゃや木の枝や石などを別のものに見立てて遊ぶ想像力や創造性、つまり、これまでにないものを想像し発明するという経験が非常に少なくなっています。泥と棒で橋を作ったり、葉っぱを丸めて船を作ったりするような、見たこともないようなものを想像し、作り出すという創造性や創意工夫する遊びの時間が圧倒的に少なくなっているのです。



そんな時代の中、手仕事教育では、本当にシンプルな材料から美しいもの、遊び心のあるものを自分たちの手で作ることを子どもたちに教えていきます。想像力と創造性が開花するように子どもたちを導いていきます。市販のキットやパターンは使いません。子どもたちの内なる創造性を引き出すことを最大限の目的としているのです。



そして、指先が器用になるということには単に器用になるということだけでなく、たくさんのベネフィットがあります。指先の動きと軽快な思考力は、未来の外科医や宇宙工学者の準備にも役立つのです。指先の器用さは将来の職業選びや多幸感にも繋がっていくのです。


また、手仕事は、この大きく時代が変化をしていくこの世界で、特に重要であると考えています。手仕事をしている時のリズミカルな反復運動は、気分、認知、報酬、学習、記憶、その他多くの生理学的プロセスを制御するセロトニンの生成を促進すると言われています。みなさんも、手仕事で心がスーッと落ち着いていく感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。



私たちは子どもの発達段階に沿った手仕事を、触覚や運動感覚、バランス感覚、生命感覚といった私たちの基本的な感覚を大切にし、また、美しい活動になるように繊細に心を配っています。



シュタイナーの考えによれば、これらの幼いうちに育みたい4つの感覚は自由な大人へと成長するために欠かせない事です。意味深くよく考えられた手仕事に取り組むことで、子どもは心も体も頭も統合的に発達させることができるのです。



現代の厳しい時代において、子どもたちにただ単に編み物や裁縫、かぎ針編みなどの技術だけを教えるのではなく、手仕事を通じて子どもたちの心と魂に深く触れ、彼らと感情豊かなつながりを築き、あたたかさの中で導いていくこと。これが手仕事教育にとってとても重要であると考えています。



最後までお読みいただきありがとうございました。
門野由香子/ Yukako Kadono
INSTA; @handwork_education



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