見出し画像

〔翻訳〕昭和20年7月9日和歌山大空襲編(一部¥)

▼このページでは、管理人が持っている政治思想の左右や価値判断、余計な軍事知識の披歴はせず、「管理人が和歌山の空襲に関する見識を深めました」という立場で翻訳に徹します。また、意訳をしているところが多々あるので、この翻訳を使用される場合は原本と対照させ、納得なさった上でご使用下さい。
▼ここでは、いわゆる「和歌山大空襲」(1945(昭和20)年7月9日~10日)に関する米軍の作戦任務報告書等を翻訳します。
▼記載されている時刻は、K時刻を除き、日本時間に換算してあります。


1.作戦指令書

作成:第21爆撃集団司令官
第21爆撃集団
グアム
1945/7/8 17:00

ⅩⅩⅠ BOMBER COMMAND FIELD ORDER
No.97
作戦指令書97号

1.省略

2.第21爆撃集団は、1945年7月9-10日に仙台、堺、甲府(訳注:岐阜の誤り)、和歌山の各都市区域を爆撃する。

3.
a.第58爆撃航空団:<省略>
b.第73爆撃航空団:<省略>
c.第313爆撃航空団:
(1)目視及びレーダーによる主目標:
和歌山都市区域
平均着弾点:077102
必要とされる戦力:3個爆撃連隊
平均着弾点参照:第21爆撃集団リトモザイク和歌山区域90.25都市
修正照準点:005020
(2)経路:
基地
硫黄島
33.1530N 134.10E
33.51N 134.48E(IP(訳注:爆撃行程開始点のこと))
目標
右旋回
硫黄島
基地
(3)目標までのエンルート高度:4,000~4,800ft及び7,000~7,800ft
(4)爆撃高度:10,000~10,800ft
(5)爆弾:
M47焼夷爆弾(2個爆撃連隊)
M17集束焼夷弾(1個爆撃連隊)
(6)爆撃速度:195kt
(7)目標からのエンルート高度:12,000ftまたはそれ以上
(8)離陸時間:7月9日18:00
d.第314爆撃航空団:<省略>
e.第315爆撃航空団:<省略>

4.作戦任務番号:
仙台 ― 257
堺 ― 258
和歌山 ― 259
岐阜 ― 260
1684 ― 261

5.
a.
(1)爆撃報告、接敵の送信、IFFの手順は第21爆撃集団のSOIとSOPにしたがう。
(2)各爆撃中隊は、190~210MHz帯のバラージ妨害装置を搭載する。
(3)バラージ妨害範囲の拡大とその信頼性の監視は、目標上空で行う。
(4)スポット妨害は、各航空団の能力及び各航空団司令官の求めに応じて180~190MHz帯、210~220MHz帯の各周波数帯で行う。
(5)妨害装置は、本州から50nm以内は常時作動させ、装置を航空機に搭載したときに地上で行われる飛行前、飛行後の各点検時以外はオフにしておく。
(6)第73爆撃航空団の特殊妨害機は、190~210MHz帯及び72~84MHz帯でバラージ妨害を行う。スポット妨害は、各航空団の能力及び各航空団司令官の求めに応じて180~190MHz帯及び210~220MHz帯の周波数帯で行う。加えて、妨害装置の数が十分足りていれば、全機がバラージ妨害装置を1台ずつ搭載する。
b.変更なし。

少将 LeMAY

准将 Kissner, A.W.
USA
参謀長

2.目標情報シート

TARGET INFORMATION SHEET
1945/7/1
第21爆撃集団A-2目標部門
目標90.25 和歌山都市区域
34.13N 135.11E 標高0~525ft

1.概略:
和歌山市には織物の主要工場があるが、これらは重航空機部品、化学品、兵器、高品質鋼、染料の生産工場へと転換している。これらの工場を破壊すれば、大阪都市区域からの工場疎開問題を阻害できるのではないか。和歌山市は、戦略的には大阪湾に入る半島(訳注:田倉崎のこと)の根元に位置しており、蒸気/電気鉄道で大阪と繋がっている。

