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オランダ発Miso屋:Miso屋を個人事業レベルなのに、日本の田舎と海外二拠点で起業。エコ移動式味噌蔵建設への道⑤

エコ味噌蔵作りついでに、築40年以上の我が家の片付けをしています。
ほぼ家の中にあるメインの家具は私の記憶の中では、何一つ変わっておらず、全て父と母が新築の時に買ったものばかりで、もう存在自体が昭和レトロです。
母が使用していた棚を片付けていると、あの2000年問題を彷彿とさせるザ・平成的産物CD-ROMを発見。切り取ったルーズリーフには手書きのミスチルの曲名達が。
「これ、聞けるのかな?」と思いながらゴミ袋に入れるのはやめて、隅に置いておきました。

姉はほぼリモートワークなのですが、週一で出勤しています。
出勤の日は、私が朝姉を最寄りの駅まで送る事が多いんですが、
そのある朝、隅に置いてあった例のCD-ROMを持って運転席に乗りました。
家から最寄りの駅までは10分弱。

「おねぇちゃん、そのミスチルのCD-ROMかけて。かかるかわかんないけど。」

「あれ、これ姉の字だ。姉がお母さんに渡したやつじゃない?このルーズリーフ使ってたなぁ。初めて買ってもらったVAIOで焼いたんだよね。」

「あ、そうなの?この前片付けしてた時に、お母さんの棚の奥に入ってた。」

そんな会話をしながら一曲めの「君がいた夏」は順調に音飛びを起こします。

「お母さんに、星になれたら。を聞いて欲しくて。確か。
エリちゃんがイギリスに行く!って言い出して、もうイギリスに旅立つ直前だったと思うけど。
お母さんその事で周りの人にあーだ、こーだ言われてて‥‥。」

他の同級生達が徐々に就職活動だったり、大人の階段を登りつつある時に、別に英語が好きで得意でもないのに、「あの子、どうするの?」と母が言われたであろう事は、予想はできます。

これといってミスチルのファンではないけど、聞き慣れた二曲目の「星になれたら」が当たり前の朝の道、姉と二人きりの空間を爽やかに包みまだします。

「この曲の歌詞に、長く助走をとった方が遠くに飛べるってあるでしょ?
エリちゃんは、助走しに行くんだよ。ってお母さんに伝えたかった気がする。」

♪ 呼んでる声がする
だけど帰りたくない
笑われるのにも慣れた。♪

このフレーズがいつも圧倒的に自分と重なります。

以前にも書いたのですが、「起業」や「海外生活」って全くキラキラしたものではありません。
キラキラしている方もいるのかもしれませんが、少なくとも私の場合は(笑)、キラキラより圧倒的にハラハラです。
残高見つめて、数字達とどれだけ対談しても、
答えや将来の補償なんてどこにもない。
自分しか最終的に信じる者はいなく、でも常に「これ、本当に私やるの笑?」と疑い、「いや、できる!」と持ち直して、その中で予想もしない事ばかり起きて、対応しながらも、目標やプランを練り直して、辿り着くまでにできる可能な術を見つけ、こなしてゆく。
「いつまで、私モヤシ食べてるんだろ。」とか(モヤシ万能で大好きです。)、他の人と比べて将来に不安になる事もあるし、もちろん賛同してくれる人達が始めからいるわけもなく、「そんなの無理じゃん。」「無謀だね。」「まぁ、頑張って。」と失笑される事も山ほどあります。
でも、当然ですよね。だって誰もやってない事、誰も見た事のない「前例のない事」をやろうとしているんですから。見えない物を信用するなんて、誰でも難しい事です。

数年前(コロナ禍前)、ある日突然私のメールアドレスに、登録した事すら忘れていた転職サイトからスカウトメールが来た事がありました。
社風も合いそうな外資の会社が私の状況も踏まえた上で、凄く誘ってくれました。
上司もスコットランド人で、同僚達も多国籍。オフィスも渋谷のど真ん中で素敵だし、やりがいもある内容で、何度も「あぁ、これだけの量の味噌売らないと年俸と同じ額にはならんのか。」と思い、気持ちが揺れなかったわけではありません。

「募集している時点で、私ではない誰かでも、あのポジションは大丈夫なはず。こんなに味噌に狂って、味噌と共に生活している人物は世界に多分私しかいない(笑)。私がやんなくて、誰がやんのさ?」
そう最終的に思い、お話はお断りしました。

あの時、味噌屋を辞めていたら、エコ移動式味噌蔵の冒険もなかったし、特許を生み出す事もなかったんだと思います。
そして、何より色々な素敵な出会いもなかったのだと思うと、例え「笑われた」としても、自分の選択肢を後悔する事はないです。

「本当だよ(笑)、このまま助走が疾走しなきゃ良いけどね!じゃぁ、気をつけてね。」

そう姉に言って車を再び発進させると同時に、ちょっと胸が熱くなり、10分の時間が私の心を満たしてくれた気がしました。






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