読書感想『本屋さんのダイアナ』柚木 麻子
世界一ラッキーな子になるように…大きな穴と書いてダイアナと名付けられた矢島ダイアナは自分の名前が大っ嫌いだ。
父親はおらずキャバクラ勤めの母親に髪を金色に染められていたダイアナは、自分の名前も周りと違うすべてが大嫌いだった。
小学校三年生になり、彩子と出会うまでは…。
自然なことを好み、本物を求める両親から大切に育てられた綾子は、まるで小説の世界から出てきたような女の子ダイアナに強烈に惹かれていた。
全く正反対だった二人なのだが、実は本を読むことが好きで話せば話すほどお互いに惹かれていく。
たとえ別々の進路を歩もうとも心はずっと一緒だと信じて疑わなかった。
全く生活環境の違う二人の少女はやがて別々の道を歩むことになるのだが…本を愛する二人の少女の10年余りを描くガールミーツガールの傑作小説。
本屋大賞を獲ったときに読んで以来久しぶりの再読である。
シングルマザーのキャバクラ嬢に育てられたダイアナは、自分の名前、生活環境、母親らしくない母親ティアラのことも恥ずかしくて仕方がない。
彼女が求めるのは優しい両親がいて、毎日母親が手作りのご飯を作ってくれるような、所謂一般的な家庭環境である。
一方彩子は、編集者の父、料理研究家の母に『本物』を与えられて大事に育てられている少女であり、それはまさにダイアナの理想のすべてなのだ。
彩子からすれば、ほかの人とは違う環境で逞しく生きるダイアナは羨望の的であり、彼女たちはお互いにお互いの理想を見ているのである。
対極の境遇ながらも同じ趣味を持つ二人は急激に惹かれ唯一無二の親友となるのだが、幼い二人は幼さゆえに視野が狭く自己中心的であったために進路が分かれると同時に関係は疎遠になってしまう。
そして、関係性が途切れてしまった二人のそれぞれの人生が描かれえるのである。
離れてもお互いの心には強烈に、お互いへの憧れや執着があるのだがそんなことを知る由もなく彼女たちはそれぞれに自分の環境に苦悩を抱えながら成長していくのである。
小学生~22歳まで、一番多感で、一番愚かな時期が瑞々しく描かれており、どちらの心にも寄り添えながらもその愚かさに辟易させられる。
離れても心にはお互いの存在があり、言葉を交わさなくともそこにはずっと思いが残っている。
こんな誰かに巡り合えたことが羨ましくて仕方がない。
いいなぁ、こんな友達に出合いたかった…。
二人の少女の成長を見守りながら、自分の望むものへどうアプローチしていけばいいのかを真摯に考えさせられる一冊である。
いやぁ、これは何度読んでもいいね…。
また忘れたころの再読したい本です。
・一穂ミチ『光のとこにいてね』
・津村記久子『水車小屋のネネ』
・綾崎 隼『この銀盤を君と跳ぶ』
かけがえのない出会いで世界の広がる小説はどれも面白いよね…
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