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【キネマ救急箱#13】2番目のキス 〜アメリカンジョークとは何か、全てジミー・ファロンが教えてくれた〜

こんにちは。
ニク・ジャガスです。

突然ですが、皆さんには我を忘れるほど情熱を注ぐ趣味はありますか?
一度それを始めてしまうと集中して止まらなくなったり、他人の言う事が聞こえなくなってしまったり。

私にも映画鑑賞やカラオケなど、確かに関わっていると「楽しい!」と思える趣味はあります。

ですが、この作品の主人公ベンの「ボストン・レッドソックスに対する愛」と比較すると、その差は月とミジンコでしかありません。

今回は、2006年に公開された、ドリュー・バリモアとジミー・ファロンが主演を務めるラブコメディ『2番目のキス』をご紹介します。


あらすじ

数学教師のベン(ジミー・ファロン)は、リンジー(ドリュー・バリモア)の会社に生徒を連れて社会見学に行ったとき彼女に一目惚れする。ビジネスエリートの彼女と一介の教師の彼はまるで住む世界が違ったがつき合い始める。すべてはうまく行くように思えたのだが、ベンがボストン・レッドソックスの熱狂的なファンだったことから問題が生じて……。

シネマトゥデイより

「2番目」のキスはどこから来ているのか?

「ドリュー・バリモア」と『2番目のキス』というワードを聞くと映画『50回目のファーストキス』を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。

公式サイトより

『50回目〜』の日本公開が2005年、『2番目のキス』の公開が2006年であることから、ドリュー・バリモアのラブコメディとして関連性を持つ邦題にしたものと思われます。

なぜ「2番目」のキスなのかというと、ベンの大事なものランキング1位「レッドソックス」、2位「彼女」の順位づけから来ているもの。

ベンは7歳の時にボストンに引っ越し、友達もできず塞ぎ込んだ日々を送ってきました。
そんなベンの人生を大きく変えたのが、叔父のカールと観に行ったボストン・レッドソックスのホーム球場フェンウェイ・パークでの試合
それ以来、何かが乗り移った様にレッドソックスに人生を捧げ続け、カールからシーズン・チケットを相続したベンは、毎試合必ず球場で観戦するようになりました。

そんなベンの部屋は、レッド・ソックスではないものを探すのが困難なほど、ユニークなグッズに溢れています。
中でもキャッチャーグローブの形をした固定電話は個人的にツボでした。

でも私がリンジーなら、あの部屋に入った瞬間に何かを感じ取って距離を置くかも…。

ジミー・ファロンとドリュー・バリモアの、決してコントにならない絶妙なコメディ演技

自分の彼氏が、人生のほぼ全てをレッドソックスに捧げている。

そういった異様な設定が気にならなくなるくらい、ジミー・ファロンとドリュー・バリモアの掛け合いは軽快であり、ある種の爽やかさを演出しています。

決してコントのような雰囲気になることなく、スマートな冗談を連発するジミーと、日常の何気ない動作にもユーモアを宿すドリューは、観客に「こんなお似合いカップルいそうだな」と素直に作品を受け入れる体制を整えてくれます。

そして恥ずかしながら、ジミー・ファロンが俳優もできる人物だということを、この作品で初めて知りました。
今では『ザ・トゥナイト・ショー』で国民的スター司会者となったジミーにも、こんな時期があったのですね。
※ちなみにジミーは2007年、ドリュー・バリモアと共にFlower Filmsを立ち上げた映画プロデューサーであるナンシー・ジョヴォネンと結婚しています。

また、ジミーが映画の端々で発するアメリカンジョークのテンポの良さといったら一級品です!
決して下品になることなく、周囲のキャラから放たれる微妙な大喜利ネタを全てヒットで打ち返す様がお見事。(ホームランではないのが重要です)

アメリカンジョークをマスターしたいという方は、本作やジミーの出演映像をチェックしてみてください。
日本人である自分なら思いつかないような粋な返しを教えてくれました。

実際のレッドソックスの戦況とクロスオーバーしたラストシーン

ボストン・レッドソックスには1918年から2004年に至る28年間、「バンビーノの呪い」なるジンクスがつきまとっていました。

「バンビーノの呪い」とは1918年、当時レッドソックスのエースであったベーブ・ルースをヤンキースに移籍させたことを機に、レッドソックスが弱小チームに転落、移籍先のヤンキースはリーグトップで活躍するチームに成長したとされるもの。

野球の神様ベーブ・ルース

野球ファンから揶揄され続けた「バンビーノの呪い」がようやく解けたのが2004年。
チャンピオンシップシリーズにおいて、レッドソックスはヤンキースと対戦して最初の3試合は負けたものの、その後の4試合を連勝するというMLB初の結果を叩き出し、球界はどよめきに包まれました。

ちなみに本作のラストは、プレー中の球場にスーツ姿で侵入し、裸足で警備員を交わしながら爆走するドリュー・バリモアのシーンで終わるのですが(詳しい過程は省きます。笑)、そのシーンはなんと実際のレッドソックス戦で撮影されたものなんです!

レッドソックスがワールドシリーズ優勝を決める試合の日、本作の監督であるファレリー兄弟は、試合開始数時間前にドリューとジミー、スタッフを球場に集めて撮影を決行します。
そしてレッドソックスの優勝が決定的になった瞬間、本作を演技中のドリューとジミーの様子が全米に生中継されたそうです。

アメリカらしい、業界の枠組みを取っ払った面白い試みですよね。
作品完成後、本拠地フェンウェイ・パークにスクリーンを設置して上映会も開かれたそうです。


本編中、ヤンキース戦で松井秀喜の名前がコールされたり、イチローと思われる後ろ姿が映ったりと、日本人がちょっと盛り上がるシーンも組み込まれています。

王道ラブコメ…ではなく、むしろ野球漫画に恋愛要素ちょこっと、みたいな位置づけが面白い『2番目のキス』。
ディズニープラスで配信中ですので、気になった方は是非ご覧になって見てください。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました😊


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