2.位置と識別:
和歌山市は、大阪湾に入る直線上の友ヶ島に隣接する半島(田倉崎)の根元にある。神戸の南30マイル、大阪の南西40マイル、紀ノ川の南岸、大阪湾に面した幅6~8マイルの、東側に広がる平野である。第1種の街道が大阪と繋がっており、半島(田倉崎)の先端まで続いている。田倉崎の南方及び和歌山市の南西には和歌浦湾がある。

3.目標の概要:
1940年における和歌山市の人口は195,203人で、大部分は南北3マイル、東西(198平方yd)1.5マイルの市街区域に集中している。川の南側と東側には集束焼夷弾の投下予定点が約20か所あり、南側は10平方ydである。第1の焼夷弾投下予定区域は、港湾部東側1,000~4,000ft、第2の焼夷弾投下予定区域は、第1目標に隣接、または市の南北を割る小川の西側である。
顕著な目印が2つある。古い城とその敷地が、市の中央部ちょうど北側にある。河口の約2マイル南には小高い突起が和歌浦湾に突き出ており、ここは市街区域の南西端である。港は浅い沈泥地で、モーター駆動の漁船にしか使われていない。2つの防波堤が、川の南岸及び河口に突き出た島から西に伸び、鋭角を形成している。

4.重要度:
和歌山市は、大阪近郊部にあることから、戦線が拡大したというショックを受けるであろう中規模都市の理想例となる。この傾向は、工業的損害、売却、従業者解雇を伴う親都市への爆撃によって促進されうる。和歌山市の場合は、住友関連の重要な新工場を牽引している。すなわち、織物機械工場30か所、織物染工場13か所、小さな銑鉄工場15か所。これらは全て、生産体制転換のカテゴリーに適合している(訳注:軍需生産に転換することを言っている)。加えて、低く評価されている工場群もある。すなわち、市内には雑多な小工場がある:銃火器金属工場1か所、裁縫機械工場6か所、歯車工場3か所、公立絹倉庫1か所、小さな原油精製工場4か所、塩素またはソーダ工場1か所、セメント工場1か所。

空襲区域内側の目標:
90.25―ⅩⅩⅠ5047 住友金属工業和歌山工場
新しい軍需品工場が800平方ft。平炉、炉、鋳物工場、航空機部品工場。おそらく、新しいジェット航空機の生産に関与。紀ノ川北岸に位置。
90.25―ⅩⅩⅠ5049 住友電工和歌山工場
化学工場で、おそらくエチル臭素の生産に関与。紀ノ川河口のちょうど南に位置し、600平方ftをカバー。主要構造物12か所からなる。
90.25―ⅩⅩⅠ5048 未確認の工場
150平方ftをカバー。紀ノ川河口の島。
未登録の織物工場
―大和紡績(主工場、手平工場、紀ノ川工場);昭和紡績(岡工場);鐘淵紡績;紀陽機織染工(工場2か所)(訳注:紀陽織布と思われる);南海染工(手平工場)

空襲区域外側の目標:
未登録
愛知時計電気(もとの鈴木毛布で、航空機部品と磁石を製造しているという報告)和歌山の南4マイルに位置。
未登録
中山製鋼(小雑賀・青岸工場)化学製品を生産。市郊外に位置。

和歌山市の破壊によって、重兵器と化学製品の生産体制が一層破壊、減産されるだろう。写真と証拠で明らかになった軍需工場への転換プロセスは、(米国にとっての)戦況悪化を止めうる。そして、猛攻を受けた大阪への救援体制における移動、住宅供給、疎開の各段階も阻止されうる。

5.照準点:
照準点は作戦命令によって指定される。

3. 作戦任務報告書:作戦任務番号257‐261

ここから先は

18,262字 / 15画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?