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移住日記

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2ヶ月目、ウソをつけない海

2ヶ月目、ウソをつけない海

最近、「こんにちは」のように「慣れた?」と聞かれる。

移住して2ヶ月が経った。「まだ2ヶ月か」という気持ちが強いが、慣れたかと聞かれたら「生きてはいるが」という感じだ。とはいっても、そんな回答では気を遣わせてしまうので「ぼちぼちです」と答えるようにしている。

移住と言ったが大阪にも家を置いてる身なので、私は月に1週間ほど大阪に帰る。1日に2本、片道3時間半。朝5時半に起きれたら昼前に大阪に着く

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らっこと、嫉妬

らっこと、嫉妬

「昨日さ、友達とらっこの話しててんけど」
梅ソーダを吸いながら彼女が言った。

「らっこ?なんなんそれ」
「いや、その子がらっこめっちゃ好きみたいで2時間くらい話した」

いやごめん、どういうこと?

試しにどんな話だったのかと聞いてみる。そしたら、らっこの進化がめっちゃ可愛くて、貝殻を割る石のためにポッケができたらしい、らっこって漂流せんためにみんなで手繋いで寝るらしい、みたいな話を楽しそうに話

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休日だけ、パン屋

休日だけ、パン屋

最寄りのパン屋に行った。
最寄りと言っても電車で30分かかるので、パン屋に行くことは休日にしかできない営みとなった。

汽車で海沿を30分。日を浴びて海がキラキラして見える。それを子供のように窓にしがみついて眺める。時にシャッターを切る。
トンネルを抜けると、少しだけ山道になって3頭の鹿を見た。うちの町は獣害駆除対策が遅れて、隣接地域から鹿が逃げてくる場所。その数、人口よりも多いというのだから笑っ

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港町での1ヶ月、ときどき都会の雑踏と

港町での1ヶ月、ときどき都会の雑踏と

気づけば港町に移住して1ヶ月半ほど経っていた。
「移住したらnoteでも書こうかなふふん」などと呟いてたが、慣れない暮らしと仕事でお気持ちがそれどころではなく、このタイミングになった。

広い空と青い海について情緒的な文章を書きたいが、移住したての私のリアルを残しておこうと思う。

引越しと移住はちがう。いや、それぞれをどう定義するかの問題はあるが、当たり前に、これまで経験してきた東京から大阪や大

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新しい雨

新しい雨

雨が嫌いだった。
傘をさしても靴の中までびちゃびちゃに濡れて気持ちが悪いし、ヘアアイロンでまっすぐに伸ばした髪もうにゃうにゃと軸を失う。そして何より暗い。鬱々する。
日課である朝のウォーキングができないと知った私は、ベッドへと潜り眠いふりをして、ふて寝してしまうのだった。

今年の梅雨も憂鬱だなあ、と5月あたりから梅雨を思い気分が下がっていた。
いよいよ雨マークが週間予報に並んだとき、どこか梅雨の

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海と空とときどき涙

海と空とときどき涙

2024年夏前、とても軽率に港町へ移住した。

私には3つの障害がある。ADHD、双極性障害、摂食障害というトリプルハンデだ。おっちょこちょいという表現では済ませられないミスで日常はドタバタだし、1日3回適切に食べるということが私にとって何よりも難しい生理行動である。

私には障害があるが、夢もある。願わくば、それは週末だけ運営される隠れ家ゲストハウスのようなものがいい。旅の延長線で、自分と向き合

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